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治療抵抗の「知る痛み」って⁈
「知る痛み」とは知らなければそのままでいれたものを必要があるとはいえ、必要がある事実を知り知識を得るときに精神的な痛みを伴うということ。
知らないままでいれば、ある意味で「平穏」にいられたかもしれない。けれど、何かを知ることで、自分の現実と向き合わざるを得なくなり、その過程では精神的な痛みが生じます。
たとえば、こういった場合があります:
《過去のトラウマに気づく》
普段は意識しないようにしていた出来事や、自分の中にあった感情を掘り起こすとき、その記憶や感情がよみがえり、苦しくなることがあります。
《現実を受け入れる》
たとえば、「この人は自分を傷つける存在だ」
「自分が今までしてきた選択が間違っていたかもしれない」という事実を知ると、それを認めること自体が痛みを伴います。
特に、希望を持って信じていたことが覆されたときのショックが大きいですね。
《自分の限界を知る》
「自分は完璧じゃない」「思っていたより弱い部分がある」といった、自分自身の欠点や未熟さに気づくと
そこにも痛みが伴います。
それは、自分の理想像やプライドに傷がつくような感覚かもしれません。
こうした「知る痛み」は、時に逃げたくなるほど苦しいものですが、このプロセスを通じて、人は成長することができます。
それらを知った上でそれを受け入れ、次にどうするかを考えることで、現実に立ち向かう力や、自分自身を変えていくきっかけをつかめていくと思います。
ただ、その「痛み」を感じる[タイミング]や[量]が多すぎると、かえって心が折れてしまうこともあります。
だからこそ、信頼できる人と一緒に少しずつ取り組んでいくことや、「まだ知る準備ができていない」と感じたときは無理をせず待つことも、大切。
良くなりたいと思っているのに[抵抗する]のにはこういうリスクを避けたいと無意識に感じるからかも。
治療への抵抗の背景には、無意識のうちに「こういうリスクを避けたい」という心の防衛反応が働いていることが多い。
人は、自分を守るために「現状維持」を選びたくなる生き物です。
なぜなら、変化には常に未知の要素が含まれていて、それが「怖い」「危険かもしれない」と感じるから。
具体的には次のような理由が考えられます:
1.知る痛みに対する恐れ
治療によって自分の過去や問題に向き合うことで、今まで知らなかった「苦しい現実」が浮き彫りになるかもしれない。このことを無意識に察知して、「そんな痛みを感じたくない」と抵抗してしまうんですね。
たとえば、虐待の記憶や、人間関係の問題、自分の弱さに気づくことは非常に辛いものです。
それを避けたい気持ちは、ごく自然な防衛反応といえます。
2.自分を変えることへの不安
「変わる」ということは、「今までの自分を否定する」ように感じる場合があります。
たとえば、「自分の考え方が間違っていた」「これまでしてきたことが無駄だった」と認めることになるかもしれません。その喪失感や恥ずかしさ、不安が、治療への抵抗を生むことがあります。
3.安全ではないと感じている
治療者や治療環境に「安心感」を持てない場合も、抵抗が起こります。たとえば、「この人は本当に自分を助けてくれるのだろうか」「自分の話をちゃんと聞いてくれるのか」といった疑念があると、治療そのものをじることが難しくなります。
過去に裏切りや傷つけられた経験がある人ほど、こうした信頼を築くのが難しいことがあります。
4.自分に対する無力感
「どうせ治療を受けても変われない」「自分なんて治るはずがない」という思いが根っこにある場合もあります。そう感じると、治療を始めること自体に意味を見いだせなくなり、抵抗してしまいます。
《抵抗への対応》
治療者が大切にするべきなのは、この抵抗を「悪いもの」として否定しないことです。
抵抗は、その人が「自分を守るため」にしていることであり、「変化する準備が整っていない」ことを表しているサインでもあります。
