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#文芸評論

ノルウェイの森①—グレート・ギャッツビーとハツミさん—

ノルウェイの森①—グレート・ギャッツビーとハツミさん—


はじめに
これから、何回かに分けて村上春樹の『ノルウェイの森』について書こうとおもいます。

村上春樹は中学の頃に『1Q84』『ダンス・ダンス・ダンス』、そして『スプートニクの恋人』を読んでいました。
それからかなり時を経て、大学2年生のはじめに出会ったのがこの『ノルウェイの森』です。はじめてこの本を読んだ時は、まるで頭を掴まれて水面に引き込まれたような心地がして、我を忘れていっき読みました。

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遠藤周作③—人生を振り返って

遠藤周作③—人生を振り返って


はじめに
今回はまた遠藤周作を起点として、我々は既に起こったことについてどのように捉えるかを考えたいと思います。

ジャン=ポール・サルトルの『嘔吐』という本に、「生きること」と「物語ること」の違いが書かれています。
その違いとは、生きることは無意味な日々が単純な足し算のように積み重なっていくだけだが、物語はまず結末を用意され、生がそれに向かって進むための布石を用意されている、ということです。

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遠藤周作②—死について

遠藤周作②—死について


はじめに

今回は、作家・遠藤周作が死をどのように捉えたかを考察します。

この世を生きている我々は、死に対して等しく無知な存在ではありますが、死について考えることとは、生について考えることと同意義ではないでしょうか。そう考えれば、死を考えるのに早すぎる年齢というのはありません。

今回は小説は取り上げず、『死について考える』というエッセイ本に依るところが多くありますが、この本はキリスト教のみな

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遠藤周作① —遠藤周作のキリストと悪魔—

遠藤周作① —遠藤周作のキリストと悪魔—


はじめに今回は私が中学生の頃から大好きで、ヘルマン・ヘッセとともに私の精神を支える柱である作家の遠藤周作についてです。彼の一冊の本について書こうとすると終わりが見えなくなりそうなので、テーマを定めて横断的に何冊かの本について書こうと思います。 
第1回目は、遠藤周作のキリスト教観の根底に関わる「キリスト」と「悪魔」の描き方について考えました。あくまで、広い意味を持つ「神」ではなく、人間として生き

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