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HAPPY TORTILLA
2019年1月14日 11:37
スパイシーなグリルプレートを豪快にたいらげて、ジョンは言った。口元を拭いたペーパーナプキンを折りたたみながら。「さっきの話、プレッシャーとかそういうことじゃないからな」食事中は込み入った話題を中断する誠実さを、僕はとても好ましく思った。「褒められたら、っていう話だよね」「そう。プレッシャーは服みたいなもんだから、いつだって身体にくっついてるんだ。緊張感は嫌いじゃない」「強いね
2019年1月11日 08:17
「どんなに緻密に注意を払っても、影響はなくせない」グラスに残ったアイスティーの氷はすっかり溶けて、マスターは濃いミルクのチャイを淹れてくれた。僕の眠気はとても強く、いつもなら夜でもカフェインたっぷりの珈琲をいただいてから帰る。まろやかな甘さにゆるんと溶け込むスパイス。芯から温まる。「そうだね、でも影響を与えることがあっても、痕跡を残すのはしたくないんだ。影響させるって、刺激を受けたり響
2018年7月30日 07:31
西の空にほんのりと残るオレンジ色。古びた木の手摺のある登り坂には、アンプから流れる音が響く。バーのテラスには、形の揃わない椅子が、並べられているとは言えないような配置で適当に置かれている。ぬるい風に揺らされる松明の炎。火の入った野菜とスパイスの混じるディナーの香り。 「いつもより人が多い」 僕は言った。 「そりゃ、ライブだもの」 マスターが言った。 「誰が歌う