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#note書き初め

13.重力の痛み 【マジックリアリズム】

13.重力の痛み 【マジックリアリズム】

「猫の目というのか、秋の空というのか」

そう言いながらマスターがカウンターに置いた大ぶりのグラス。
透明に澄んだ大きな氷を入れたアイスティーは、きんと冷えて身体に馴染んだ。雑味なく清冽で、清められるようだった。

「うん。でも、ただ変わりやすいとかっていうんじゃないんだよ。気がついたら宙を舞うみたいに飛んでいて、地上に立ったときに感じる重力みたいなのに参ってしまう」

「比喩的でわかりやすいよう

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12.ランナーズハイの後 【マジックリアリズム】

12.ランナーズハイの後 【マジックリアリズム】

カフェ・マゼランに向かうとき、坂を登る。
右手には海、左手には林、その奥には街がある。
さらに内陸にある赤茶けた山々を望みながら、その景色を見るのが僕はとても好きだ。
林からは、フクロウの低い鳴き声が聴こえる。
木魚みたいな、鎮静効果のある一定のリズムで。

病み上がりの時期を終えて、店の扉がようやく軽く感じられるようになってきた。
新しい年を迎えるまでに幾度かのディナーを経て、たっぷり養生できた

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