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「スコットランドの不思議な旅」ーその⑧

私は「このまま永遠にフォレス行きのバスが来ないのでは?」と思わずにはいられませんでした。それくらい、バスを待つ時間が果てしなく長く感じられたのです。
やっとバスがやってきたときには「ついに!」と心の中で歓喜の声を上げました。ところが……休憩時刻ではないはずなのに運転手さんは悠々と昼休憩に突入。
手にはサンドイッチと飲み物、そして新聞まで携えてバスに乗り込み、まるで「お昼タイム、邪魔しないでね」とでも言いたげな様子でした。

バス停で待つ数人の乗客たちは、寒風吹きすさぶ中、運転手の動きをじっと見守ります。
視線は「早く乗せてくれ!」と訴えていますが、運転手さんは気にする様子もなく、バスの中の座席で新聞片手にサンドイッチを頬張り、やがてそのままうとうとと眠りに落ちてしまいました。
私は「人間だもの、運転手さんも疲れているのよね」と自分に言い聞かせながらも、内心は「でも仕事中でしょ?」とツッコミを入れたくなる気持ちを抑えました。

やがて時刻が来ても、運転手さんは夢の中。待つ人々のざわめきは次第に大きくなり、「運転手はどこだ?」と不満が漏れ始めます。そんな中、一人の若者がついに行動を開始。バスの窓に飛び跳ねながら「コンコン」とノックしました。すると運転手さんは一瞬ビクッと起きかけましたが……またすぐに夢の世界へ逆戻り。
若者は「これは負けられない!」と言わんばかりに再びジャンプ。今度は「ゴンゴン!」と力強く叩きました。

ついに運転手さんが目を覚まし、あたりをキョロキョロ。ようやく運転席へ向かいました。
「やっとバスに乗れる!」と全員が期待した瞬間、
さらに10分間の準備時間が始まるというオチつきでした。

それでも、ようやくバスの扉が開き、私も乗り込みました。「フォレスまで片道のチケットをください」と伝え、無事に席へ。
バスの前方の席に座るのは、昔からの「酔いやすい体質への予防策」からくる習慣です。
運賃は片道6ポンド50ペンスと、以前間違えて買ったクルニアリー行きのチケットの半額以下。地方では払い戻しも簡単で、さっき受付で親切に全額返金してもらえたのは助かりました。ロンドンのように煩雑な手続きを求められることもなく、地方の素朴なサービスに感心した次第です。

さて、30分遅れでようやくバスは出発しました。すると、運転手さんが咳き込む声が。信号待ちの間にミネラルウォーターを飲んでいたので、どうやら風邪気味だったようです。「なるほど、だから仮眠が必要だったのね」と納得しつつも、「でも30分遅れるのはどうなの?」と微妙な気持ちも抱えつつ、私は白銀の景色を眺めていました。

いくつかの町を通過し、ついにフォレスに到着!バスを降りると、早速キョロキョロと看板を探し始めます。
歩いて約10分のクルーニヒルカレッジへの道を見つけるべく、表示を探すこと数分。
ついに「クルーニヒル」の文字を発見!赤いスポーツバッグを肩にたすき掛けし、「これでもう大丈夫!」と自分を励ましながらズンズンと歩き始めました。

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