見出し画像

大学進学費の過去と未来

人生の可能性を広げるお金の専門家
ファイナンシャルコーチの佐藤ななみです。
 
熊本日日新聞社発行の生活情報紙『くまにちすぱいす』で、お金に関する記事の執筆を担当して23年。ここでは、紙面でお答えした家計相談の中で、文字数の都合で説明しきれなかった用語やポイントについて触れていきます。
名付けて『はみ出し☆すぱいす』張り切って参りましょう♪
 
今回は、10月18日付(第748号)のご相談より「大学進学費」について深掘りっ♪

※ご相談者様に了解をいただいて記事をご紹介しています。
 

お子さんにかかる教育費について、すぱいす紙面↑↑↑では、文部科学省ホームページより直近の私立大学のデータをご紹介しました。
こちらでは同じく文部科学省のデータを参考に、教育費の将来について考察してみたいと思います。


1.大学の教育費は着実に増加

教育費の未来を語る前に、まずは過去の推移を振り返ってみましょう。
文部科学省ホームページより『国公私立大学の授業料の推移』の資料に、昭和50年から令和5年までの大学年間授業料および入学料が紹介されていましたのでグラフ化してみました。
※出典:文部科学省ホームページより

1.国立大学の年間授業料および入学料

国立大学の授業料および入学料から見てみましょう。

国立大学の授業料等の推移
文部科学省『国公私立大学の授業料の推移』をもとにグラフ化

昭和50年の国立大学の年間授業料は、なんと36,000円。これに入学料50,000円が加わって初年度86,000円で進学できたようです。
51~52年は年96,000円、53年には144,000円に値上げが行われているものの、この4年間で卒業した人たちは422,000円で卒業できたことになりましょうか。(その他、多少のプラスがあったかもしれません)
 
その後、昭和50年代後半から平成7年頃にかけて、概ね2年ごとに10%前後~20%の上昇幅で着々と値上がり。その後は平成17年まで2年ごとに2~5%程度の幅で緩やかに値上がりしていたことがわかります。
 
平成17年以降は、現在まで授業料年535,800円で据え置き、入学料は少し前の平成14年から282,000円で据え置かれています。

2.私立大学の年間授業料および入学料

次は、私立大学の授業料および入学料です。

私立大学の授業料等の推移
文部科学省『国公私立大学の授業料の推移』をもとにグラフ化


私立大学については「学校学部によりさまざま」というのが大前提ですが、ここは資料の通り平均額を全体のトレンドとして把握したいと思います。
 
昭和50年の私立大学の年間授業料(平均)は、182,677円で、入学料95,584円を足して初年度278,261円という計算になりました。
国立大学の計算↑↑↑と同様に、53年までの授業料をプラスしてみると、合計1,034,739円。実際は、これに施設使用料などが加わったかと思います。
 
私立大学の場合も昭和50年代前半に非常に大きな上昇幅で、50年代後半からバブル崩壊直後の平成4年あたりまでは4~9%ずつ着実に上昇。その後は伸び率0~2%程度で微妙に揺れながらジワッと増加。
令和5年度の平均授業料は、年間で959,205円、入学料は240,806円となっています(プラスαあり)。

3.上昇再開か・・・

国立大学も私立大学も、経済や物価の大きな流れとリンクしているように見えます。
昭和から平成バブル期までの大幅な上昇から、平成の半ば以降のマイナス成長期にはやや足踏みしていたものの、令和に入り、先んじて私立大学に上昇の兆しが見えていますね。
 
また国立大学も、ここに来て東京大学が令和7年度から授業料を約11万円(20%)引き上げ、国の定める上限である年642,960円にすることを正式発表しています。
この動きを受けて、徐々に追従する学校も出てくるのではないでしょうか。

2.この先、どう備える?

令和に入り、私立大学の授業料上昇率は1~3%ほどとなっています。この先、間をとって2%の上昇率で値上がりしていったら・・・?
お子さんの年齢によって、何年後のことになるか?時期が遠いほど金額が大きくなる可能性は高まりますね。
以下、シミュレーションしてみました。

1.「年2%上昇」⇒5年後

授業料などが年2%ずつ上昇した場合の5年後の金額
☆国立授業料:現行535,800円(上限額642,960円)⇒591,566円(709,880円)
☆国立入学料:現行282,000円⇒311,351円
☆私立授業料:平均959,205円⇒1,059,040円
☆私立入学料:平均240,806円⇒265,869円

2.「年2%上昇」⇒10年後

授業料などが年2%ずつ上昇した場合の10年後の金額
☆国立授業料:現行535,800円(上限額642,960円)⇒653,137円(783,765円)
☆国立入学料:現行282,000円⇒343,756円
☆私立授業料:平均959,205円⇒1,169,266円
☆私立入学料:平均240,806円⇒293,541円

3.「年2%上昇」⇒15年後

授業料などが年2%ずつ上昇した場合の15年後の金額
☆国立授業料:現行535,800円(上限額642,960円)⇒721,116円(865,340円)
☆国立入学料:現行282,000円⇒379,535円
☆私立授業料:平均959,205円⇒1,290,964円
☆私立入学料:平均240,806円⇒324,093円

あくまで機械的な計算ではありますが、お子さんが小さいほど物価上昇をしっかり視野に入れた資金準備を考えておく必要がありそうです。

3.さいごに

とは言え、教育費は社会全体で負担する方向に進んで欲しいというのが個人的な願いです。なぜならば、子どもたちは各ご家庭の大切なお子さんであると同時に、社会を支えてくださる大切な人材だから。

これまで、一人の天才が世界を変えてくれた事例なんて山ほどあるわけで、その恩恵は、子どもがいる人も、いない人も、若年者も高齢者も受けているのですから。
どこにどんな才能や可能性が眠っているのかわからないのですから、家庭の経済力に関わらず、その天才候補たちが一人残らずチャンスを得られる社会に!
ますますの子育て支援充実を期待しています。

今日も長文(&数字いっぱい)をお読みいただきありがとうございました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?