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大好物はキラキラ

キラキラした世界がある。
今の自分には非日常すぎる空間で、日常として楽しんでいる人たちがいる。

わたしの父は贅沢が好きな人だった。百貨店に行きブランド物を買う。弟と二人で待たされる時間が嫌だった。
腕にはロレックス、車はベンツ。高校生のころベンツで送ってもらうのが恥ずかしくて、学校から離れた場所で降ろしてもらっていた。
大酒飲みで外食も多かった。中学生ごろからわたしはテレビが観たいから家で留守番をするようになった。
もし、家もマイホームでそれなりなら、父の贅沢好きを受け入れていたかもしれない。しかし父は家には興味がなかったのか、隣り合わせの小さな平屋の借家を2軒借りて住んでいた。生活スペース用と就寝用みたいな感じで。
そのアンバランスさに自分の心も穏やかではなかった。

贅沢がきらいだった。
ブランド物の価値や高級車の安全性など、今ではそれらの良さが理解できるけれど、わたしは興味がないまま大人になった。

キラキラした空間はきらいじゃなかった。
ホテルで働いていたころは、名古屋や東京のホテルに憧れたし、たまにホテルで食事をすることで気分が高揚した。美しいものは好きだった。凛とした空気感が好きだった。


前置きがかなり長くなってしまったが、先日キラキラした場所に息子と行った。
JAZZが好きな息子をいつか連れていきたいと思っていた「COTTON CLUB」でライブを楽しんだ。
息子が好きなサックスプレイヤー、パトリック・バートリーが率いるバンドのライブだ。
息子の誕生日プレゼントとしてチケットを取った。発売開始日に予約をしたので真ん中最前列のテーブル席だった。
エントランスから高級な雰囲気が漂っている。ちょっと緊張しながら入ると、ウエイターが席まで案内してくれた。

赤絨毯


楽器がセッティングされた美しいステージ、落ち着いた統一感のある内装、きらびやかな照明、凛とした空気……好き。
早い時間の公演だったので、夕食は帰ってから娘も一緒に食べることになっていた。
公演まで時間があるし、せっかくなのでドリンクとおつまみでも頼もうとメニューを見る。
息子は紅茶を、わたしは雰囲気だけでも楽しもうとノンアルコールのスパークリングワインを選び「フレンチフライ トマトチリソースとモルトディップ添え」もあわせてオーダー。

おいしくいただきました。

ライブは言わずもがな最高だった。
パトリックのサックスはときに歌に、ときに彼の心の叫びに聴こえた。
ピアノ、ギター、ベース、ドラム、各々のソロも感情的で、ソロを一番楽しんでいたのがパトリックだった。
目線で合図を交わしながら演奏する、JAZZの楽しさを目の前で堪能できた。
息子の目が輝いていた。それが見られたことが何よりの喜び。
いつかこのステージで彼が演奏する日が来ることを夢見ている親バカである。

最高の音楽と、飲みながら楽しむ観客と、美しい空間。「COTTON CLUB」、わたしの大好物だった。

隣のレディは日常的に楽しんでいらっしゃる常連さんみたい。
こういうデートを楽しませてくれる方と出会えたらこれ幸いだけれど、レディのように自分で来られるようになりたいものです。

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小笠原ゆき
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