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読書感想:  田坂広志『教養を磨く』を読んで


1 初めに


 田坂広志 『教養を磨く』を読んで感銘を受けました。この本は今後大量の失業者を引き起こすと言われる「AIの時代」をいかに生きていくか、そのヒントを与えてくれると思いました。
 この本は様々なテーマを扱っています。紹介したい点はたくさんあるのですが、その中で大変印象に残った2点を取り上げます。

2 「知能」と「知性」の違い


 著書の中では「知能」と「知性」の違いについて述べてあります。「知能」とは「答えのある問い」に対して、いち早く正解に辿り着く能力こと、「知性」とは「答えのない問い」を問い続ける能力と述べてあります。(p.215)

 「答えのある問い」はAIが瞬時に正確な答えを出してくれるでしょう。しかし、「答えのない問い」には「解答は無い」としか答えてくれないでしょう。しかし、我々人間は「なぜ 世界は ここにあるのか」「なぜ 自分は ここにいるのか」なんて「答えがない問い」を思わず問います。この問いを問い続ける力が必要であると、田坂氏は述べています。

 この本を手に取ると、その帯には「教養」とは、「答えのない問いを問い続ける力」と記載してあるのが目に付きます。つまり、私たちは「知性」を備えた「教養」を持とうということだと、私は理解しました。

3 「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」


 この本の中で、注目した点の1つが、これからの経済は「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」を融合した「ハイブリッド経済」であると述べてある点です。

 経済というと普通は「貨幣経済(マネタリー経済)」を思い浮かべます。しかし、私たちの社会は貨幣経済だけで動いていません。例えば、町内会や学校のPTA活動などです。これらは貨幣経済の原理で動いていませんが、社会で大切な機能を果たしています。

 田坂氏は「マネタリー経済」だけでは、社会はうまく機能しないにも拘わらず、我々は「マネタリー経済」だけを経済と考える傾向があったとの趣旨を述べています。

「ボランタリー経済」で大切なのが「知識資本」「関係資本」「信頼資本」「評判資本」「文化資本」であると述べています。(p.178) これらはお金に交換することが出来ません。お金に交換することのできないものを、いかにして「マネタリー経済」に取り入れ、「ハイブリッド経済」の社会にしていくべきだと理解しました。

4 まとめ
 この本を1冊読んだからと言って、田坂氏の述べる「知性」がすぐに身につくとは思いません。さらに、健康法のようにすぐに役立つような簡単で具体的な方法が述べてあるとも思えません。しかし、AIには取って換わることのできない人間の「知性」について考え、AI時代に生きる「教養」を磨くヒントを、この本は与えてくれると思います。


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