
【読書感想文】ものごとの真理は時代を常に超越します ⭐︎山崎豊子「不毛地帯(三)」を読んだ③
例によってネタバレありです🙏が、
読んでみたくなった方の楽しみを奪わぬため、
少し工夫してみました🙏🙏
猛暑が続いております。
沢山の本の中でも、
やめられない止まらないおすすめ本を
ご紹介しております。
エアコンのきいた室内で読書をお考えの方
のお役に立てれば幸いです💕
🍋🍋🍋🍏🍋🍏🍋🍏🍋🍋🍋
あまりにも昇進が早く、
社内で浮くほどだった壱岐に
まぁまぁの足引っ張りがある。
「なんで君はもっと大きな立場にたって壹岐を使おうとせんのや、わしは最初から時価に換算して国家が何千万という金をかけて養成した大本営参謀の作戦力と組織力を、近畿商事の企業戦略に生かすために採用したのや、事実、その通りに使うてる、(中略)壹岐君はちゃんと期待に応えているやないか」
「それはそうですが、商社は、何といっても第一線の営業を尊重しないことには、パイタリティが沸きません、各営業部門生えぬきの、これまで利益を上げてきた者の立場、面子も考えて、今少し、壹君の独走を抑えないことには、不満が大きくなるばかりです」
重ねて里井は、云った。
「里井君、他の者ならともかく、きれ者の君らしくもない言葉やないか、今までの売った買ったより、組織を動かし、人を動かすことの方が、大きな力を発揮する、壹岐君はそうした組織力、作戦を考え、副社長である君は、経済的な観点を厳しくチェックし、社長のわしが最終的な決断をする、このやり方が、近畿商事を最も迅速に巨大化する方法や、そう考えるのが、近畿商事のナンバー・ツーである君の考えでもあるはずや」
この里井副社長は、壱岐への嫉妬がすごい。
それはエスカレートしていく。
まぁでも、自分が里井の立場であれば、
わからなくもない。
頑張って仕事してきた人なら
誰でも抱くだろう感情とも言える気がする。
その心理の描写の巧みさが光る。
壹岐側で読んでいる読者としては
イラつく言動が続くのだが。。
「経営会議が社長の補佐機関だなどと、(中略)この時代の先端を行く商社でそんな時代錯誤が許されると思うのか、そんなことをしたら、社長自身だって、命が幾つあっても足りないよ」
あしらうように里井が云うと、
「ものごとの真理は時代を常に超越します、中国の古典である孫子の兵法、日本の作戦要務合、そしてアメリカ企業の経営戦略、そのいずれをみても、最高の決断を出すものは、その組織のトップで、その決断を誤らせないように補佐するのが、私のいう経営会議です」
はっきりした口調で云うと、それまで里井と壹岐のやり取りを聞いていた大門は(後略)
壱岐の説得力がすごい。
「ものごとの真理は時代を常に超越します」
とは。確かにそうだ。
我欲(自身の出世)に固執している里井より、
大局を見極め社長に淡々と進言できる壹岐の方が、印象がいい。
何より会社の迅速な発展につながるだろう。
が、壹岐にアクシデントがあり、
社内派閥争いどころではなくなる。
ちなみに自分も、読書どころではなくなる。
それほどショッキングだったし、
予想外の出来事だった。
それを契機に壹岐は、
ニューヨークのアメリカ近畿商事の社長として、
駐在する事になる。
大本営作戦参謀からシベリア抑留十一年、そして商社マンとしても十一年を経過した今、ニューヨークにあって、曾て軍事力で闘った相手と、日々厳しい経済戦を繰り越げている。いつまでも安らぐ時を得られない自分の運命(後略)
これ以降も(三)はアップダウンが激しい。
が、そんな中でほっこりさせてくれるのが、
娘の直子の結婚、出産だった。
誰と?
どんな?
乞うご期待!
④へ続く