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2024年2月読了本・ポスト備忘録

※注意※

 この記事は1月に私がX(旧Twitter)に投稿した読了ポストに加筆・修正を加えたものとなります。ご了承ください。

はじめに

 1年で最も短い月。ですが今月調子が良かったのか今まで以上に読んでました。感想で文字数が一杯なので前置きはこの辺りで。


『馬鹿一』

著者:武者小路 実篤
出版社・レーベル:角川文庫
読了ポスト日:2月2日

 この本を一言で表すなら「不可思議」だろうか? 短編集に見せかけてモチーフや登場人物の一貫性から1つの筋としてまとめられた長編のようにも感じられる。強いて当てはめるならば連作短編集だろうか? 絵画や書道といった文章とはまた違う"かく"に焦点が当たっているのも印象深い。これはあくまで主観なのだが、表面上は滑稽に見えるけれど誠実さが見え隠れしているようにも感じられた。

『富嶽百景グラフィアトル』

著者:瀬戸 みねこ
イラスト:村 カルキ
出版社・レーベル:角川ビーンズ文庫
読了ポスト日:2月2日

 メインとなるバディの関係性は勿論、周囲の人間の気持ちは同じだけど思考プロセスの違いとか、とにかく人間関係が想像以上に濃厚で凄かった。一言で言うならばエモい。日本画をベースにしたアクションもとても面白く学校の美術で学んだっきりの自分でも想像しやすくていつも以上にのめり込めた。もっといろんな人に知って欲しいしメディアミックスも出て欲しいし当たり前だけど続編も欲しい。去年暮れ辺りから目をつけてたけどまさかここまで自分好みドンピシャの作品だったとは思わなかった。

 興味を持った方、こちらもどうぞ!

『魔女推理 きっといつか、恋のように思い出す』

著者:三田 誠
イラスト:カオミン
出版社・レーベル:新潮文庫nex
読了ポスト日:2月3日

 今回は他の学校に潜入ですって⁈ 2つの事件は似ているところはいくつかあれど最後の後味は全然違うのだからまあびっくり。なんならとんでもない状況に練っておられるし……あの人何者なんです? シリーズ全体としては前回の世界観をささやかながら補強、展開していくような感触だった。そのささやかが不穏な気もしなくもないけど。前回から薄々分かっているはずなのに。ラストのシーンを思うと幸せになって欲しいけどはてさてどう転がるのだろうか……。

こちらは1巻刊行時点での紹介文になります。

『永青文庫の古文書』

編者:公益財団法人永青文庫・熊本大学永青文庫研究センター
出版社・レーベル:吉川弘文館
読了ポスト日:2月5日

 内容は歴史の授業でやったような内容の延長線上のようなものから、誰かに話したくなるようなトリビアまで。時代は室町時代から明治維新までと縦にも横にも幅広かった。1冊の内容とは思えない。個人的に1番面白かったのは葡萄酒関連の話。当時の宗教の視点だと周囲の目がつくけれどそれでも求められる理由もあったりで、意外性がありつつも持ってる知識と関連付けやすく理解を深めやすかった。

『嘘つきリップは恋で崩れる』

著者:織島 かのこ
イラスト:ただの ゆきこ
出版社・レーベル:GA文庫
読了ポスト日:2月7日

 恋愛の、恋愛の糖度が高い! 特に恋心が明確に芽生えてくる辺りからがヤバい。恋してることは自覚してるけどそこからあと1歩踏み出すのが……ってところがもどかしいったらありゃしない。恋愛ものでここまで興奮したの初めてかもしれない。大学デビューもテーマと嚙み合っていた。周囲の人物関係も濃厚だったから大学の青春ものとしても楽しめた。お隣さんとしての距離感が最高。

『スパイ教室 06 《百鬼》のジビア』

著者:竹町
イラスト:トマリ
出版社・レーベル:ファンタジア文庫
読了ポスト日:2月7日

 絶望の中でも「それでも……!」と熱望していたものが極上の形でお出しされた。前回ラストのあの件もひとまずスッキリしたし、何より怒涛の伏線回収は痺れた。3章最後~4章前半で回収されたアレに最初から気が付いた人は天才名乗っていいと思う。そして最後の最後でもう1度地獄に落とされる。そんな予感はしてたけどさぁ……やっぱ現実になると辛いや。あとネタバレスレスレの範囲で語るとするならこの作品における絵って地獄の象徴なんですか?

