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それでも、大きな愛情で見守ってくれている存在がある。『まほうをかけられた舌』 

『まほうをかけられた舌』 作:安房直子

子どもの頃、大好きで何度もなんども繰り返し読んだ本。

腕の良い料理人だった父を亡くし、評判のレストランを継がなくてはいけなくなった味オンチの少年、洋吉。
なまけものでまずい料理しか出せず、従業員もお客さんも去ってしまった洋吉の前に“あじの小人“が現れ、「お父さんの料理のストックが地下室にあるから、一生懸命勉強して再現できるように」と洋吉の舌に魔法をかける。

その後「味」がわかるようになった洋吉は小人との約束を無視して、他店のコピペをして店を繁盛させていく。

そんな生活をしながら10年が経った洋吉の店に、現れた見知らぬ男が「自分の店の方が美味しい」と言い去って行く。

約束を守らず、恩も忘れ去り、年月の経った洋吉がたどり着いた場所は、、。

安房さんの物語には、手に職のある人がよく登場する。
そのせいかどうか私は、小さな頃から働く事とは、手に職をつける事だと思っていたところがある。

生来不器用な私は結局手に職はつけられず、巡り巡って今は相談業務の端くれをしているが、今でも職人堅気な人、センスのある人に憧れる。

なまけもので不器用でめんどくさがりの私は、洋吉そのものだった。

仕事、挫折、そして本当に大切なもの、ものごとの基本。
人の愚かさ、愛情と赦し。
ファンタジーの中に、人生に大切な事をギュッと詰めて渡された気がする。

表題のほか、「青い花」「コロッケが五十二」「ライラック通りのぼうし屋」「海からのおくりもの」
心の棘が抜けていくような童話集。

私が持っていた本は、椅子に三角座りをしている洋吉が小人に魔法をかけてもらっているシーンが表紙になっているもの。収録作品が変わっている可能性があります。ご容赦ください。


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