「自律と責任」について考えてみよう
中学校 内容項目(1)「自主、自律、自由と責任」
「羽の重さ」を使って考えてみる。
上辺:いやこええよ! 何だよこれホラーじゃねえか!
小路:あー。まあそうね。怖いよね。このどうしようもない感じ……。
上辺:ふつうにトラウマだろこれ……。え? どこにも救いがなくない? ひたすらに苦痛じゃない? この子どもたちの将来がいろんな意味で心配なんだけど……。
小路:ぼくも幼い頃の想い出がよみがえった……。ザリガニたくさん捕ってきて、水槽用意するまでの間バケツに入れて玄関先に置いといたら近所の猫が……。ザリキチやザリ子がバラバラになってもうどれがどれやら……。
上辺:ぎゃああ! ふっざけんなお前! おれはなぁ! 物の怪だけどそういう話ダメなんだよ! 眠れなくなんだろ! お前の耳元で一晩中エアロスミスエンドレス再生すんぞコラぁあ!
小路:(笑)
上辺:ウラぁ……! 小路がおれにいじわるするよぅ。小路のくせに。小路のくせに!
ウラ:…………。
上辺:(無視……!)
ウラ:結果のおぞましさが際立っておるから見えにくいが……。これは要するに、「あまり考えずに何かをやらかすことの怖さ」を言っておるのかのう……?
小路:あー。「隠れて飼う」ってあたりがそうかもしれないね。
ウラ:うむ。もう少し冷静に考えてみれば、この子らもわかったように思うのじゃ。治るはずがない。飼えるはずなどないと……。
小路:だよね……。きっと「学校で隠れて鳩を飼う」って行為にテンション上がっちゃったんだろね。
上辺:あとよー、これ、友達三人で決めちまったせいで引っこみつかなくなってねえか?
小路:え? どういうこと?
上辺:「手におえないから大人にパスしよう」とか、「叱られるの覚悟で先生に言おう」とかそういう解決策が口に出せなくなってんだろコレ。なんかそういうのが裏切りみたいな空気になっててよ。
小路:あー。それも何となくわかるなぁ……。友達との約束って無駄に拘束力強いんだよね。無下にしちゃうと後々の人間関係に響きそうで……。この話はさぁ、きっと、そういう表面的な理由だけで「よく考えもしないで適当に行動するとひどい目にあうよ」って教訓なんじゃないかな?
上辺:なんかそれ薄くね? 薄っぺらくね?
小路:(……ショック)
ウラ:しかし……、この三人は誰も責任を取ろうとせなんだな。
小路:え? 責任? 何の? 責任って言ったって、ガラス割ったわけでもなければ、鳩をケガさせたのもこの子たちじゃないんだよ? 言ってみれば偶然巻き込まれただけじゃない?
ウラ:では、「飼う」と決めた判断に責任は伴わぬのか?
小路:うーん。まあ、その判断に浅はかなところはあったと思うけど、だからってこの子たちに責任を求めるのは酷じゃない? この子たちもある意味被害者みたいなものだと思うんだけど……。
ウラ:…………。ウラは、この子どもたちがどうすれば心を病まずに済むか考えておった。
小路:え……?
ウラ:この子らはきっと、「手におえなくなり鳩を殺した」という罪の意識にこの先ずっと苦しむはずじゃ。そのことの方が酷じゃとウラは思う。その心を軽くしてやりたい。
小路:でも……、どうすれば? もう鳩は死んじゃったんだ。生き返らないんだよ。
ウラ:ウラは……、悔いるべきは悔いて、「二度と同じ過ちはせぬ」と自らの心に誓うのが、この子らの負うべき責任なのではないかと思う。
小路:心に誓うのが責任……?
ウラ:判断を誤るなど茶飯事じゃろう? 人には未来が見えぬのだし、それはしかたのないことじゃ。じゃが、心に残った過ちは人の心を暗くする。ウラもそうじゃったからその辛さは身に染みてわかる。心が暗いままでは楽しいことも素直に楽しめぬ。飯も不味うなる。
小路:…………。
ウラ:「責任」は、「自分自身を納得させるため」に必要なのではないか? 「責任を取った」「成すべきことを成した」と思うことができれば心も軽くなろう。「責任を取る」というのは、謝罪したり、金銭で補ったりすることだけではないように思うのじゃ……。
まとめ
ウラ:「成すべきことを成す」のが責任ではないのかのう……?
小路:この子たちのしたことはもう取り返しがつかないけど、だからこそ「贖罪」って言葉があるのかもしれないね。
上辺:おれを脅かした罪はしっかり贖罪させるからな小路……。
【参考】「中学校学習指導要領解説 特別の教科道徳編」より
(1)自主,自律,自由と責任
自律の精神を重んじ,自主的に考え,判断し,誠実に実行してその結果に責任をもつこと。
(小学校)[善悪の判断,自律,自由と責任]
〔第1学年及び第2学年〕 よいことと悪いこととの区別をし,よいと思うことを進んで行うこと。
〔第3学年及び第4学年〕 正しいと判断したことは,自信をもって行うこと。
〔第5学年及び第6学年〕 自由を大切にし,自律的に判断し,責任のある行動をすること。
(小学校)[正直,誠実]
〔第1学年及び第2学年〕 うそをついたりごまかしをしたりしないで,素直に伸び伸びと生活すること。
〔第3学年及び第4学年〕 過ちは素直に改め,正直に明るい心で生活すること。
〔第5学年及び第6学年〕 誠実に,明るい心で生活すること。