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後悔その②


嫌だった。

何でも経験が大事だなんて言うけれど経験しなくて良いものだってあると思う。
食べることが苦手になって、嫌だなと思う瞬間はたくさんたくさんあった。

感情がコントロールできなくてすぐに怒りっぽくなって。でも理性が少しだけ残ってて。人や物には当たれないから自分を少し傷つけて落ち着きを取り戻す…そんな自分が嫌だった。

口にするもの全てのカロリーを気にして計算して。許せるものだけ口にする。1日の総摂取カロリーに囚われて、ずっと今日食べるものを考える。あと何が食べられるのか。今日はずっともう食べられないのか。そんなことばかり考える自分が嫌だった。

友達の誘いにのれなくなった。だってご飯食べるんだもん。それを食べたら1日は絶食しなきゃ。カロリー計算しなきゃ。
友達の優先順位すら下げてしまう自分が嫌だった。

巷に溢れている情報にすがって。病気の患者さんの一日の食事をみて自分より多ければ安心して。少なければ食事を減らす。たくさん調べていらない知識が増えて。
人と比べて肯定感を上げることでしか自分を認められない自分が嫌だった。

家族に会いたくなくて。御飯の時間を一緒に過ごしたくなくて。だって「食べろ」って言うでしょ?今ならわかる。心配してくれてたこと。でも当時はね。「なんで私こんなに頑張って痩せようとしてるのに太らせようとするの?敵だ。嫌だ。」って思ってたんだよ。
バイト早朝から入れて。学校終わりから夜もバイト。空き時間は家に帰らず車の中で。
あんなに大好きだった家族を避けて避けて生活する自分が嫌だった。

髪が千切れるようになった。爪が剥がれるようになったし脆くなった。めまいが止まらなくなった。倒れてしまった。夜になると動けなくなった。眠れなくなった。歯がぐらついてきた。顔色が悪くなった。
…でも体重は減っていった。
骨の形がわかるようになった。肋や肋骨が浮き出た。
…快感だった。やめられなかった。
そんな状態に満足する自分が嫌だった。

嫌だったことを挙げるなら。
きりはない。

一番嫌だった。

その中でも。
家族に見せられない部分が多くなったのが一番つらくて嫌だった。

食べてる姿。食べているもの。
取り乱す姿。ふらつく姿。

全部全部見てほしくなかった。
絶望されたくなかった。
心配してほしくなかった。
そして。邪魔してほしくなかった。

…いちばん大切な家族に見せられない私なんて。
絶対あるべき姿じゃないのに。

今だから気づけた。

でも当時は。
この異常にも気付けなかった。
自分の中では真っ当だった。
痩せる目標に向かって努力できる自分に浸ってすらもいた。
…他の何を失おうとも。

誰とでも、いつでも、何でも、美味しく食べられる今だから言える。自分に言ってあげたい。

体型なんかより。
大事なことはいっぱいある。

猪突猛進。
一生懸命。
努力家。
素晴らしいことだけど。
それを使うのはこの分野じゃない。

考えてみて。人間として当然なことをここまで我慢できるんだから。どんな困難だって立ち向かえる精神力があるってことでしょ?

活かせるところはたくさんある。
人の笑顔。自分の笑顔のために。使うほうがよっぽど良いんじゃない?

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