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映画感想文4 「胸騒ぎ」 帰りたいお泊り会

デンマーク人の家族(ビャアンとルイーセ、娘のアウネス)が、旅行先で意気投合したオランダ人家族(パトリックとカリン、息子のアーベル)の家を訪れます。
パトリックたちのおもてなしに違和感を覚えつつも、遠路はるばる来ちゃったので帰れないビャアンたち。正直、中盤くらいまでは、恐怖というよりきまずいコメディのようにして観ていました。

たぶん、ほぼすべての人類は、飲み会、旅行、お泊り会、何にしろ「あかん、おもんない、帰りたい」と思ったことがあることでしょう。そういった経験を思い出させるので、中盤までたいしたことは起こらないけれど、退屈せずにみれるんじゃないかなと思います。

というか、ビャアン家族の態度にもうーんと感じるところがいくつかありました。朝方、突然何も言わずに去ろうとしたり、端々に馬鹿にしたような態度が出たり。極めつけは、ビャアンとルイーセは他人の家でおっぱじめてしまいます。そのさなかに、娘のアウネスが泣いて呼びにきますが、まさかのフィニッシュまで続行。ひと眠りしてから探しに行きます。いや、遅いやろと思いました。

おそらく、これは一種の寓話というか、宗教説話のようなものだと思います。パトリックたちは、ある種の悪魔。ビャアンたちは魅入られ試された。先のシーンは、ラース・フォン・トリアー監督の「アンチ・クライスト」を連想させますし、彼らの末路は「罰」のようです。

ビャアンがとにかく弱々しい。現代的な父親のスケッチなのかもしれません。アーノルド・シュワルツネッガーならロケットランチャーぶち込んであっさり片が付くんでしょうが、ビャアンはほとんど抵抗らしき抵抗をしない。もやもやしつつも、案外暴力に襲われた人間ってこういうものかなとも感じました。後から思えば戦うチャンスはあった。だけど、リスクを天秤にかけているうちにその機を逃してしまう。人生の悲劇とは、チャンスがないことではなく、手が届かなくなってからそれに気づくことじゃないか、と思いました。

ラスト、ビャアンがパトリックに「なぜこんなことをするんだ」と尋ねます。パトリックの返事は「君が差し出した」、です。理不尽で面白いセリフだと思いました。
様々な解釈ができると思います。僕は初見時には、守らないものは悪魔からしてみれば差し出しているようなものなのだ、と感じました。何度か見返すうちに感じ方はまた変わるでしょう。面白い映画でした。


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