見出し画像

内面を鍛えることで、肩書に見合った自分をつくる。そして、いよいよ発信のステージへ。

#女性管理職 #仕事と家庭 #気持ちの切り替え #キャリア #ライフデザイン #インタビュー #働く女性  

「これからどうしよう?」と迷ったとき何かのヒントを見つけてもらえればという思いで紹介している「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソード。

今回は、若くして管理職となった由紀さん(仮名)のエピソードです。さまざまな経験をする中で、30代、40代、50代と変わっていった心持ちとは?


由紀さん(50代前半)*インタビュー当時
経歴: 日本の大学を卒業後、留学中に、家を継ぐと思っていた姉が他家に嫁ぐことになり、自分が家を継ぐことになる。帰国後、別会社での勤務を経て、代々引き継いでいる会社に入社。さまざまな業務を経験した後、現在は取締役として活躍中。プライベートでは3人の子どもの母。

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?

いい棚卸になりました。私は、30代が底だったんだなって改めて思いました。いろんなことがいっぺんに来た感じです。出産が数年ごとにあって、仕事面でも新しい仕事を次々と任され、今考えたらきつかったです。つわりもひどくて、3人とも1か月休みました。
 
仕事では、いろいろな業務を経験しました。部署ごとに全然違って、一からの勉強だったんですけど、私は飽きっぽい方なので、環境が変わることが良かったんです。良くも悪くも、リセットされるから。
自分より経験の長い方をマネジメントすることもありましたが、各部署にいるその道のプロフェッショナルが何を考え、何に困っていて、どうしたいのか、よくコミュニケーションをとることで、自分がすべきことがおのずと見えてきました。どの部署であっても、その方々が働きやすいように立ち回ることが大事だと気づけました。

由紀さんが描いた人生曲線

生きざまが一変(20代:家を継ぐことになる)

―――最初の転機は?
 
留学中に、家を継ぐことになったところですね。姉が家を継ぐと思って、私は気ままに生きるつもりで、大学卒業後に留学していたんです。ある日、姉から、長男である人のところに嫁に行きたいのだが、という電話がかかってきて、私は反対するつもりはなかったので「どうぞ、どうぞ」と言いました。それで、私が家と事業を継ぐことになっていきました。

―――家と事業を継ぐとなったときは、葛藤はなかったですか?
 
意外となかったんですよ。「わぁ、それもありだわ!」と思いました。なんだかスーッと受け入れることができました。幼い頃から継ぐようにと言われていたら苦しかったかもしれないけど、それまで自分とは関係ないと思っていたので、その距離感が良かったのかもしれません。
私は、これといってやりたいことがなく、なんだか一番歩きたい道からちょっと外れて横の細い道を歩いているような感覚があって留学したんですが、留学先でいろいろな人に会って、考え方とか、明るさとか、すごくいいなぁと思いました。と、同時に、「やっぱり日本もいいなぁ」と思うようになったんです。もっと日本の良さを発信できるような仕事がしたいと思いました。
そんな頃だったので、「事業を引き継いで日本の良さを世界に発信していきたい」と思いました。留学から戻って、いったん他の会社に勤めた後、30歳になる手前で今の会社に入りました。 

新しい仕事と出産の連続(30代:苦しみながら鍛えられた時期)

―――30代で人生曲線がドーンと落ちていますね?
 
仕事の環境が変わっていったのと、自分の出産の時期が重なったんです。30才で結婚して、31才で出産しました。
 
入社して最初は、数名の小さな部署だったのですが、次に移った部署は、会社の中心となる大きな部署で、本当に大変でした。
私はまだ30歳だったのですが、事業承継者ということもあって、そこの管理職になりました。同じ部署にいたメンバーも戸惑ったろうな、と思います。
その頃、ちょうど代わった新社長が、元々その部署出身だったこともあって、部署のメンバーも、新しく管理職で来た私に話すより、社長と話した方が早いみたいな感じで、苦しかったですね。時期的にもつわりで体調も気分も悪い頃でした。
当時は私も若かったから、なんで私に言ってくれないんだろう、などと悩みました。それでも、皆が上に言いづらいことは、私が間に入って言ったりとかしているうちに、やっとチームになっていきました。その部署には5~6年いましたけど、いやぁ、鍛えられましたねー。人生曲線は下がったけど、こういうプロセスは必要ですよね。今だから言えるのかもしれないけど(笑)。

―――そういう悩みはどうやって解消したのですか?
 
スポーツに支えられた感じですね。私はスポーツが大好きで、ゴルフ、テニスは本当に気分転換になります。運動して、おいしいものを食べて、寝る。そうすると確実に体が元気になります。で、体が元気になってくると気持ちも上がってくる。大変なことがあっても、それはそれとして、週末運動しようって思うんです。
最近は、娘とバイオリンを習ったり、娘の影響でバレエを見るようになったり、美術館に行ったりもしています。体を動かしても取れない疲れも、芸術に触れることでとれるっていうのがあるんですよ。芸術のすばらしさを実感しています。
 
昔から切り替えは上手な方で、自分の中にため込まないことが大事、と思っています。「所詮、私のせいじゃない」「私はおかしくない!」と思ってる(笑)。
 
あとは、社外の人とのつながりですね。社内の仕事が自分のペースで進まない時は、前職の会社の人たちと会って、勉強させてもらったり、その方がやっている会社を見に行ったり、工場を見せていただいたり、学びを外に求めました。それが後でものすごく役に立ったりするんです。

―――出産、子育ても大変だったんですね?
 
