随筆:「本が好き」の2つの意味 ― 「読書が好き」と「ツンドクが好き」 ―
本が捨てられない
「本が好き」とは通例は「読書が好き」という意味で使われる。しかし、もう一つの意味があるように思える。それは「本を集めて、自分の傍に置いておくこと」、いわゆる「ツンドク」の意味があると思われる。残念ながら、私は後者の「ツンドク」の方に入ることに、歳とって気が付いたのである。
このことが痛感したのが、古い本を処分しようと思った時であった。書斎が本であふれかえり、そのために寝室まで本を積み上げ、身動きが難しくなってきたのである。ところが、いざ本を処分しようとして、本を取り上げてみると、急に本がいとおしくなってきたのである。
そのため、自分でルールを決めることにした。まず、第一に雑誌や資料のコピーを処分する。第二に開くと紙自体が茶色に変色していて、今後読む気になれないものは処分する。そして第三に10年以上も置いたまま、一度も開いて読んだことがない本は処分する。
第一と第二のルールはほとんど抵抗なく実行できた。その結果、少しだけ部屋にゆとりができた。しかし、第三のルールに従って本を処分しようとすると、急に作業がとまってしまったのである。
「もうこの本は読むこともないだろうな」と思い、念のために中を開くと、ところどころに線が引いてあった。その箇所を読んで、「自分はこんなことに感心したことがあったのか?いつ頃のことだろうか?」なんて暫く考えていると、すっかり作業が止まってしまう。「もう一度、読む価値があるかもしれない。この本は取っておこう。」と思うと、もうだめである。
数日たつと、「自分はあとどのくらい生きることができ、どれくらい本を読むことができるのだろうか?古い本ははやり処分するしかない。」と思うである。しかし、また本の処分をしようとすると、同じことを繰り返してしまう。我ながら困ったものであ