まずは、無理に変えようとせず、抵抗している理由を一緒に探りながら、「ここは安全な場所だよ」「あなたのペースで進めて大丈夫だよ」と伝えることが大事。
その中で少しずつ、変化への恐れが和らいでいくことがあります。
結局のところ、治療への抵抗は「守りたい自分」がいるからこそ起きるものであり、それに寄り添うことが治療の第一歩ということ。
治療者が「悪いもの」として否定しないことが大切であり,さらには患者自身が抵抗に気づいて、自分って全然病気を良くしようとできない《ダメな人間だと自責しないことも大切》です。
この視点、とてもとても大切です。
患者さん自身が「治療への抵抗」に気づいて、自分を責めてしまうことはよくあります。でも、それはさらに心を苦しくさせてしまうので、「自分に優しくすること」が治療を進めるうえで非常に重要になります。
抵抗してしまう自分にどう優しく声をかけるか、そして少しずつモチベーションを上げていくための方法を考えてみましょう。
1.【抵抗は「悪いもの」ではないと受け止める】
まず、自分の中に抵抗があることを「悪いこと」だと考えないことです。むしろ、抵抗は「自分を守ろうとしている証拠」と理解してください。
例えば、こう自分に言い聞かせてみてください:
「私が今、抵抗しているのは、それだけ怖い思いをしてきたからなんだ。」
「抵抗は、私が自分を守ろうとしているから起きている。私の心は、ちゃんと働いているんだ。」
抵抗する自分を責めるのではなく「この抵抗も私の一部なんだな」と少しずつ受け入れることが、モチベーションを上げる第一歩です。
2.小さな一歩を認める
治療へのモチベーションが上がらないときは、「こんなこともできない自分はダメだ」と考えがちですが、むしろ「小さな一歩」に注目するといいです。
たとえば:
⚫︎通院しただけで「よく頑張った」と自分をめ
る
⚫︎カウンセリングで一言でも自分の気持ちを話せたら、それを認める
⚫︎治療について考えるだけでも「私は向き合おうとしている」と思うなど
「小さな一歩」を繰り返し認めていくことで
「私は変わりたいと思っているんだ」という感覚が少しずつ育ちます。
3.自分のペースを大切にする治療がスムーズに進まなくても、それは「自分のペースで進めている」というだけのことです。
《焦る必要はありません》なので、こう自分に言葉をかけてみるのも良いかもしれません:
⚫︎「私は私のペースで進めていいんだ。」
⚫︎どんなに小さくても進んでいることに変わりはない」
⚫︎「今は立ち止まる時期なんだ。それも必要な時間なんだ」
自分の進むペースを許してあげることが、結果的に治療への意欲につながります。
4.「なぜ変わりたいのか」を見つめ直す
治療へのモチベーションを上げるためには、「なぜ治したいのか」「どんな自分になりたいのか」を時々思い出すことも大事です。
たとえば:
「元気になったらこんなことをしてみたい」
「こういう人生を送れるようになりたい」
「家族や友人ともっと楽しく過ごしたい」
大きな目標ではなくても、日常の小さな楽しみや希望でいいんです。それを思い描くことが、自分を前に進める原動力になります。
5.治療者と一緒に考えるもし一人で「自分に優しくする」ことが難しいと感じたら、治療者と一緒に「抵抗している自分」を見つめる時間を作ってみてください。
たとえば、「こんなふうに感じるんです」「自分が変われる気がしないんです」と治療者に伝えることで、「そんなふうに思うのは然ですよ」と受け止めてもらえることがあります。それだけで少し気持ちが軽くなることもあります。
ーまとめー
抵抗してしまう自分に気づいたら、次のように優しく声をかけてあげてください:
「私がこう感じるのは、怖かったり、不安だったりするからなんだ。それは自然なことだよ」
「少しずつでいい。進んでいることに変わりはないよ」
「今できる範囲で大丈夫だよ」
治療は焦らず、時間をかけて進んでいくもの。
自分を責めずに、今の自分を受け入れること。
それが結果的に、治療へのモチベーションをじわじわと上げていくことにつながりますよ。
色んなこと,色んな人に助けてもらいながらゆっくりやっていきましょう。