韓国映画『バレリーナ』にみるロマンシス
とにかくなんでもいいから悪い奴が容赦なくズタボコになるのを見るのはエナジードリンクよりキく。
※当然のようにネタバレしています。
恨の国・韓国。復讐ものはやはり見応えがあります。
レビューを読んでみると、
・映像はいいけどストーリーは退屈
・また復讐か
・内容がシンプルすぎてものたりない
・普通以外ない
・復讐するだけのストーリー
・アクションも音楽もかっこいい
・親友とのエピソードが弱い
・スカッとするし気軽にみれる
あ~~ねなるほどなるほどウンウンそっかそっかたしかにそういう見方もあるかもねそうだよねわかるわかるわk
うううううるせ~~~~~~~~~そんなことより黙って極上のロマンシスを網膜に刻め。
この映画の注目すべきところ、それはアクションでも脚本でも映像効果でも悪でも復讐でもない。ロマンシス、これです。
映像の美しさは作品全体が確かにそうなのですが、特にミニとの追憶シーンがオクジュの乾いた生き様の中に悲しいほど美しく克明に光り輝いているのです。
中学の同級生だったオクジュとミニ。オクジュが立ち寄ったケーキ屋で働いていたのがミニで、ふたりは久しぶりに再会する。
オクジュは元警護員とあらすじにありますが、その詳細は描かれません。
ミニの淡いピンク色の髪とショーケースの中で色鮮やかに並ぶケーキ、疲れた表情のモノトーンなオクジュとのコントラストが想像を掻き立てます。
ミニと一緒にいるシーンはすべてオクジュの思い出のみ。
ミニのいない世界を生きるオクジュはいつも死んでいるみたいに無表情でつまらなそうです。
この映画の中で、オクジュが幸せそうに笑っているのはミニといるときだけ、思い出の中だけなんです!!!!!
ねぇどう思う!!?!?!!!!!!??
オクジュにとってのミニ。
オクジュが眠っているミニに独り言のように語り掛けるシーンがある。
オクジュにとって、ミニの存在だけが生きる理由だった。
オクジュがミニにどれほど救われていたか、このシーンから十分に伝わってきます。
はいみなさん目を閉じて、今から先生にだけわかるように手を挙げてください。誰ですか親友とのエピソードが弱いとか言った人。先生悲しい。もしかしてここのとこ気絶してた?エナジードリンクキメてからあと100回観ろ。
ミニが本当にかわいいな。
人は生まれたら必ず死ぬのと同じくらいものすごく当たり前のことを言いますけどミニが本当にかわいいんです。
パク・ユリム演じる親友のミニは明るくて活発で、いつかバレリーナとして活躍する日を夢見ています。
いつもオクジュの手を引っ張って、服を買って、髪を明るい色に染めて、海で走って、笑って、そんなキラキラした時間をくれたミニ。
パク・ユリムが「ドライブ・マイ・カー」に出演していたあの女優さんだと知って驚きと納得。相手を惹き付ける才能がある。パク・ユリムは天才だし本当にかわいいな。
ミニに誘われしぶしぶ撮った写真。ぎこちない下手くそな笑顔のオクジュが愛おしい。
それから長い間疎遠になっていたふたり。
ある日突然、ミニから連絡がある。
深夜の呼び出しに二つ返事でOKするオクジュ。
バイクをすっ飛ばして、2人分のお酒を買って、ミニに会いに行く。
この流れ一見するとなんてことないシーンのようですが、オクジュの心境を思うと最高すぎてアルコール度数でいうと55度あるのでカッ!!!!!!!!!とムネがアツになります。
オクジュの喪失感と復讐の理由を想像するだけでご飯がすすむ。
独りでいるときのオクジュはどこか寂しそう。なんでもない顔をして強盗をぶちのめし、つまらなそうにパンケーキを食べて顔を覆って眠る。
ミニといたときはまだ仕事をしていたようだけど、久しぶりに顔を出したお店で「いろいろあって辞めた」と話すオクジュ。店主はオクジュを見てかなり痩せたねと言います。
ねぇそれってミニがいないせい…?(突然しゃしゃりだすオタク)
QOL低下させるほどのバカデカ存在ってコト?これみんなどういうことだと思う?ちょっと一旦サイゼ集まってみんなで話し合う?辛味チキン食べる?
浴槽の中で死を選んだミニ。オクジュに遺されていたのは、バレエシューズと小さなメモだけでした。
復讐を決意した理由は親友を失った悲しみ、犯人への憎しみ、親友の無念のためだと最初は思ってた。だけど改めてあらすじを読んで私は叫びました。
彼女が残した最期の願いをかなえるため、
これ大変にエモいんですけど!!!!!
わかりますか、このニュアンスの違い。
ミニを傷つけた犯人が憎いとか、ミニの恨みを晴らしたいとか、そういうのも絶対にあるんだけどそれだけじゃないんです。
ミニの最期の願いが復讐だった、だからそれを叶えたいっていう……。
こんな純粋すぎる愛のための復讐ってある…?今すぐ白米を持ってこい。
※深海まで深読みしている自覚はありますけど本人が楽しそうなのでそっとしておいてあげてください。
エモいといえば要所要所で映される水槽を泳ぐ魚と、それを眺めるオクジュ。浴槽で死んでいたミニ。オクジュが復讐を誓った、静かな湖。そしてラストシーンのふたりと海。
このへんも最後まで観るとめちゃくちゃエモく感じられるので注目してください。
ネットコミックが原作のようで、映画では説明のない部分も詳しくわかるかも。でも私はいろいろ想像できる映画版だいすきです。
チョン・ジョンソの哀
今更ですがチョン・ジョンソの哀の演技が圧倒的に素晴らしい映画です。たった一人で心許ない武器を持ってふらふらと敵地に乗り込んでいく姿はまさに狂気。ジョン・ウィックとかめちゃくちゃ準備して行くのに…。
目の演技のすごさはよく言われていますが声もいいんですよね。闘っているときの淡々としているようでか細くて、悲痛な声に痺れます。
チョン・ジョンソの作品は「ザ・コール」も「ペーパー・ハウス・コリア」も序盤で放置していたのでよく知らなかったのですが、今作で彼女の素晴らしさに気付けてよかった。今後いろんな作品を見てみたいです。
とりあえずチョン・ジョンソとパク・ユリムが最高だったので撮影風景とか2人の写真とかいろいろ見たいな~と思って調べてみました!
いかがでしたか?
私は爆速で現実を叩きつけられて全身複雑骨折したので明日会社休みます。