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認知症の母の目に、私はどう映っているのだろう
私は、月に1回、金沢に行って、施設で生活する母との時間を過ごしています。母は、なんとか歩くことは出来ますが、長い距離になると手をつなぐとか、杖を使うなどしています。
一番困っているのは、認知症。
認知症は物忘れが主ですが、その周辺症状が人によって異なり、母の場合はものとられ妄想、独語があります。
会うたび、認知症がすすんでいることを実感し、切なくなっています。
母との会話
母はサービス付き高齢者住宅という施設に入っています。最近は、デイサービスを利用したりヘルパーさんを利用したりしています。
入居して1年と4か月が経ちました。
最初はサービスを使わなくても、自分でお風呂に入ったり、洗濯をしたり、薬を飲んだりできていたのですが、数か月前から薬の管理が出来なくなり、排泄面の不安が出てきたので、ヘルパーさんに入ってもらうようになりました。
そして、時に「ヘルパーさんがものを取っていった」と言ったりします。
私は、母のところに行く時は、事前に施設の方に伝えて、昼食の提供を止めてもらっていますが、本人には伝えていません。(携帯電話が使えなくなってしまったからです)
なので、母のところに行った時は、ドアをノックすると、母が戸を開けてくれるのですが、誰がきたのか?って怪訝そうな顔をします。
「ぷみらです」「お母さんの娘ですよ」
って、自己紹介をして、母の表情が緩んでから部屋に入ります。
「今日は、これから墓参りに行こうと思うから、出かけようね」
「いやー、今日は出かけんわ・・・」
「天気がいいし、墓参り行ってこようよ」
「・・・じゃぁ、行こうか・・・」
こんな感じで無理やり誘ってみます。
最近は、出かけるのを嫌がることが時々あって、少し前にはデイサービスも1週間行かないことがあったようです。
何か、母なりの理由があるんでしょうけれど。
母は、2月が誕生日。現在89歳です。
先月の誕生日当日に母のところに来たのですが、特別な時に行っている近くのホテルのランチの予約が取れなかったので、今月リベンジ。
車の中での母との会話。
「何歳になったんだっけ?」
「もう、わからんわ、60は超えていると思うけどね。」
「私も、今月誕生日でね、55歳になったんよ。お母さん、60やったらおかしくないか?」
「そうやね・・・じゃぁ、70は超えてるんかな?」
「お母さん、私のこと、いつ産んだか覚えとる?」
「もう、わからんわ」
「お母さん、私産んだの30過ぎてからって言ってたよ。だから、もう89歳なんやよ」
「・・・・」
母の実家の墓参りをしている時の会話。
この時、私がオレンジの光沢のある靴を履いていることに気付いたのですが・・・。母に謎のささやきがあったようです。
「私に教えてくれる人がおってね、こんな赤い靴履いてたらダメやって、すぐ履き替えんと命に関わるって教えてくれとるよ」
「そうなん?いつも履いてるくつじゃないんやけど、今日はたまたま履いてきたん。家に帰ったら履き替えるね」
「ならいいけど、こんなところで赤い靴履いてたらダメなんやって」
最近、ホントに独語が多くて、誰かに言われているという内容が、ちょっと不吉な上に、墓場で言うものだから、気味が悪くて😅
特別な日のランチ
母の誕生日を祝うつもりで、ホテルの最上階のレストランでランチを予約しました。
以前、我が家の次男が来た時に、母と夫と4人でご飯を食べたレストラン。
テーブルに通された時に、母が別のテーブルを指さして・・・
「前にあそこでご飯食べたね」と嬉しそうに言うのです。
そうそう、母が指さしたテーブルは、以前4人で食べたテーブルです。
楽しかったことは、ちゃんと覚えているんですね。
私の方がびっくりしてしまいました。
そして今日食べたランチは華弁当。
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ちょっと多くて食べられないかと、心配したけれど、89歳、すべて自分の歯を持つ母は、食に関しては私と変わらず、しっかり完食していました。
お誕生日ということで、お祝いの言葉をかけていただき、飲み物もサービスしていただきました。
そして、不思議なことに、ランチの間は、母の独語は聞かれなかったんです。「ありがとう」「美味しい」「落ち着いていていいね」など、認知症になる前の母のような言葉が多く、私もこころ穏やかに過ごすことが出来ました。
感謝を伝える
今回、認知症の母に、伝えたいことがありました。
いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう
私に、料理をたくさん教えてくれてありがとう
社会人になってもいつもお弁当を作ってくれていたこと、ありがとう
私を育ててくれてありがとう
認知症の母が、会うたび壊れていくような気がして、次は普通の会話が出来なくなっているんじゃないか、そんな気持ちになってしまうのです。
だから、伝えたいこと、ちゃんと言葉で伝えたいって思ったのです。
でもね、母はなんだか(生きることに)辛そうなので、父の墓参りをしている時に、心のなかで父に言うのです。
「そろそろ、お母さん、迎えにきてあげてよ」
でも、母の食べっぷりをみていたら、まだまだのようですね(笑)