「由流里ハウス大晦日の一大事」
12月31日、大晦日。由流里ハウスのリビングには、朝から年越しそばの話題が飛び交っていました。住人のコアラのココが毎年恒例で作る年越しそば。それをどうするかで、朝から大騒ぎが始まったのです。
「ココ、今年はどんなそばにするの?」
キッチンのカウンターに座りながら、鹿のシカリンが聞きます。ココはエプロン姿でにこにこと微笑みながら言いました。
「それがね、みんなの希望を聞いてから決めようと思ってるんだ。ざるそばにするか、温かいかけそばにするか。具材もね、エビのかき揚げ、たぬきそば、山菜そば…いろいろあるからね!」
うさぎのリリィが、耳をピンと立てて言いました。「わたし、エビのかき揚げがいい!サクサクでジュワッとしたやつ!」
すると、シカリンがすぐに反論。「いやいや、エビはいいけど、かき揚げは重すぎない?大晦日なんだから、あっさり山菜そばにしようよ!」
ココはふむふむと頷きながらメモ帳に書き込みます。「なるほど、リリィはかき揚げ派、シカリンは山菜派…。」
するとリリィがすかさず抗議。「待って、そんな風に分けなくてもいいんじゃない?エビのかき揚げの上に山菜ものせれば…」
「そんなの丼みたいになるでしょ!」シカリンがまた突っ込みます。
二人の議論を聞きながら、ココはくすくすと笑っています。「そうだね、でもそばをどうするかも決めないと。ざるそばにするの?それとも温かいかけそば?」
リリィが少し考えて言いました。「ざるそばも好きだけど、大晦日って寒いし、温かいそばがいいかも!」
「いやいや、年越しそばはやっぱりざるそばが本格的だよ!」シカリンが主張します。
再び白熱するリビングの議論。その間に時計はどんどん進み、気がつけば昼を少し過ぎています。
「みんなー!そろそろ決めてくれないと、お店が閉まっちゃうよ!」
ココが少し焦った声を上げますが、二人はまだ結論が出ない様子です。
そこでココはひらめきました。「よし、こうしよう!全部作る!」
「えっ、全部?」リリィとシカリンが声をそろえて驚きます。
「わんこそば風にしてさ、ざるそばも、温かいかけそばも。具材も、エビのかき揚げ、山菜、たぬき、全部用意しよう。そうすれば、好きなものを選べるでしょ?」
「それ、すごく贅沢じゃない?」リリィが目を輝かせました。
「まあ、ココが作るなら安心だよね。」シカリンも納得した様子です。
その後、3人で急いでスーパーに駆け込み、大量の買い物をして帰宅。夕方にはココが腕によりをかけて、豪華な年越しそばパーティーが始まりました。
ざるそばにはわさびと刻み海苔、温かいそばにはふんわり揚がったエビのかき揚げや、香り豊かな山菜、そして天かすたっぷりのたぬき。テーブルいっぱいに広がるそばを見て、リリィとシカリンは大満足。
「結局、全部食べられるって最高だね!」リリィが笑いながら言います。
「本当に。今年もココのそばで締めくくれてよかった。」シカリンも頷きます。
ココはほっとした表情で湯気の立つそばを一口。「みんなが笑顔なら、それが一番だよね。」
そして由流里ハウスの3人は、お腹いっぱいになりながら、今年も良い年だったねと笑い合い、穏やかに年越しの夜を迎えるのでした。
おしまい
※2024年由流里ハウスの物語りをお読みくださってありがとうございました。シリーズは来年も続いていく予定です。忙しい日常何気ないお話でほっこりして頂けたら幸いです。