子育てって体力が要りますよね。ただ、子どもを理由に早く帰って気分転換になることもあるから、子どもに助けられたところもいっぱいあります。今もそうですけど、仕事の疲れを家で癒し、家の疲れを会社で癒すような感じでしたね。ずっと同じことをしているのが苦手なので、あっちこっちと、進められるものは進めて、進まないものはしばらく放っておく、みたいな感覚でやっています。

自分が薄っぺらに感じて、内面を鍛えた(40代:内面の充実期)

―――40代は、どんな時代でしたか?
 
若くして役職に就いちゃったので、「今の自分がこんな役職でいいのかな」と30代の時は思っていました。なので、40歳になった時に、ああ、「やっと40歳になれた」と、少しホッとしたんですよね。
でも、自分のやりたいことの半分しかできていない感じでした。だから、あとのもう半分で、これからあとのために、内面を鍛えておこうと思ったんです。
私は元々、社交的な性格で対外折衝は得意なんです。でもその割に、中身は薄っぺらだなーとずっと自分で思っていて、もっと本を読んだり、コンテンツを自分の中に溜めていきたいと思ったんです。いい方に出会ったり、いい方の話を聞いたり。自分の手帳にも「内面の充実」と何度も書いています。

いよいよ発信していくとき(50代:マネジメントとしての役割)

―――40代後半から人生曲線が上がり始めたんですね。
 
40代は勉強をしてきて、50代はいよいよ発信していくときかなと思っています。やっと会社の戦略を描いて、皆さんと一緒にビジネスをやれるんじゃないかなという気持ちになっています。
50歳になった時、手帳に「空気を読まない」と大きく書きました。それまでは、周りの人たちの気持ちばかり読もうとしていました。これを言ったら白い目で見られるかなとか、言い過ぎかなとか。でも、こんなことを気にするのはおかしいと急に思ったんです。50歳で吹っ切れた。とにかく思ったことを言おうと決めたんです。そうしたら、自分は生きやすいし、共感してくれる人が多いし、トップに真正面からぶつかってみたら、むしろトップとの関係も良くなりました。

―――由紀さんにとって、手帳に書くことが力になる感じなんですか?
 
手帳には、いっぱい書きます。新聞で読んで自分の心に残ったことなども書くんです。前に書いたことを読み返すと、そうだよなーと思ったり。 

世界への発信と、後輩を育てること(今後について)

―――これからについてはどう考えていますか?
 
今後、60代くらいまで、会社でつくっているものを世界へ発信することをしっかりやりたいです。そして、リタイアしたら、教育に携わりたいな、とも思っているんです。とにかく、ずっとビジネスをしていたいですね。
 
今は会社の後輩を育てることを一生懸命やっています。数ヵ月ごとに社外からロールモデルを呼んできて話をしてもらったり、ランチ会で皆で話したりなど、女性管理職の卵を育てる場をつくっています。管理職に上げられても、その後のケアがないとつらいので、そこのサポートは私の役目かなと思って。

迷ったらGo!(女性たちへのメッセージ)

―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
 
迷ったらGo! これは私の哲学かもしれない。少しでも迷っているなら、それはGoでしょ。
今のトップは、女性の管理職を増やすように言ってくれていて、今、業界平均より高い比率で女性管理職がいるんです。気後れする人もいますが、時代が要請しているんだから素直に受けてくださいと言っています。30代の私も経験したことですけど、管理職になったら苦しいことはあります。でも、必ず自分の肥やしになるからって。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか? 

自分のいい棚卸しになってありがたかったです。こんなふうに何十年にも渡って自分を振り返ってみることがなかったし、自分のことをじっくり考えたりすることがなかったので。

(*文中の写真はイメージです)


インタビュアーズコメント

若くして管理職になり、30代ではさまざまな不安を抱え、40代で内面を鍛えた。そして、50代でようやく吹っ切れた、というお話に、鍛えられてきた道のりを感じました。一方で、柔軟な切り替え力で、苦難もポジティブに乗り越えて、疲れを癒すサイクルも持っておられる。
笑顔がとても魅力的で、お話も分かりやすく、感じたことをびっしり書いている手帳も見せていただきました。自社で扱っているものを、国内外に広めたいとお話されているときの力強さに、姿勢が正されるような感覚もありました。自分にも周りにも真摯に対する、素敵な人間力のある方だと感じました。今後の更なる活躍を楽しみにしています。


【L100】自分たちラボ からのお知らせ

ライフデザイン研究会【L100】自分たちラボでは、働く女性に対するインタビューを行っています。詳細は『働く女性の人生カタログ』~プロローグ~をご覧ください。
ご感想やリクエスト、インタビュー希望などは下記メールアドレスへ。
mailto:L100lab.tokyo@gmail.com
フォローして今後のエピソードも読んでいただけると嬉しいです!


いいなと思ったら応援しよう!

【L100】自分たちラボ
よろしければ応援をお願いいたします!