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【エッセイ】恋文が結ぶ恋

手紙には二人を強く結びつける力のようなものがある。そんな気がする。何かのコマーシャルで言っていたが、手紙を書く時は相手のことしか考えていないからかもしれない。手紙を書いている時間が相手と深く深く結びつけていくのかもしれない。特に恋文は。
こんなことを思ったのは『恋文』という本を思い出したからだ。

『恋文』
著者:荒木とよひさ・俵万智
主婦と生活社
2003年5月6日第1刷

だいぶ前に読んだのだが、今日久しぶりに再読した。やはり以前読んだ時と同じ感想になった。
ある男女の往復書簡である。女の家の庭にある桂の木をポスト代わりにした手紙のやり取りは、季節の深まりとともに二人のつながりも深めていく気がした。この恋はいわゆる道ならぬ恋である。男には妻子がいる。女もそのことを承知している。男は悩み、女は寄り添い、二人のつながりは更に深くなっていく。手紙はそんなつながりを媒介しているように思えた。
この往復書簡には面白いところがある。男が送った手紙に女が答える、というのもあるが、男も女も好きなことを書いている時もある。相手の問いに答えていない時も。でもやっぱりつながっているのだ。不思議なやり取りだ。何だか恋文が二人の恋を紡いでいるように見えた。
今後この二人はどうなるのだろう。男は妻子を捨てて女の所へ行くのだろうか。それとも別れが来るのか。もしかしたらこのままの関係のまま歳月を重ねていく、という未来もあるかもしれない。そしてその時は恋文が二人をしっかりとつなぎ、結んでいくのだろう。


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小学生以来の友とも手紙のやり取りをしていました。今ではメールやLineになりましたが、きっとあの頃の手紙のやり取りが私たちをつないでくれているのだと思います。

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