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夜の花 段違い藤棚
夜の花を見ていた。
月の光に妖しく輝き、闇に香気を流す。
幾段にも重なる藤棚に、無数の藤の花房が細く長く垂れ下がる。
私は虫のように幻惑され引き寄せられ、恍惚として見惚れる。
時の流れは緩やかになり、月の光だけが柔らかく降り注ぐ。
物にさえ付喪神が宿るこの国、数百年を経たこの木に何かの神が宿っていても不思議ではない。
そうでなければ、この滝のような花は咲かないのではないか。
彼岸でしか見れないような不思議な花。
月の光で見るその花の色は妖しさを増し、周囲の空気まで変えていく。
花の呼吸。
私は現実を忘れ、心は鳥となってこの花の大瀑布を飛びながら楽しむ。
花の香蜜に酔い痴れて。
*今回の絵は昨年「月夜の大藤の花」水彩(はがきサイズ) として投稿
したものを大判和紙(79cmX109cm)に描き変えたものです。
絵 マシュー・カサイ「夜の花 段違い藤棚」水彩・墨