12 / 55、 ウオズミユウさん 【 企画 | 虎吉の交流部屋初企画 】
9虎吉のトップページ固定記事「虎吉の交流部屋」内で、この夏、以下のシークレット企画「虎吉の交流部屋初企画」を開催しておりました。
● タイトル : 季節のnote(7月)
● 募集期間 : 7/1 ~ 7/31
● お 題 : 7月の季語から1つ以上選び、
それをテーマに自由に書く
そこで今回、ご応募いただいた作品を、応募いただいた日時の早い順に紹介させていただきます。
【 12 、 ウオズミユウさん 】
● 季語 : アイスコーヒー
🌳① 感動、感激、共感、ポイント
アイスコーヒーという(一見、テーマにするのが難しそうな)季語に焦点を当てて短編を書き上げるという想像力、文章の膨らませ方、に深く感激しました。
このアイスコーヒーという季語、投稿作品55作品のうち、ウオズミさんただ1人だけが選んでくれたレア季語です。
どこかお洒落な雰囲気の漂う文章で、女性目線から男性目線へと反転する構成も斬新で見事です。
静かな展開の中に時折、重要なフレーズが出てきて読者を惹きつけるところもさすがです。
🌳② 作品から感じる作者の印象
比喩表現が素晴らしく洗練されています。
今回の55本の投稿作品の中でも、比喩表現の素晴らしさは突出しておられました。
豊かな感性とともに、それを比喩表現などを自在に使いながら、表現できる人、という印象です。
おそらくこれまでの読書経験の中で培われたものなのでしょうが、なかなか真似できるスキルではありません。
情景描写が具体的でその場の雰囲気が分かりやすく表現されているようにも思いました。
また、ウオズミさんの他の作品にも出てくる表現で、とてもいい意味で独特の言葉の繰り返しというものがあるように感じます。
この作品に出てくる
「まだ六年しか経ってないんだ。まだ、って思う。ずっと、まだ、って思うと思う」
というような表現です。
個人的にウオズミさんのこの独特の表現方法にはすごく惹きつけられるものがあります。
🌳③ 作品への感想
6年前、彼と一緒によく行っていた喫茶店で交わした会話を思い出し、彼女と彼の両方の視点から当時の喫茶店でのワンシーンを回想する、というユニークな構成で綴られた切ない短編物語。
今回、企画を立てて季語を選んだ時点で、「おそらく『アイスコーヒー』を選ぶ人はいないだろうな」と正直、僕は思っていました。
アイスコーヒーの思い出話や、アイスコーヒーから想像力を働かせた創作物をつくるのは難しいだろうなぁと思っていたからです。
それだけに、ウオズミさんの投稿はいい意味でとても衝撃的でした。
まず、6年前の記憶を彼と彼女の2人の視点で回想する、という切り口が斬新で、読めば読むほど引き込まれる物語です。
喫茶店というどかかお洒落な雰囲気の漂う静かな空間で、アイスコーヒーを飲みながら2人で何気ない会話を交わす。
彼女の方は、どんな日だったか、どんな話をしたか、細かくディティールを覚えているけど、彼の顔だけが思い出せない。
彼の方は細かいディティールは覚えていないけど、彼女の異変、違和感、顔をしっかりと覚えている。
2人が共通して鮮明に覚えてる部分や、記憶がすれ違っている部分が会話や比喩表現を巧みに使いながら描写されているのが特に印象的です。
関係性が次第に曖昧になってくることを感じる部分や、男性側もそれに気づいていた部分が読んでいて切なくなります。
2人は同じ空間にいながら、見ているもの、感じているものが全く違った。それが女性ゆえ、男性ゆえのすれ違いだったのか、また別の理由があるのか。
これは実は実際にあった話なのか、あるいはもっと深読みして2人は同一人物であったとか···。
そうした読者それぞれの色々な解釈の余地をこの作品はあえて残してくれているように思います。
もしくはそのような色々な解釈を様々な人に持ってもらい、それぞれに想像力を働かせて読んでもらうのが作者の真意だったのでは、という深読みもできます。
いずれにしても、ウオズミさんにしか書けない、何とも言えない余韻の残る素敵な物語です。
ぜひ多くの方に読んでいただきたい記事です。
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