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昔話「カワラヒワとヒマワリ」


ある日、ひ弱なヒワ鳥が河原で散歩をしていました。そのひ弱なヒワ鳥はよく河原で見かけるため、人々はいつの間にか「カワラヒワ」と呼ぶようになりました。

カワラヒワはスズメくらいの大きさで、しかしスズメよりも身体が弱く、足が細くてすぐに怪我をしてしまうのが悩みでした。

『せめて、黄緑色を帯びた濃い茶色と黒以外に、きれいな色の羽根が生えていたら、格好良くて皆に自慢できるのになあ』
と、時折河原を散歩しながら泣いていました。
「あああービーン!」
「キリキリコロコロ、ココロ」痛い。
と、毎日のように河原を散歩しながら泣いていました。

すると、そんなある日、河原近くの家の庭から何やら声が聞こえてきました。
「ねえ、ねえ、そこのカワラヒワさん」
カワラヒワが声の方に顔を向けると、そこには大きな黄色い花が立っていました。

「えっ、そこの大きな黄色のセイタカノッポのお花さん、僕のこと呼んだの?」

「はい、呼びましたよ」と、大きな黄色いセイタカノッポの花が言いました。
「何か用ですか?」とカワラヒワ。

「カワラヒワさん、あなたはなぜいつも悔しそうな声で泣いているの?」と、大きな黄色いセイタカノッポの花が聞きました。

「ああ、実はね、僕の羽根の色って、もうちょっと目立つきれいな色が入っていると自信が持てて、胸を張って生きていけるのになあ、って思ってさ。なんか悔しくって泣いてるのさ」とカワラヒワ。

すると、「そうなんですね。私に良い考えがあります」と、大きな黄色いセイタカノッポの花が続けました。それは、こんな話でした。

大きな黄色いセイタカノッポの花は太陽が大好きで、晴れているとずっと太陽を見てしまうのだそうです。それは成長して大きくなるのには良いことだけれど、花の中心が太陽の光で燃えてしまって種が作れない。それで、中々たくさんの仲間が育たなくて、農家のおじいさんとおばあさんが種を売れず、一生懸命に働いても働いても、いつまでたっても貧乏暮らし。
そこで黄色いセイタカノッポの花はカワラヒワにこう言いました。
「花の真ん中が黄色ではなくて茶褐色のように濃くて暗い色だと焼け焦げずにすむんだ。だから私の真ん中の黄色い色とカワラヒワの羽根の茶褐色の色とを交換しよう!」

「そんなことできるの〜!」
と嬉し気に驚いた声で叫ぶカワラヒワ。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ!私の言う通りにおまじないを続ければだいじょうぶなんだ」と
大きな黄色いセイタカノッポの花が自信たっぷりに言います。

大きな黄色いセイタカノッポの花が言うことには

• カワラヒワは朝一番の太陽の光を晴れた日には毎回浴びに来ること。

• カワラヒワは光を浴びながら大きな黄色いセイタカノッポの花の中心に羽根をこすりつけながら、
『キイロハアッチ、チャイロノコッチ、ミンナダイスキ、ナルヨウニナアレ』と七回となえること。
それを雨以外の晴れた日に十四回やることでした。

自分の羽根にきれいな色がどうしても欲しかったカワラヒワは、大きな黄色いセイタカノッポの花の言う通りにやり続けました。
一度言われた通りのことを十四回やるには雨の日もあったので、七月いっぱいかかりました。

カワラヒワは大きな黄色いセイタカノッポの花の言うことを信じて、一生懸命にやり遂げることができました。


カワラヒワは太陽の日を浴びておまじないをとなえる十三回目が終わった時、何にも変わらない羽根の色を見てちょっぴり心配になりました。
そしていよいよ最後の日十四回目の晴れの日を迎えました。カワラヒワはいつものようにおまじないを七回となえながら大きな黄色いセイタカノッポの花に羽根をこすりつけました。するとどうでしょう!

わあ、すごいなあ!
何と驚いたことに、大きな黄色いセイタカノッポの花の中心が濃い茶色に、カワラヒワの茶色の羽根のところに黄色い色が移っていました。

そしてそれから、カワラヒワは茶褐色の羽根にきれいな黄色い色で堂々と散歩ができるようになりました。
更にカワラヒワは元気良くきれいな声で
『ビーン!キリキリコロコロ』と鳴けるようになりました。
それを聞いた近所の人たちは「きれいな声ね」と言ってくれました。

そうして、大きな黄色いセイタカノッポの花もカワラヒワと色を交換できたおかげで、ちゃんと成長できるようになり、おじいさんは『ヒマワリ』という新しい名前をつけてくれました。
お日さまを求めて回りながら生きる『ヒマワリ』
なんてステキな名前なんでしょう!

そんなこんなで
農家のおじいさんとおばあさんは油の取れるヒマワリの種をたくさん取れるようになりました。
そして生活が楽になり、一生仲良く幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし!

信じることとご縁は大事、大事!
というむかし、むかーしのお話でした。

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