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【読書感想文】与えられた器なりに生きねばならぬ辛さ⭐︎山崎豊子「不毛地帯(二)」を読んだ②

例によってネタバレありです🙏

ですが今回は、
読んでみたくなった方の楽しみを奪わぬため、
少し工夫してみました🙏🙏

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妻の佳子が心配して色々質問したところ、
珍しくも当たってしまう。

普段の壹岐は冷静沈着、頭脳明晰で
先の先まで読み広範囲に戦略を立て、
その判断に狂いがない。

愛妻家でもあり、
どう切り取ってもまさに大和撫子な佳子に、
サプライズ贈り物したりして。
彼女が出てくる場面だけは
ほんわかしていたんだが。

張り詰めた糸が緩んだ(切れた)場面が
下記引用となる。↓

「じゃあ何を云いたいのだ、いつも貞女面をして、もっともらしいことばかり云うな!不愉快だ!」
壱岐は、大声で怒鳴り出した、自分でも、どうしようもない苛だちが体中に膨れ上った。一昨夜来、事態収拾のために、一切の感情を押し殺し、平静に努めて来た精神のバランスが、一挙に崩れるのを感じた。

「不毛地帯(二)」山崎豊子

入社して間もない嘱託の身分時に、
色々やらなきゃいけなくなり、
それはシークレット業務とまでなってしまう。
だから、

妻には言えない、
愚痴をこぼしたくてもこぼせない。

そこまであっての話さない状況であるため、
それを汲んでその上で察してくれと言っても
厳しい話ではある。

ドラマ化もされてもいるが、
「一切の感情を押し殺し、
 平静に努めて来た精神のバランスが、
 一挙に崩れるのを感じた。」
っていうのは、

演技で表現するとすれば、
急に怒鳴ってしまってどうした?どうした?
と観る側はなるのでは?
小説でしか得られない味わいの一つ。

ちなみに、壹岐を演じた役者の唐沢寿明さん、
わたしは大好きで、好演は容易に想像できる!
楽しみが増えた!

ちなみのちなみに、山崎豊子氏の生前、
唐沢寿明さんが直接お会いした時に、
「白い巨塔」の公開前には、
「だいじょぶ?あーたに財前が演じられる?」
言われたが、公開後にお会いした際には、
「壹岐もあなたがやりなさい」
なんて言って頂いた、と
唐沢寿明さんが言っていた笑


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下記の中略部分(①にも同部分引用)について、
非常にショッキングな出来事があった。

そこは夜寝る前に読んでしまい、
寝付けなくなり後悔した。それほど。

しかも、発端は会社社長の策だったりする、
会社経営とは、そこまでしなきゃいけない?

その怪鳥のような超音速ジェット機のために、(中略)壹岐自身は生涯、拭い去ることの出来ぬ心の傷を負った。
シベリア十一年の抑留生活の辛酸は、軍人としての大義に殉ずる精神を持して耐えて来たが、商社マンとして、ラッキード、グラントの商戦に動いた自分は、一体、何だったのか、如何に憂国の情から発したとはいえ、(中略)たことは、どんな経緯があろうとも許されることではない。

「不毛地帯(二)」山崎豊子

映像化されてもいるが、
「生涯拭い去ることの出来ぬ心の傷を負った」
など、こういった心理描写の味わいは、
小説ならでは!なものの一つ。
いや、これは、すごい心の傷だよ⤵️
凡人の自分なら耐えられない⤵️
と読んでいて思う。

この後もそうなのだが、
壹岐の人脈がすごい。

そのすごい人脈を、折々に使っていくのだが
代償もすごくて。
神(創造主?)与えられた器なりに生きねばならぬ辛さ、
スケールの大きさ、非日常さに、

読んでいる
こっちは、ワクワクする!


                ③へ続く


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