加速主義
加速主義ってご存知でしょうか。私も最近、ネット配信で宮台真司さんが志向されていると知り、気にはなったのですが、そこでの情報では十分に理解出来ず、直近読んだ内田樹さんと白井聡さんの対談集「新しい戦前」(2023年8月発行 朝日選書)の中で詳細に触れられてたので、概要がやっと理解出来、なるほどと思う反面、恐ろしい世の中に本当になっていると痛感しました。
加速主義とはアメリカ発の思想で、もう資本主義は末期である。これから世界はポスト資本主義の社会の社会に入っていくが、民主主義や基本的人権や社会正義といった古めかしい近代主義イデオロギーのせいで、資本主義はむしろ延命している。資本主義の欠点を左翼やリベラルが補正しているせいで、もうとっくに滅びてもいいはずの資本主義がまだ滅びていない。むしろ資本主義を暴走させて没落を加速し、資本主義の「外部」へ抜け出るべきだという思想とのことです。
昨今の政治資金パーティーでの裏金問題の決着や万博予算の拡大問題、性加害問題等さまざまな事例の発生からクロージングへの流れについて「何でこんなことになるのか。」理解不能なことが多々あったのですが、すべて資本主義の加速化(人間がすでに資本主義に取り込まれており、競争社会の進行により公的なものが極めて少なくなり、限られたパイの取り合いで、より生きにくい社会が進行していることに疑問を持たず、一部の勝者が敗者を平気で切り捨てることが肯定される格差社会をみんなが容認するようになっているとすれば「資本」自体の増殖加速化と言える)で説明がつきそうです。
加速主義自体はディストピアを目指すものではなく、現状打破のためのロジックだと思いますが、勝者が敗者を助けないことが堂々とまかり通り、敗者も納得してアクションを起こさなければ、勝者の数がますます少なくなるだけでなく、やがてすべての人間が敗者になるような社会になってしまうと懸念します。
私がテーマとしている不登校問題も、このような社会環境と関連しているのは間違いなく、内田樹さんは教員相手のセミナーで、教師の一番大事な仕事は、歓待と承認と祝福だという話をされるということですが、「ここは君のための場所だ」と言って子どもたちを歓待すること、「君にはここにいる権利がある」と言って子どもたち一人一人を固有名において承認すること、そして「君たちがここにいることを私は願っている」という祝福を贈ること。その三つができたら、それだけで学校教育の一番たいせつな仕事は終わっている。教科なんて別に教えなくて構わない。と話すと教師は驚きながら頷いてくれる。とのことです。
これは今の学校が無条件の承認をしないことを前提にしていることのアンチテーゼだと思います。
いずれにしても私個人としては加速主義というのは恐ろしくて賛同出来ないのですが、腹を括って考えないような状況になっているのは間違いないものと思います。