備える。 父(元消防士)と娘(福祉士)の防災談義
プロローグ
「我が家には防災グッズというものがありません。当たり前のように懐中電灯が近くにあり、家具はベッドに倒れないよう垂直に配置、長期保存できる食事を備蓄しています。それをまとめておくだけでいいんです」
これは避難訓練の時、父の語ったという言葉だ。
「どこの家の話?」
それを、ペットボトルの水を飲み、カップ麺を啜りながら聞いた。
当時、女子高生。当たり前となった備えに、言われても気付くことが出来なかった。
父は声を出して笑い、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
さあ何から備えよう?
家族を持つ友人達と、避難グッズの話をする機会が増えた。
独り身であれば、職場へ行けば備蓄(と仕事)が十分にあったから良かった。しかし、今や結婚して、在宅ワークの夫もいる。
これを機に備えようと思い、餅は餅屋、防災は元消防士の父に相談してみることにした。
父の返答はしばらくなかった。
LINEの答えが出たのは、およそ送信から3ヶ月、ちょうど実家で食事をする時だった。
「そういえば、あれ読んだけれど、ラジオが一番いらない」
まさかの回答だった。
防災グッズの代表格と言っても過言ではない、手回しラジオがまさかの「いらない」。
「でも震災時って電波入らないんでしょ?」
「今は圏外になることも少ないし、移動基地局もある。それに、そこまで大規模な災害になったら、避難所に行くでしょ? 避難所には必ずラジオが設置されている。それに、大抵みんなラジオ持っているから、いらない」
父は続けた。
「それよりも必要なのは、モバイルバッテリー。今、情報収集も全てスマホだから。
あとは室内用スリッパを枕元に置いておく。
破片で怪我をしないように、底が分厚いやつ。あとはスニーカー」
「よく、水浸しになると不衛生だし重いから、長靴の方が良いって言うけれど、実際はどっちがいいの?」
「断然、スニーカー。スニーカーは洗えるし、乾く。慣れない長靴は歩きにくいし、ムレるし、中に水が入ったらどうしようもない」
「なるほど」
「あとリストにもあったけれどカセットボンベね。避難所で使われる発電機やコンロは全てカセットボンベで動くようになっているからね」
「用途はカセットコンロだけじゃないんだね」
「だいたいの場合は3日経てばなんとかなるから、3日間しのぐための物を持っていく必要があるね。特に、薬。食べないで3日は生きられるけれど、薬はしょうがない」
「あと三角巾(医療用)だよね」
「そうそう、止血にも、固定にも使える三角巾は一枚あると便利。あとは、色々使えるゴミ袋にハンドタオルのあたりもあると便利」
「ぜんぶ入るかな」
「自分の生活を見直して、取捨選択するのも大事なことだよ」
この30余年。父から教わった防災の一番のキモは「諦める」のような気がする。
選ばれたのはまさかのアレでした
果たして、父の助言をもとに、楽天スーパーセールとAmazonプライムデーを駆使し、大量の防災用品を用意したヌーミユ家であったが、新たな壁に直面した。
置き場所が、ない。
全部をまとめてかつ、すぐに持ち出せるようにパッキング。
これは難易度が高いぞ??
海外旅行用のドデカスーツケースを手に取ろうとしたところで、夫がすっと差し出したのが、これだった。
夫が、仕事用荷物の運搬用にと買った、中古のウーバーイーツがまさかのシンデレラフィット!!!
荷物が重くても、負担がかかりにくい設計!
両手もあく!!
ついでに保温も保冷もできる!!(?)
お前は防災グッズカバンだったのか!(違う)
こうして、我が家の備えは無事に終了しました。
んな訳ありません。
賞味期限切れにならないように、定期的に入れ替え。
メガネも度が変わったら交換する。
薬も定期的に交換する。
何か必要な物があったら買い足していく。
これでも、いざという時には足りないものがたくさん出てくるでしょう。
そう、防災は始まったばかりです。
おまけ 我が家の備蓄
最後に執筆時点でのウーバーイーツの中身を、メモを備忘録がてらまとめておきます。
よろしければ、買い物メモ、備蓄チェックにお使いください。
また、このnoteがもし、ためになったとかであれば、コーヒー1杯分のお気持ちいただけますと嬉しい限りです。
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