世界五分前仮説のように
読みこまれていく自分
睡眠が趣味といってもいいくらい、眠るのが好きだ。あの眠りに落ちる瞬間の超うとうとした夢うつつの時間が気持ちいい。
私は睡眠が浅いのか、昔から夢をよく見る。
よく、夢は現実世界でのできごとを必要な情報と不要な情報を脳内で記憶のファイリングするために見るものと言われている。
人によって色々だけど、ふだんは仕事の続きのような夢を見たとか、実在する知人友人がごちゃ混ぜに現れて飲んでいたとか、ありそうでなさそうな現実的な夢を見ることが多いらしい。たしかにファイリングっぽい。
たまに架空の動物やもう実在しない人が現れたりすると、なんらかのメッセージとして心に残る。
さらに行ったこともない土地が現れたり、想像上のイメージが現れたりすると、現実世界とはまったく違う世界を見てきた記憶なわけで、そうなると記憶のファイリングどころか、別の記憶を作っているようなものではないか。
眠りに落ちる寸前と、目が覚める寸前は変性意識状態になる。顕在意識と潜在意識の中間くらいにいるのだろう。
眠りに落ちるとき、現実世界の記憶が薄れつつ、夢の世界の情報が読みこまれていく。
逆に眠りから覚めるとき、夢の世界の記憶が薄れつつ、現実世界の記憶が読みこまれていく。そして完全に目覚めたときに「ああ、あれは夢だったのか」と思う。
どれだけ現実にありそうな夢を見ても、あれは夢、これは現実、とちゃんと脳内で分類されている。
本当にそうなのだろうか。よく考えることがある。
夢から目覚めたとき、「現実世界の記憶をぜんぶ持ったままの自分」が読み読まれているだけなのではないだろうか。
都度「私」が読みこまれていて、氏名、家族、経歴、趣味嗜好、容姿や過去の記憶、現状抱えている悩みや問題なんかも、以前からずっとそうだったように、今朝起きたときに読みこんだだけなのではないか?
もしかしたら、今朝、目覚めるまえの自分はまったく違う記憶をもっていて、今日と違う生活をしていたかも知れない。
アニメの「Re:ゼロから始める異世界生活」のような毎回目覚めると、少しずつ違う日常になっている感じとかではなくて
少しずつ違うも何も、それしか自分についての情報を読みこんでいないのだから疑いようもない。
マトリックスと同じで、この自分とこの日常とこの世界のみがすべてだとしたら、「あれ、今日なんか自分違くない?」などと思うはずがないのだ。
パラレルワールドとかマルチバースとか
なんでそう思ったかというと、あの睡眠導入時のうとうと意識で、今から見る夢の世界の「設定」を読みこんでいるような気がするからだ。
現実世界の「設定」とはぜんぜん違う記憶や概念が入ってくる感じ。
たとえば、夢の世界では結婚していて、嫁姑問題に気をつかっているとか、夢の世界には現実世界にはない特殊な法律があるとか、そもそも現実の自分ではない人物だったりとか。
うとうと時なので、ちょっとした音や刺激で起きてしまう。
そのときに「あ、今ぜんぜん知らない概念を持っていたような、、、」と思ってしまうのだ。
もしも毎回、読みこまれた設定だとしたら、それこそちょっとづつ自分の日常が違うパラレルワールドだろうし、自分なんて存在しないパラレルワールドだってありうる。
そんなこと言い始めたら、昨日の自分そのものが全く別の人だった可能性だってありうる。
たとえば、昨日はアフリカの女性で、一昨日はアメリカ合衆国の政治家で、先一昨日はインドの子供で、みたいに。
その人たちも目覚めたら「いつもの自分」って思っているから何も不思議はない。記憶としての日常や過去や人生があるだけ。
なんなら江戸時代の侍とか中世の騎士団とか、なんでもありうる。その時々の「誰それデータ」のすべての記憶ごと読みこんでいるだけだから。
って、考えると
たしかにワンネスや全体のいのちとか、まっさらなパソコンのような宇宙のように「仮想空間」とも考えられる。この現実世界に自他が認識している世界はこれしかないとは言い切れない。もちろん仮想空間も否定できないし。
人間世界の概念なら、意味もなく必要なさそうな概念でも、まるごと読みこんでしまっているとしたら。
個人の苦しいも辛いも「そういうものであって、そういう設定なの。それらはただのプログラムで、別にあなた個人のものじゃない。」ってことになっちゃうんだろうか。
宇宙は完璧である、というけれどそういうことなんだろうか。
たまに、またネガティブな気持ちで埋め尽くされそうになったとき「これ本当なんだろうか、こういう感情までも実は茶番なんじゃないのだるか」と思うときさえある。
寒い夜更けに、考え出したらキリがない。
◆この頃、昔のサーカス映画とか喜劇映画とかばかり観てる。今回のイラストは「地上最大のショウ(1952年)」のバトンズ。謎めいた頼りがいのある道化師。というか、昔の映画ってCGやスタントなしで撮影してるからハラハラする。