人間失格 感想
人間失格を読んでみました。せっかく読んだので感想をかいてみたいと考えていたのですが、上手くまとまらず公開するか迷っていました(笑)。ですが、今回の #熟成下書き のキャンペーンを機に公開します!
◎あらすじ
主人公の「大庭葉蔵」は、お金持ちの家庭に生まれ、それなりに裕福な生活を歩むことができていたのですが、友人の堀木正雄に影響され、女遊びと酒に溺れていきます。やがて学業にも精を出さなくなり、転落人生を歩んでいきます。
◎感想
最初の方で葉蔵が、葉蔵自身への印象として「自分は子供らしくない子供だ」や、「お父さんは自分におもちゃをあげたいのだから、自分はおもちゃが欲しいふりをしないといけない」や、「自分は演技をして生きている」というようなセリフを言っていた。葉蔵自身がそのように自分を偽って生きていたために、家族や他人に対して「何を考えているのかがよくわからないから人間が怖い」という感情を抱いてしまっていた。
この部分に、私は強く共感した。私も、どこか人間に対して違和感を感じてしまっていた時期や、本心を偽り他人に嫌われないように演技をして生きてきた時期があった。そのため冒頭での葉蔵の印象は、少し賢くて周りをよく見る性格、そして自我を隠す冷静さがあるために、異性から魅力的に見える色気があるのだろうなと分析していた。しかし読み進めていくと私の葉蔵に対する印象が変わった。
葉蔵の友達である堀木は、女遊びと酒が好きな、いわゆる遊び人の男だった。葉蔵と堀木は絶対に気が合わないだろうと思ったが、2人はよく行動を共にするようになった。人生の物足りなさをどこかで感じていたのか、次第に葉蔵も女遊びと酒に依存するようになっていった。ここらへんから、私は葉蔵と自分を重ねることができなくなり、若干軽蔑し心の距離を保ちながら読み進めた。
結局葉蔵は、せっかくお金持ちの家に生まれ、実家から多額の援助を受けて良い生活を送っていたのにも関わらず、生活が次第に堕落していってしまった。そのことが親の元まで伝わってしまい親に援助を打ち切られてしまってからは、生活に困るようになった。このような状況になってからは、持ち前の色気と魅力を駆使し、女性の懐に入り込み次々に女性に助けを求める生活を送るようになっていった。
物語にはまだ先があるが、最後の方に葉蔵がいっていたセリフが強く心に残った。『自分の不幸は、拒否の能力の無い者の不幸でした。』このセリフは、自分の人生に照らし合わせて考えたときにも思い当たる節があった。
客観的に葉蔵の人生を振り返ると、もったいない人生の使い方をしているようにも思えるが、実際には人間は真っ当な人生を歩む方が難しいのだろうと思う。皆それぞれ誘惑や恐怖があり、意識的か無意識的かはわからないが周りに流されて生きている。自分の信念に照らし合わせ、嫌なことに対して明確に拒否をするのは難しいことだ。そう考えたときに、葉蔵もちゃんと人間であり、私たちと同じように葛藤を抱えて生きていたのだと理解することができた。
葉蔵の本質は、優しくて穏やかな部分だったのかもしれない。でも、自分の意見を主張できず他者に迎合する生き方が葉蔵の人生を思わぬ方向に引っ張ってしまったのかもしれない。
「人間失格」を読み、自分の意見を主張することの大切さ、主張しないことには自分の本来の姿を周りの人に示すことはできないということを学んだ。人生について独特な視点から考えさせられる内容だと思った。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!