『てらこや青義堂 師匠、走る』 今村翔吾 2019
江戸時代の時代小説として読み始めた。
寺子屋の師匠の過去や背景に何かあるのも、
日常の中で寺子屋の子どもに関わる事件が起こるだろうのも、
お約束で読み始めた。
事件がだんだん身近なものではなくなっていきます。
著者は、『塞王の楯』で第166回(2022年1月発表)直木賞受賞、今村翔吾さん。
今村翔吾さんは、作家になる以前、引きこもったりいわゆるドロップアウトした子どもたちにダンスを教え、それを通じて再び生き直しに導くという団体で、十数年間インストラクターを務めており、私にとってこの題材(『てらこや青義堂 師匠、走る』)は必然といえるものだったと語っていらっしゃいます。
一人ひとり、個性も過程環境も違う子どもたち。
子どもたちの成長過程は、短く、濃い。
大人であり、師匠と呼ばれる身でも日々葛藤し、思い悩んでいる。
「いつまでが子どもで、いつからが大人なんだよ。歳で分けられるか?」
「人を想い、人のために生きる。それが大人になることだ。
耳にたこが出来るほど、先生から聞かされたよな?」
『てらこや青義堂 師匠、走る』今村翔吾 抜粋
このセリフを言うのは、筆子(寺子屋の生徒)の中で一番やんちゃな子である。
現代、大人な大人はどのくらいいるだろう。
子どもの中に、大人な子が多いように感じる。
また著者も語っているように、本作の大きなテーマの一つは、
「やり直す」
「生き直す」ということ。
その「生き直す」の中の一つ。
螺旋から抜ける
が、実は人類の大きなテーマ
人類が気づき
誰からともなく「いち抜けた」をしていく
ことが小さな幸せ、全体の平和へとつながっていくのではないだろうか。
螺旋とは、復讐の連鎖である。
仇討ちが認められていた江戸時代では当たり前のことだったろう。
でも、復讐心、怨念を持って生きることは誰も幸せにしない。
これは江戸時代などの古い時代だけの話ではない。
奇しくも松本潤さん主演ドラマ『となりのチカラ』でも、先週が復讐がテーマでした。冷めた目で見ると、このドラマの登場人物たちは、ちょっと変。
というか、誇張されて書かれていると思う。
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