星と鳥と風17~星とビンギ
*
もう少し
あともう少しだけ時間を下さい
あの人に、まだ伝えたい事がある
*
プルルル【iPhoneの着信音】
「もしもし、どうした?」
「今大丈夫?」
「今、休憩中だよ。どうしたの?」
「そっか..あのね」
「今、ビンギが召されたわ」
「...」
「穏やかな最後だった」
「…」
「でもやっとビンギが苦しまなくて済む」
「今日のこの日まで待っててくれたのかな...」
(この日は彼女の誕生日だった)
電話越しの彼女は
今にも自分の感情に押しつぶされそうな震えた声で、私に電話をかけてきた。
【やはりそうだったのか】
昨晩、夢で聴こえた
苦しみながらも何者かに懇願する声の主。
【それはビンギだったのだろう】
奇しくも、その日は彼女誕生日でもあり
同時に、ビンギの20歳の誕生日でもあった。
【20年】
その歳月は、2人以外、知る由もないが
当時から2人の絆は
一度見れば、誰でも分かる程に
良いエネルギーに包まれていた。
それに、あんなに苦しみながらも、大事な彼女の誕生日まで祝ってから、空に旅立つ
ビンギの存在は
私にとっても、【宇宙】のように大きい。
私は、夢で聞いたその先の言葉が
ぼんやりして、思い出せないでいた。
仕事が終わるとすぐに
【ビンギと彼女】の元へ駆けつけた。
沢山の花に囲まれたビンギは
穏やかな顔付きをしていたが
同時にその体に
もう彼女の魂が居ない事
もすぐに、実感した。
当たり前だが
それ程にビンギの持っているエネルギーは大きかった。
彼女も、涙で瞼は腫れていたので
昨晩も、泣き腫らしたのだろうが
同時に覚悟を決めた目をしていたのを覚えている。
その後に2人で会話をした。
大事な話だった事は覚えているが、
何を喋ったかあまり覚えていない。
まるで自分じゃないような
そんな感覚だった。
覚えているのは
【私の代わりに叶えられなかった夢を実現させて】
という、強いメッセージと
【ビンギと話す内容の一部は他人にもだが
彼女にすら話さない】
というルールのようなものだった。
【それだけは今でも謎だ】
*なので、今でも2人だけの話が、わたしの胸の中に、大事に閉まっておいてある*
そして、この頃から、【形】という枠を飛び越えた、ビンギとのコンタクトが初まった。
それに、【体】という【縛り】から解放されたビンギは、より若く、強い光のようなものに包まれていた。
その元気というにはまた違う
より高貴なオーラを見に纏った彼女に僕らの
【心配】や【悲しみ】など無用でもあった。
それから私達は彼女の家の庭に
【ビンギの肉体】を埋葬した。
それから数日して、私はいつもの日常にいた。
ふと、仕事の最中に突然
【ビンギの匂い】がした。
最初は気のせいか、彼女の家に行った時の匂いがついていたのだろう。と思っていたのだが
もう一度今度は強い匂いを感じた。
そして
【インターネットを見て】
と
確かにビンギの声が聞こえた。
更に
【準備が出来たから、3人で旅に出よう】
とも、言われた。
私にとって
2つともよく分からないメッセージだった
その日のお昼の休憩中に
自分なりにビンギのメッセージを考えてみたが【インターネット】と、ひとえに言われても
よく分からなかった事もあり
いつも休憩中に観る【YouTube】を開いてみた。
YouTubeを開いた1番上に上がってきたものが
【タロット占い】
だった。
(まさか、これ!?)
いつもなら、目にすら止まらないトピックに戸惑ったが、いつも見ないからこそ気になって見てみた。
しかしそれは
(私にとって、衝撃的な内容だった)
内容的には
*今のパートナーが魂の片割れだという事
*パートナーと旅をする事
*音楽に携わる事をする事
*旅のガイド役が2人いる事
*1人は魔法使いのおじさん
*もう1人は動物
*人生史上最高に生きながらも最高に苦悩がつきまとうだろう事
*自分でいる事を選択し続ける事
*何があってもパートナーを信じる事
*自由でいる事
だった。
まさにさっき、ビンギに【旅に出よう】
と言われたばかりだった。
それに、彼女は、京都での春のツアーに出ていたのだが、そのツアーに同行している
【ギターのM氏】が
(魔法使いのおじさん)
にしっくりきていた。
M氏は私にとって【世界一のギタリスト】だ。
氏が奏でるギターの【一音一音】は私の細胞の一つ一つにまで染み渡り、普段、私が開けてはいけないと守っている心の扉までもを、最も簡単に開けてしまう。
そして、感情の最もディープな部分にまで音が触れてくる。
(それがまるで魔法でも使っているかのようだった)
それに、今まさに、京都での彼らの演奏が
九州にいる、私の胸を打っていた。
そう言う意味でも氏が
(魔法使いのおじさん)
だと
自分の中で腑に落ちた。
(当然、普段ならなんのこっちゃ?だが、何故か私の全細胞が、【そうだ】と訴えかけてきていた。
その時辺りから私はどうも体調が悪く
時折、目眩がして、作業中に倒れる事もあった。それから
【嫌だと感じる事】【やりたくない事】【不快に感じる人、食べ物】etc.を食べたり、接触すると、激しく体が拒絶反応を出すようになった。
わたし自身は嫌な事も、やりたくない仕事も、不快に感じる人付き合いも、言ってみれば
【この世の常】
のようなものだし、それに、いちいちそんな事を気にしていたら、
【この社会】では【生きていけない】と思って、日々を送っていたが、その日の15時頃
【また落雷が頭に落ちてきたような感覚を味わって、仕事の作業中にその場にへたり込んだ】
そして私は
【何故か江戸時代にいた】
つづく