『スパイ教室  07 《氷刃》のモニカ』

著者:竹町
イラスト:トマリ
出版社・レーベル:ファンタジア文庫
読了ポスト日:2月8日

これは紛れもなく、燃え滾る"愛"の物語だった。数巻前から闇の世界に生きることのシビアさがより一層増してきた本シリーズの中でも屈指の暗い回だと思われる。だが、厳しいからこそ映えるというものを体感した。長い間燻っていた伏線にも回答が提示されたりとシリーズを追いかけてる側としても嬉しい要素が多かった。というか皆すっごい成長したなぁ。将来どうなっちゃうんだ?

『スパイ教室 08 《草原》のサラ』

著者:竹町
イラスト:トマリ
出版社・レーベル:ファンタジア文庫
読了ポスト日:2月9日

 これは良き因縁バトル。今回は長い間出番が多かった方にも視点が当たったりと嬉しくなるポイントが多かった。最後のキメの台詞もセンス抜群で大興奮。いや~本当に長い戦いだった。無事に一山超えられて私も内心ホッとしてる。ついに各メンバーメイン回が一周したということもあって色々なものの総まとめ回の様相だけどここが折り返し地点ってマジすか? まーまだ謎な部分めちゃんこあるしあの人も何思ってたんだかサッパリだし。騙し要素も勿論の事ストーリー骨子も二十分に面白いから今後どうなっていくのか楽しみ。

『茶の本』

著者:岡倉 覚三
翻訳:村岡 博 
出版社・レーベル:岩波文庫
読了ポスト日:2月10日

 ページ数が少なく本っぽい見た目をしていない本作(100ページほど)だが内容の密度は段違い。ただ茶の湯の話をするだけではなく、時に茶、時に茶室といった具合に様々な切り口から紐解いている。しかもテンポ感が良い。全体を振り返ると日常に寄りそう芸術の話という側面も出ているような気がして、在りし日の茶の湯というのはそういう立ち位置だったのだぁとと再認識した。

『BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 〈上〉』

著者:山本 弘
イラスト:pomodorosa
出版社・レーベル:創元SF文庫
読了ポスト日:2月11日

 ヒロインのSF語りだけでももうすんごい面白かった。あらすじもセットで語ってくれるから初心者でもおいてぼりにならない。ビブリオバトルの方も本の選び方や語りのスタイルで個性が出ていて1セット丸々聞いても全く飽きが来ない。出版自体かなり古いはずなのに聞いたことあるタイトルもいくつか出てきて、本というのはこうも容易に時代の壁を越えるものなのかと実感した。新しく知ったものもいくつか気になる作品があったし、今度本屋さんに行ったときに確認してみよう。

『BISビブリオバトル部1 翼を持つ少女 〈下〉』

著者:山本 弘
イラスト:pomodorosa
出版社・レーベル:創元SF文庫
読了ポスト日:2月12日

 まさかの予想していたよりも300倍ぐらいシリアスな内容が来てびっくりした。確かにと頷きたくなる点であると同時にここまで切り込んでしまっていいのかと。でもそこも踏まえながら誰かに本を薦める楽しさをしっかりと書ききっていて読後感はとても良かった。そしてタイトル回収がこれまた秀逸。前巻から匂わせるワードはあったけどそういう風に繋げてきたか……。

★『文豪ストレイドッグス 公式ガイドブック 権化録』

出版社・レーベル:KADOKAWA
読了日:2月13日

 4期・5期の計2クール分を1冊で振り返れる優れもの。アニメのカットもふんだんに掲載されているため、1年前に放送されていた部分でも克明に思い出が蘇る。終盤にまとめられたインタビュー集はどれも熱量が濃い。製作陣からも愛されてるってとてつもなく凄いことなのでは? と思った。それにしても未了めっちゃ押すやん? どうしたん? そこまでするとどうしても続きやりたがってるようにしか見えないんだけど……。

