家族のカタチはさまざまだ〜『漱石の妻』の感想〜
本を読む時間が減っているのだけど、久しぶりに「読み切った」ので。
『漱石の妻』
実は、夏目漱石の本、ほとんど最後まで読めた試しがない。
こころ、それから・・・難しくて、全くダメでした。
しかも、そんなに難しくないとされる坊ちゃんでさえ、途中まで。
NHKのドラマの影響もあって、前から気になっていたこともあり読み始めた。
漱石って、めっちゃ大変な夫じゃないか?!
正直、妻の鏡子さんが「悪妻」だなんてことも、ほとんど知らなかった。
終始妻の視点から描かれる漱石は、潔癖症、胃潰瘍、精神的な病と、大変な夫。
病気とはいえ、ときどき妻や子に暴力を振るう。
しかも、門下生たちには優しく、いい先生でいる。
そんな環境の中、鏡子さんは、7人の子育て、家計のやりくり(質屋通い)、夫の病の看病と、家族の舵取りを一気にやっていたことがよくわかった。
家族のカタチを追い求めている「同志」
漱石の家のことが、家族の視点で、私小説よりも「赤裸々」に語られる。
でも、後味が悪くない。
もちろん、大変な生活だったと思う。
しかし、一方的に、漱石が悪いとかではなく、妻が家族の一員として、何よりも漱石と自分と、そして子どもたちと、どうしたら「幸せな」家族になれるのかを追っている。
その作品に「悲壮感」が不思議と感じられない。
表現には絶望や、実際に自殺未遂を起こされた時の経緯もある。
事件はどれも鏡子さんにとっても、漱石にとっても大変だったと思うのだけど。
なんでだろう。
鏡子さんの元来のおおらかな性格ゆえなのか。
ほかにあるのかはわからないけれど。
少なくとも、鏡子さんも、漱石も
「理想の家族」をそれぞれが追い求めていた「同志」的なものを感じた。
漱石も、もしかしたら、大変な生活だったかもしれないけど、後味は悪くなかったのではないか。
そんなことを思ったり。
漱石の作品を読み直すきっかけになるか
鏡子さんの視点で描かれる漱石は、
文豪である前に、
小説家である前に、
教師である前に、
「人」だったんだろうな、と思わせる。
そう思うと、読み直してみたい気もするけど、
たぶん、また挫折しそうなことも、予想される。