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深い、面白い、アメリカ現代史を読み解くヒント~「国家にモラルはあるか? 戦後アメリカ大統領の外交政策を採点する」
「人の悪い噂話にはFACTがある」と思っています。
「誰か他の人を評価する時に、特にその人の職場での評価、出世するかどうかと言った噂話と、人事に絡む話をする時に
”この人はいいですよ”とほめる言葉は、なんとなく受けての感情、受け止め方でふんわりとした表現で話すことが多く、
意外と評価が分かれることがあります。
一方で、人の悪い事に関していうと、もちろん感情的な表現、場合もあるのですが、人の悪い噂話だと、
「こんなことがあって、、、あの人のこと、こう思った」と、背景にFACTがあることが多いです。
事実を挙げて話すことは、良い話の時も、悪い話も含め、その事実のあげ方で、その「人となり」「評価」を築いていくと思います。
つまりファクトが積み重なることによって、だんだんとその人の全体像が浮かび上がっていくというようなイメージです。
割とレッテル貼り、つまり一つの事実だけでその人全てを評価する悪く評価するケースもありますが、それは除き、
パズルのピースを当てはめていって人の輪郭を作っていくイメージ、という点では、あながち間違っていない方法と思っています。
この本を読んで、この、噂と人の評価、の事を思い出しました。
歴代大統領の在任中の世界的な出来事、アメリカ国内の出来事と、その時の大統領の判断・行動を一つ一つ挙げ
その結果がどうなったのか、判断に至った人柄はどうだったのか、周りへの影響はどうだったのかと
一つ一つファクトを積み上げていってるのです。
そのファクトを積み上げた結果、この大統領は私から見てどう思うのかという採点評価がついているという意味でとても面白い本だなと思います。
私が興味を持ったのは3つあります。
1つはブッシュ大統領(息子の方)の、父と子の関係に関して
2つ目はジョンソン大統領の行動、
3つ目はルーズベルト大統領のアジアに対する理解不足、という点です。
例えば、ルーズベルトについては、ある人の「知性は二流だが感性は一流」と表現を用いていて、
アジアの状況を把握する知性はヨーロッパに対してよりよくなく、狭い力量のせいで損なわれていて、
もっとユダヤ人や日系アメリカ人の人権を損なわずに済んだのではないか、と言ってます。
きょうは8月6日、広島に原爆が落とされた日ですが、アジアに対する理解度の低さ、
そしてヨーロッパに対する理解度に比べてアジアに対する蔑視が強かった、大統領の資質の結果、
ほぼ敗戦が決まっていたような状態の日本に対し大都市の無差別爆撃を繰り返したり、原爆を落としたりしたという
一連の行為につながっていたのではないかと感じました。
「ルーズベルトはトルーマン副大統領に、
原爆やヤルタ会談をはじめとした重要問題を一度も相談しなかった」という話からは、もし相談していたら、ほかの人の意見で判断が変わる可能性もあったのに、と感じました。
ジョンソンが朝5時にホワイトハウスの危機管理室を訪れ、ベトナムでの死者数を確認し、その死者の一人一人が自分を恨んでいるようだと言っていたというエピソードからは、大統領の立場もあり戦況に責任感がある、というのもあるのでしょうけれども、
ある種、追い詰められている心境だったとも考えられます。
レーガンがビジョンを示すことに優れていたが詳細なことの見落としが多かったのに対し、
パパ・ブッシュは実務に秀でていたが、ビジョンを示すのが得意でなかった、という特徴の表現の面白さや、
ジョージ W ブッシュは些細なことでも父に相談することを嫌がっていた、
大半の父親と息子のように、感情的な複雑さによって形作られた、という話には
自分と父親の関係もそうですし、息子との関係も、翻って考えると息子の父親に対する複雑な思いに、
親としてどこまで向き合っているのか、距離を保ちながらもそれでも息子に与えられるもの、示せる方向性とかを出して
息子に役立てないのか、と考えました。
うちは大統領の家みたいなことは、まったくないんやけど(泣)。
トランプ前大統領に関しても触れられています。
「リーダーとして、トランプの頭の回転が速いのは明らかだが、
彼の気質は感情、知性や状況把握する知性の低さとなって表れている。
ルーズベルトや、ジョージ W ブッシュが大統領として成功したのは、逆にこうした資質に優れていたからだ」と分析しているのも面白いです。
トランプ氏の性格についても、「父親による支配父親が過酷な要求をして、気難しく何かに取り憑かれたようだった」
「トランプは不当に扱われていると感じると衝動的かつ防御的に反応し、事実に基づかない話をでっち上げて
自己防衛、自己正当化を図り、いつも過ちを他人のせいにしようとする」という表現も的確だなと感じました。
そんな至極の指摘や表現がちりばめられています。
本では、大統領たちの評価付けもしています。
大統領のモラルの判断として、3つの基準を挙げています。
「大統領の決断の意思決定の意図」「手段」「もたらした結果」を比較考慮しているのです。
一度読んだだけではなかなか全てを理解するのは難しいと思います。細かい情報までが書き込まれているので
アメリカ現代史の辞書代わりに使って、この時にこうだったのかと見返すのにも使えそうです。
私はとても一読して全部を覚えきれないなと思いました。
大統領一人一人の、その当時の判断の裏側や人柄の要素が書かれているので、小話を読むだけでもへーっと思うことがいっぱいあって
面白いなと思います。
あと採点結果が付いてるので、自分好みの大統領を見つけたり、一見印象が良さそうな大統領も実はこの著者にかかると全然違っていたり
という意外性もあって面白いです。
(ジョセフ・S・ナイ、駒村圭吾監修、山中朝晶訳 8月6日読了)
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