 詳細な感想もございます。【ネタバレ注意!】

『どうせ、この夏は終わる』

著者:野宮 有
イラスト:びねつ
出版社・レーベル:電撃文庫
読了ポスト日:2月13日

 数年前に現実で漠然と抱いたような世界の終末を少し違う形で出力されたような、そんな雰囲気を感じた1作だった。身の回りの常識は変わってしまったけど、それでも青春は続いていてその摩擦独特。暗いけど輝かしい。ドキュメンタリーというジャンルの魅力は人間の心の可能性の高さなのかなぁと感じた。

『僕らは『読み』を間違える』

著者:水鏡月 聖
イラスト:ぽりごん。
出版社・レーベル:角川スニーカー文庫
読了ポスト日:2月14日

 想像以上に文学がネタが多くてびっくりした。作品ネタも現実ネタもバランスよくあった。文学と青春、方向性がバラバラなようだけど、本人が正解を言うまでは解釈し放題な疑問という共通項があったのは目から鱗。また予想の斜め上の伏線回収には何度も驚かされた。あとこれは私の捻くれた『読み』なのだが、文章の言い回し等に昔の文学らしさを勝手に見出してた。

『僕らは『読み』を間違える 2』

著者:水鏡月 聖
イラスト:ぽりごん。
出版社・レーベル:角川スニーカー文庫
読了ポスト日:2月16日

 今回はより日常の謎要素が出てきて1巻との地続きのコンセプトでありながらもまた違った雰囲気があった。後半からの文化祭ネタはワクワクが止まらない。一筋縄ではいかない人ばかりでどう進んでいくのかの駆け引きは読めそうで読めなかった。あと最後の○○(ネタバレなので伏せてます)に関する種明かしとその顛末は虚を突かれた。

『ルール・ブルー 異形の祓い屋と魔を喰う殺し屋』

著者:根占 桐守
イラスト:秋月 壱葉
出版社・レーベル:角川ビーンズ文庫
読了ポスト日:2月17日

 また1人1人のキャラが濃い目の作品だ……。アッサリ目のようでいて癖が強い。敵のようなポジションである異形側も端的でありながらも詳細に書かれているのが印象的。決して二元論では解決できない議題に対してそれぞれをどのような結論づけをしていくのかが今後気になる所。人間側だけでも一筋縄ではいきそうになさそうだから猶更。

『サブカルチャー妖精学』

著者:高畑 吉男
出版社・レーベル:星海社新書
読了ポスト日:2月18日

 世間一般に思い浮かべられるような妖精の伝承からそれも妖精にカウントできるのか! というものまで、多種多様なエピソードが詰まっていて知ってる作品を取っ掛かりにして幅広い雑学が身に着けられる1冊だった。伝承そのものの妖精だけではなく日本人が妖精をどのように感じているのかという一際深いところまで話を運んで最後にはタイトルに相応しい締めだったのではないかなと感じた。

『わたしの幸せな結婚 五』

著者:顎木 あくみ
イラスト:月岡 月穂
出版社・レーベル:富士見L文庫
読了ポスト日:2月19日

 プラスの意味でもマイナスの意味でも今まで読んできた世界というものの狭さが身に染みた1冊だった。社会って恐ろしい……。今までの色んな人が大集合して楽しかったし、みんな技術だけではく、精神面でも頼もしかった。それにしても敵の得体の知れなさがえげつない。この人どうやって攻略すれば良いんだ⁈

『わたしの幸せな結婚 六』

著者:顎木 あくみ
イラスト:月岡 月穂
出版社・レーベル:富士見L文庫
読了ポスト日:2月20日

 これでやっと幸せになれるんだな……。とにかくおめでたい気持ちで一杯になった。力だけではなくて精神面での成長が見て取れる描写がとても多くて大満足。それでいて基礎となる骨子が揺らいでいないのがまたいい。この絶望どん底スタート回であろうと2人のイチャイチャパートがご用意、しかも斬新な切り口だったのが印象的。しかもそれを通じて次のステップに昇華していこうとする流れがまた良いんだよなぁ……。

