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フィンランド・グラスアート展~庭園美術館②~
庭園美術館のフィンランド・グラスアート展に昨日土曜日に行ってきた。
東京都庭園美術館|フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン|2023年6月24日(土)–9月3日(日) (teien-art-museum.ne.jp)
会期は6月23日から今日9月3日まで。
ずっと行こうと思っていたのだけれど、何やかや後回しになっていて、慌てて駆け込んだ。
夕方だったら比較的すくないかと、4時過ぎに訪問したので、いつもより人は多い気はしたけれど、入場制限が入るほどではなかった。
いまどきらしく、写真撮影可なので、あちこちでスマホを出して撮影している人が多かったので、なんとなく、歩くのに気を遣いつつ、鑑賞。
内容は「圧巻!」の一言。
思った以上に展示の点数が多く、1930年代から現代まで、フィンランドガラスの世界を楽しむことができる。
第二次大戦の最中や、戦後間もない時期に発表された、アアルト夫妻やニューマンの作品は、今見ても全く古さを感じさせない。当時の人たちにとってはどんな衝撃だったのだろうと想像するミニマルな美しさで、改めてガラスの美しさに引き込まれる。
時代が進んで、イタリアの色ガラスの製法なども取り入れられるようになっていくが、やはり透明ガラスの美しさは群をぬいていると思う。
フィヨルドと名付けられたヴィルッカラの作品は、本当にフィヨルドを切り取ってきたかのようだし、氷上の釣り穴という作品は、湖の氷が目の前にあるかのように感じられた。暑い中、そこだけ、ちょっと涼しくなるような感じさえしたものだ。
写真撮影は可能だが、当然ながら触ることはできないのだけれど、私はこの展覧会の間中、飾られた作品に触れたくて、うずうずして大変だった。
あの滑らかな、もしくはざらざらした面にふれたらいったいどんな感じがするのか。
ありえないけれど、そのまま指がめりこんでいくかのような幻想すらだいてしまうほど、ガラスの質感はまるで生きている、水や氷のように感じられるのだ。
江戸切子もヴェネチアガラスも大好きだけれど、フィンランドのガラスは皆ゆったりとして大きく、全く違う存在のように思う。
なんだか、まるで、ガラスだけれど、北欧の自然の一部であるかのような気がするのだ。
映像展示は2か所あって、どちらも、ittara社の制作。
解説は一切なく、見事としかいいようのないカメラワークで作成の過程を紹介するだけなのだけれど、職人たちのそれぞれの思い入れがよく見える。
特に2作目は、トイッカへのオマージュがおそらく含まれているのだと思う。言葉がないけれど、少なくとも私にはそう感じられた。
新館の展示は、現在を代表する、トイッカ、サロ、ラークソの3人の展示が広いスペースに一斉にされている。
区切られた部屋が中心の本館での展示の仕方と全く違って、それぞれの作品が作り出すエネルギーが重なり合って、すごくパワフルな空間を作っていた。
本館でもかなりの数の展示を観た後で、けっこう疲れも出るのだけれど、建物の構造に合わせた展示で、また新たな気分で楽しむことができた。
また今回は前述したとおり、展示が多いせいか、本館では、普段つかわない書庫やトイレなども展示に使われて、あまりみられない空間に入れたり、香水塔のそばまで行けたり、かくれていることの多い、壁のレリーフが見られたりもした。
何度も足を運んでいても、なかなか見られない庭園美術館自体を体感することもできる展示の仕方だったのもうれしいポイントだった。
この日は最初からカフェはあきらめていたが、やはり新館を見終えた時点で、もうカフェはオーダーストップの時間だった。
ミュージアムショップの外に冬場はなかったテーブルと椅子があり、そこで休んでいる人も何組かいたが、それも見ただけで、通り過ぎ、今回は庭園もパスして向かった先は、ウェルカムラウンジ。
実はこの10月で庭園美術館が開館40周年を迎えるということで、いろいろイベントがあるのだが、このウェルカムラウンジは、これまでの展覧会のチラシや図録が見られるというこことで、とても楽しみにしていたのだ。
壁一面に展示されたチラシを見ていると忘れていた記憶がどんどんよみがえってきた。
年がばれそうだが、自分が東京に来た年に庭園美術館が開館になり、あの時は本当に東京にいて、気軽にこの美術館に来れるということに感謝したのを思い出す。
それから何十回来たかわからないが、たぶん展示を観たということでは、一番来ている美術館なのだ。
メッセージコーナーもあり、それぞれ美術館に寄せてメッセージを書くことができる。飾ってあるメッセージを読むのもまた楽しい時間だった。
ものすごおく満足して、美術館を出ると、少し夕暮れが始まっていて、先週までとは少し違う気配。
暑さは相変わらず厳しいけれど、少しずつ季節は進んでいるのだ。
40周年は何回訪れることができるだろうか。
そう思うとわくわくしてきて、元気になる。なくなってしまうものも多い中で好きな場所が続いている嬉しさと感謝でいっぱいになる。
ありがとう、庭園美術館。
また行きます。