うさぎとの生活がいかに健康に良かったことか!
はじめに断っておくと、私はウサギを飼うことはおすすめしない。
もし、どこかで可愛いウサギを見つけて「私もウサギを飼いたいなあ」と思ったら、ウサギの飼育法を勉強してからもう一度自分に「ウサギを飼いたいか」問うことをお勧めする。
3ヶ月前、12歳6ヶ月だったウサギのHAPPYが私のそばから去った。
これで19年に渡った私とウサギ達の共同生活は終わりを迎えた。
私はのべ5匹のウサギを飼ってきた。どの子もとても個性的で素敵なウサギだった。
12年前、それまで飼っていた2匹のウサギのうち、1匹が病気で亡くなってしまい、ひとりぼっちになったウサギに仲間を探した。
こうしてやってきたのがHAPPYだった。(HAPPYとその妹ウサギも引き取ったので3匹の多頭飼いになった)
3匹いたうさぎもやがて年をとり、2匹になり、そしてHAPPY1匹になった。孤独になったHAPPYはその後2年半ほど私の元にいた。
ウサギが3匹いた時も勿論ウサギ達に話しかけていたし、世話もできるだけのことはやってきたつもりだ。
だが、社会性のある動物であるウサギが1匹になった時、それまで以上に話しかけたり撫でたりしていた。
ちょうどコロナ禍が終了して、学生だった息子は自分のアパートに戻り、夫も仕事が増えたところで、私は自宅で一人時間を過ごすことが多くなった。一人ぼっちの私と一人ならぬ一匹ぼっちのウサギのHAPPYは、お互い寂しさを紛らわすのに良い仲間だったのだ。
(とは、人間の私が勝手に思っていることかもしれないが)
毎朝、目覚めるとまずはウサギの部屋のドアを開け「HAPPYおはよう!」と大声で挨拶した。
どんなに気分が落ち込んでいる時でも、HAPPYの姿を見ると思わず笑顔になれた。声をだして挨拶をすると気分も爽快になった。
すぐにうさぎに餌をやる。餌を持ってきた私の姿をみたHAPPYがすぐに駆け寄ってきた。
頼りにされていると感じると嬉しい。よし、今日もせっせとあなたのお世話をするからね!と元気をもらった。
餌として与えていたのは牧草と新鮮な野菜だった。(ドイツではウサギの餌として野菜を与えるのが主流)
頻繁にスーパーにでかけては、葉のついた人参やウサギの好物Kohlrabi(コールラビ)の葉っぱをゲットするのに燃えていた。
なんとなく体調が悪くて外出するのが嫌だな、と思っても、HAPPYの好物のためなら車を飛ばしてスーパーまで出かけた。
新鮮な野菜をゲットするためには午前中の方が良いスーパーだった。私の研究では開店直後ではなく、開店してから商品を並べ終わった直後、9時ごろが最適解。(開店は8時)
その時間を狙ってスーパーに突撃だ。
重いカートを押しながら、颯爽と野菜売り場に向かい、無料でもらえるコールラビの葉っぱを探しまくった。
新鮮な葉っぱが置いてあると「ああ、今日はなんて良い1日だろう!」と嬉しさもMAX。我ながら単純だと思いつつ、ビニール袋にコールラビの葉を詰め込んだ。
もし、コールラビの葉の袋つめ選手権なるものがあったなら、私は優勝できたかもしれない。
ちなみにコールラビという野菜はこれ。キャベツの仲間である。
葉の部分は人間は食べないが、これが大好きなウサギは多く、HAPPYも喜んで食べていた。
ドイツのスーパーでは葉の部分もついたまま売り場に置かれているが、買う時にこの葉をちぎりとってからカートに入れる人が多い。
おかげで他の客がちぎり捨てた葉っぱを無料でもらえるスーパーがある。(全てのスーパーで無料でもらえるとは限らないので、ドイツ在住のウサギ飼いの方は注意してほしい)
売り場にコールラビはあるのに、ちぎり取られた葉っぱのない時は、新鮮な葉のついた実を買った。
実は人間が食べ、葉っぱはウサギにやるのだ。
コールラビは生でも食べることができる。我が家では皮を剥いたコールラビの実をスライスしたものをそのまま食べるのが人気だ。コールラビは野菜だ。野菜は健康によい。
こうして、ウサギのおかげで我が家の食卓には何度となくコールラビのスライスが食卓に登った。おやつにもなった。
コールラビだけではない。人参の葉っぱが大好きなHAPPYのために葉付きの人参を切らしたことがなかった。
こちらも葉はウサギが、実は人間が食べるのである。人参の葉っぱのおかげで我が家の冷蔵庫には常に溢れんばかりの人参がストックされていた。
そのまま捨てるのはもったいない。当然、人間が食べた。しかも葉付きで売られている人参は甘くて美味しいものが多かった。
コールラビと人参だけではない。毎日山のように野菜を食べるウサギのために、私は毎日山のように野菜を買っていたのだ。
冷蔵庫の野菜室は常に満員御礼状態だった。
野菜というもの、特にウサギの好きな葉物は鮮度が命だ。買った先から消費しなくては、それは「食品ロス」となってしまう。
勿体無い!野菜を捨てるなんて、そんなことをするとウサギに叱られる。
ウサギのためにストックしておいた野菜が古くなってくると、食べられなくなる前に人間が食べた。おかげで野菜不足からは程遠い生活をしていた。
レタス、白菜、チコリ、ノヂシャ(Feldsalat)、カブ、ラディッシュ、ブロッコリ、セロリ、人参、コールラビ,,,
人参スティックなんぞ、人間の毎日のおやつだった。実に健康な食生活ではないか!
毎日笑顔で「HAPPY!」と言って自分もハッピーな気分になれたし、人間も毎日野菜をたくさん食べていた。
ウサギとの共同生活のおかげで私は心身ともに健康でいられたのだ。
しかも、庭に生えるタンポポ、オオバコ、笹の葉をウサギの餌にするために、庭には一切の農薬、除草剤の類を撒かなかった。
雑草抜きに追われたが、それでもいい。ウサギに除草剤のかかったタンポポを与えたくなかった。
どうだ、いかに私がウサギのおかげで恵まれた生活をしていたことか!
それが今や冷蔵庫の野菜室は空っぽだ。食卓に野菜がのっていないことに唖然としてしまう。
夕方、ふと「今日は笑ったっけ?声をだしたっけ?」と思う日もある。一歩も庭にすら出ていない日もある。
まずい。実にまずい。
この調子ではせっかくウサギが教えてくれた健康な暮らしが壊れてしまう。
3月に一時帰国をしたら、姪がこのベンジャミンのぬいぐるみを私にプレゼントしてくれた。
HAPPYになんとなく似ているベンジャミンはオスウサギ。HAPPYはメスだったが、帽子をかぶっている姿はメスウサギにしてもいいんじゃないか?と思う。ピアノの上に置かれたこのウサギのぬいぐるみの名前は、だからHAPPYだ。
もっとたくさん、HAPPYがいた時のように笑おう!別に笑う理由はなくても。
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