『夏目漱石ファンタジア』

著者:零余子
イラスト:森倉 円
出版社・レーベル:ファンタジア文庫
読了ポスト日:2月20日

 まさしく"大賞"の名にふさわしい怪作だった。トンデモ設定のオンパレードに見せかけての小ネタの拾いっぷり(私が知らなかったネタも多かった)だけに飽き足らず創作関係の課題として立ちはだかるであろう問題を取り上げつつも、エンタメとしての盛り上がりも見せる。純粋に続きも読みたいし、以前この作者様が他の新人賞に投稿したという別の作品も読んでみたいと思った。

 気になる方はこちらもどうぞ。

『獄門撫子此処ニ有リ 2 赤き太陽の神去団地』

著者:伏見 七尾
イラスト:おしおしお
出版社・レーベル:ガガガ文庫
読了ポスト日:2月21日

 今回は前回とは打って変わって1つの大きな事件に様々な要素が絡み合っていく闇鍋の如きスタイル。キーワードを抽出するとカオスだけどもこれを1つの物語に詰め込んで話を動かすのにセンスを感じた。普通に凄いよこれ。何なら予想外の方面からも引っ張ってくるわけなもんでこっちも脳内リアクションがとんでもないことに……。後半の2人の立ち位置もあってか1巻と対になる1冊だった。

 よろしければこちらの方も……。

★『リピート・ヴァイス1 ~悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました~』

著者:黒川 陽継
イラスト:釧路 くき
出版社・レーベル:HJ文庫
読了ポスト日:2月24日

 所謂原作みらい改変系ストーリー。だけど原作のストーリーからしてスケールが大きい。まだ1巻目で時系列も本編前だというのに出てくる敵のスケールがでかい。でも大きく改変していくからこそ見落としている部分があったりするのもまた一興。ラストとんでもないことになりそう。闇属性バトルも滅茶苦茶カッコよかった。あと1巻終盤のあのパートとかすごく気になって仕方がない。

 詳しい話はコチラでも行っております。

★『ダンジョン配信者を救って大バズリした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった1』

著者:昼行燈
イラスト:福きつね
出版社・レーベル:HJ文庫
読了ポスト日:2月25日

 主人公が思った以上にガチのプロだった! 文体も軽くサクサク読めて展開も予想がつきにくく、気になって仕方がないからページを捲る手が止まらなかった。というかいつも予想の斜め上を行くもんだから何度声を出して笑ったことやら……。善意100%だからこそ心の底から楽しめるというもの。配信のコメント欄や数ページに渡って繰り広げられる掲示板パートの影響もあって自分もリスナーになった気分だった。

 詳細なレビューはこちら!

『わたしの幸せな結婚 七』

著者:顎木 あくみ
イラスト:月岡 月穂
出版社・レーベル:富士見L文庫
読了ポスト日:2月26日

 めでたい。本ッッ当におめでたい。今までの巻で乗り越えたことをじっくりと嚙み締められるだけではなくて、両者にとっていかに幸せなアンサーだったのかがじっくりと味わえる1冊。笑いどころもありつつも感動ポイントがたくさんあった。今まで出てきたキャラが殆ど集合というご褒美回だったことも忘れてはいけない。意外なあの人が再登場したときの興奮は忘れられない。

『竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る』

著者:fudaraku
イラスト:はむメロン
出版社・レーベル:メディアワークス文庫
読了ポスト日:2月29日

 儚くも美しい、きらびやかなお話でした。これは大賞受賞もネタバレ緘口令が発令されるのも納得。詳しいことは控えるけどとにかくヤバい。途中引っかかったり混乱したりしても止まらずに読み進めて欲しい。散りばめられた謎が一気に明かされたときのスッキリ感もあったから、ミステリが好きな方は騙されたと思って手に取って欲しい。最初はこれ電撃じゃないんだ……と思ってたけど最後まで読むとこれがMWで出た理由にも納得がいったし、あとがきも読み切った後、次のページを繰った時に出てくる応募時のタイトルを見て色々と込み上げてくるものがあった。

さいごに

 今月何でこんなに読めたんだろう? 上旬とか忙しかったはずなのに。自分と愛情が良い文体のラノベが連続したからかな? 偶然の重なりだったとしても3月以降もこのペースをなるべく保てるようにしていきたい。

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