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HAPPY TORTILLA
2018年11月20日 07:50
「ながらくお待たせしました」 「待ってないけど、ひさしぶりだね。いらっしゃい」 2週間も『マゼラン』に来なかったのは、この土地に来て初めてのことだ。この店の名前を、僕はたった今、知った。扉と同じくらいに古いボードに文字が浅く彫られていて、色もついていないから、よく見ないと気がつかない。 「砂のお城の上に旗が立っていて、それを目指して階段を登ってて」 「いきなり、だね」
2018年8月7日 07:38
タトゥーの青年は、入り口から真っ直ぐにカウンターに向かってきた。無遠慮な仕草で僕のすぐ隣に座り、美しい発音でビールを注文する。ライブの夜に、流れる涙を拭いもせずに海際の席にいた彼とはまったく違う雰囲気だったが、彼で間違いないと僕はすぐに気がついた。にこっとして微笑み合って、僕たちはごく自然な成り行きで友達になった。 このまえは涙に濡れて伏せ目がちで気がつかなかったけど、今晩はしっかりと