FACT FULNESS(ファクトフルネス)感想
以前に話題になっていたベストセラー本。最近になって読み、おもしろかったので感想を書いてみる。
著者は極貧地域での医療に従事したことのある医者。公衆衛生について学んだ後、世の中の知識不足を憂い、その解消のための取り組みに息子とその妻とともに従事するようになる。
本の内容はまずいくつかの質問から始まる。例えば以下のようなもの。
このような質問が13個続く。そしてこの本の主題は、世界中の人々の正答率がチンパンジー以下の結果になったという事実である。
チンパンジーはあてずっぽうに各質問に答えるため、その正答率は約33%になるが、世界中の人々の正答率はそれ以下になったということである。
これらの質問の答えは本を手に取って確認するべきであり、出版から少し時間が経っていてデータが古いのであえて記載はしないが、著者らが作成した以下のサイトで最新の情報を確認できる。
私がこれらの質問に答えた場合でも、多くの人と変わらず散々な正答率になったと思う。こういった質問を投げかけるからにはネガティブな答えなのだろうというようなバイアスがあるのもわかるが、重要なのはそこではない。
世界中の人々がどんな暮らしをしているのか。どれほどの人々が犯罪に怯え、電気も使えず、産まれたばかりの子供がすぐに死んでしまう世界に生きているのか、それは私たち人類にとって非常に重要な情報のはずなのに、ろくに気にせず生きているという事実。
そして正確にアップデートされない情報は、子供の頃に学校で習った情報や、テレビなどのメディアから入ってくる「ドラマチックな」情報を拠り所にした、古くて「平均的な事実に基づかない」ものとなっている。
学校で勉強し、なんとなくテレビを見ているだけでは知識はアップデートされないということである。子供の頃に習った、「先進国」「発展途上国」という分類と、テレビで放送される「アフリカには満足に食べ物も食べられない、治療も受けられない子供がいる」という情報だけをなんとなく受け取り、悲観的な世界を想像してしまう。
当たり前だが10年も20年も経てば世の中は大きく変わっている。パソコンの性能は飛躍的に上がっているし、20年前にスマホは存在していない。
世界は少しずつでも進歩している。大谷翔平や藤井聡太のようなスターだけが世界をつくっているのではなく、現実的には多くの「普通の人」の努力が少しずつ世界を変えている。
ニュースになるほどの大きな変化ではなかったとしても、数十年の間の進歩は称賛されるべきレベルにまで達する。
知識をアップデートし、世界に対する見方を変えるために、一度は目を通すべき本だと思う。
p.s. 著者らの作成した以下のサイトでは世界の人々の暮らしぶりを見ることができる。自身の思う「世界」の解像度を上げるうえで有用なサイトだと思う。
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