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カスタネット・メンタル

体と脳味噌の移り変わりが、はっきりとわかる日々を過ごしました。

毎度おなじみのちょっと鬱なんですけどがやってきたので、しばらく小説を休んで、体調もサイアクだったのでゴロゴロ転がって過ごしていたのです。

最初の数日はまともに眠れないし、ひたすら猫のことを思い出して涙が出るし、理由はなくても涙が出るし、壁に開いた画鋲の穴にビックリするし、なんか無性に胃が気持ち悪かったのです。

夜になると、自分の体のなかの一回り小さい自分のなかのもう一回り小さい自分が、わなわなとし出して、なんつうか、カスタネットしてますね、みたいな。

カタカタカタカタ。眠れない。

仕方ないので、秋の虫の声を聞きながらものすごい曲がらない前屈とかして夜明けを待ったり、この世で一番好きな栗を買ってきて薄皮がぶちぎれるくらいスプーンでほじって食べたりしてました。

気がつくと、

カタカタカタカタが、カタカタ、くらいになって、かたかた…って平仮名になって、夜中の二時には寝付いていて、朝までぶっ通しで眠ったりして、ようやく今日、ラジオ体操ができたという。塩梅で。

自分の体と脳味噌がベルトコンベアーに乗せられて、そこに時間とか睡眠とか栗とか様々な助太刀が加えられ、調整されてまあまあなところまで戻っていく具合がはっきりと分かったのは、すごく興味深かった。
悪くなる過程と、良くなる過程、このふたつを人は(じゃなくて、おめーだろと言う)忘れてしまうのだ。
そして、栗に会えるチャンスは少ないのだ。

とにかく眠れないようになる前に寝ておこうね、ってことに尽きると思った日々でした。



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