スマホゲーム、縦横どっちが良い?
冬休みくらいは毎日なんか文章を書こう。
ということで、今日も書いてみました。
突然ですが、皆さんには「推し」のキャラクターはいるでしょうか。
ぼくの場合、『プリンセスコネクト!Re:Dive』のサレン、『学園アイドルマスター』の紫雲清夏などが該当します。
かわいいね。
推しについて語ってもいいのですが、曲がりなりにもゲームクリエイターの端くれなので、推しをフックにゲーム設計について考えてみようと思います。
スマートフォンには、縦画面と横画面がある
スマートフォンには、縦持ちと横持ちがあります。
『プリコネ』は横画面のゲームで、『学マス』は縦画面のゲームです。
どちらもいわゆる美少女ゲームですが、ここには大きな戦略の差が見て取れます。
そもそも、スマホはなぜ縦に長いのでしょうか。
大半のパソコンは、横に長いディスプレイで使うことを前提として設計されています。それに対して、大半のスマホは縦に長い状態がデフォルトになっています。
横に長い画面では、視野のうち画面が占める面積を広げることができ、より多くの情報を目に入れることができます。人間の目は横に並んでいるので、当然といえば当然ですね。
一方、スマートフォンは「手で持って使う」という制約があります。横に長いと片手で持ちづらいので、片手で持ちやすい縦長の形を採用しているわけです。
スマートフォンが縦長のものである以上、ゲームは基本的に縦長で作るほうが良いのでは、という発想になります。
実際、スマートフォンゲームの市場を大きく拡大した『パズル&ドラゴンズ』は縦長のゲームですね。
ガラケー時代の感覚の延長線上にあるので、縦画面のほうが開発しやすかった、というのもあるかもしれません。
『パズドラ』がヒットした時期から、ゲーム会社は「スマホゲームって儲かるらしいぞ」と気づきはじめます。そして、徐々に開発リソース(=ゲーム開発をする社員)をスマホゲームに割き始めます。
縦画面は窮屈だ!
しかし、縦画面には欠点もありました。
歴戦のゲームクリエイターたちは、ほとんど横画面のゲームを作っていました。しかも、タッチ操作できるディスプレイなんてDSくらいのモノだったことでしょう。
みんな、開発のノウハウを持っていなかったわけです。
というわけで、縦画面のスマホを無理矢理横向きで使うほうがいいじゃん、という発想が生まれます。これには、前述の「目は横向きについているので、横画面のほうが視野が広い」というメリットもあるため、一石二鳥ですね。
横画面のほうが、世界を広く描けるので、ゲームへの没入感を高めることができるわけです。
横画面のメリットを最大限に活用したタイトルのひとつが『プリコネ』です。
「アニメRPG」と銘打ち、横画面ならではのアニメーション演出をたくさん取り入れたゲームを打ち出しました。
美少女系のゲームとしては、キャラクターの動きを最大限にアピールできるので、相性が良かったのだろうと思います。
縦画面はヒトを大きく映せる!
一方『学マス』や『ウマ娘』では、縦画面を採用しています。
この2つのタイトルでは、縦画面のメリットを活用して「推し」を作る工夫がなされています。
ホーム画面を見ると、分かりやすいかもしれません。
どちらも、キャラクターの3Dモデルが画面全体に映っていますね。
縦画面では「画面いっぱいにキャラクターを描く」ことが可能です。
なぜなら、人間は基本的に縦に長い生き物だからです。
縦画面にすることで、キャラクターを大きく描き、表情などの細かい描写を可能にしているわけですね。
画面の使い方を規定する「人間の体」
ここまで、縦画面と横画面のメリットについて書いてみました。
まとめると以下のようになります。
・横画面は、視野いっぱいに画面を見せることができる。
なぜなら、人間の目は横に並んでいるから。
・縦画面は、キャラクターを大きく見せることができる。
なぜなら、人間の体は縦に長いから。
上の2点は、どちらも「人間の体の構造に影響を受けている」という点にお気づきでしょうか。
ゲームというのは、結局のところ人間が遊ぶモノです。
ゆえに、人間にとって心地よいものを目指さなくてはなりません。
それを研究した結果、縦画面になったり、横画面になったりするわけですね。
メディア論の嚆矢・マクルーハン
メディア研究のさきがけとなった『メディア論』を著したマーシャル・マクルーハンは、メディアとは「人間の身体を拡張するもの」である、と主張しています。
……よく分からんですね。
「テレビ」というメディアは、人間の目が持つ「見る」という行為を拡張し、「本来目では見えない、より遠くの映像を見ることができる」道具です。同じように、ありとあらゆるメディアは、人間の体が持つ機能を拡張してくれるものだ、というわけです。
なお、マクルーハンに言わせれば、テレビやラジオだけでなく、洋服やピストルだって「メディア」となります。
(洋服 =人間の皮膚が持つ「体温調節機能」の拡張)
(ピストル=人間の身体が持つ「攻撃する」行為の拡張)
マクルーハンは「メディアは、人間の身体を拡張するものである」と考えました。
この発想を逆転させてみると「メディアは、人間の身体によって縛られる」という見方もできます。メディアが人間の身体を拡張するものである以上、メディアは人間の身体の影響を強く受けることになります。
スマートフォンゲームが縦画面になったり横画面になったりするのも、1つの例かもしれません。
画像出典
[*1] 『プリンセスコネクト!Re:Dive』公式サイトより
[*2] 『学園アイドルマスター』公式サイトより
[*3] 『プリンセスコネクト!Re:Dive』より
[*4] 『ウマ娘 プリティーダービー』より
[*5] 『学園アイドルマスター』より
見出しの画像 『ウマ娘 プリティーダービー』より