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【82 動画あり】好音をさがせ! 好音起原 詩楽起原vol.2

《短詩定型 と わたし+たち》6月本棚@ハムハウス 「ミカンのカンシ 〜オワリとハジマリ」では、

小冊子「好音をさがせ! 好音起原 詩楽起原vol.2」を用意。
そして動画で朗読!

さらにこちらでは、詳しい解説、訓読を掲載します☆

まずはこちらが動画、以下にテキスト、訓読、注釈、となります。


【好音】の出典三詩と、2020年に書いた三詩を続けて訓読朗読します。2020のは、韻も何もないカンシもどきです。

匪風發兮 匪車偈兮
顧瞻周道 中心怛兮

匪風飄兮 匪車嘌兮
顧瞻周道 中心弔兮

誰能亨魚 溉之釜鬵
誰將西歸 懷之【好音】

『詩経』国風《匪風》BC11C~5C

思樂泮水 薄采其芹
魯侯戾止 言觀其旂

其旂茷茷 鸞聲噦噦
無小無大 從公于邁
・・・
翩彼飛鴞 集于泮林
食我桑黮 懷我【好音】

憬彼淮夷 來獻其琛 
元龜象齒 大賂南金

『詩経』頌 魯頌《泮水》BC11C~5C

翼翼歸鳥 晨去于林 
遠之八表 近憩雲岑

和風不洽 翻翮求心
顧儔相鳴 景庇清陰

翼翼歸鳥 載翔載飛
雖不懷遊 見林情依

遇雲頡頏 相鳴而歸 
遐路誠悠 性愛無遺

翼翼歸鳥 馴林徘徊
豈思天路 欣及舊棲

雖無昔侶 衆聲每諧
日夕氣清 悠然其懷

翼翼歸鳥 戢羽寒條
遊不曠林 宿則森標

晨風清興 【好音】時交 
矰繳奚施 已卷安労
  
《帰鳥》陶淵明AD365-427

鳥游于林 窓外日微
濛濛煙翠 似在中水

章魚旋回 以樽撃鰐
林間横跳 奪取香蕉

鳥啼于林 窓外日薄
出房走行 街臨水郷

耕用田池 阡陌交通
工業団地 渓水利用

縁渓行路 渓水遅遅
蟋蟀揖揖 蜂蛾横飛

徘徊樹間 歩中芳草
豁然野広 遠天雲光

  好音《地形》AD2020、10月
上の詩のイメージ映像→ 


鳥帰于林 遠近不覚
忘道彷徨 縦横逆行

昔時少年 走行足音
喘喘呼呼 喉奥血味

始知堤防 近在公園
公園有叢 怪樹蒼蒼

山川不移 我独朦朧
唯知天鏡 不忘小童

好音《天象》AD2020、10月
上の詩のイメージ映像→ 

鳥降于林 善言愛隣
流言殺心 迷乱于政

堤東乾燥 国道錯綜
林変邑城 田成工場

壁床塗装 塗而可浸
滲于深淵 滴于窓門

鳥下于林 滌滌水声
相彼泉流 何処発生

微風起兮 何来何往
疑是其風 吹於小口

大急走行 聴而不観
風吹北南 随意而吹

好音《人文》AD2020、10月
上の詩のイメージ映像→ 

風を見た人はいない

でもそれはある

言いようのないうめきは

生まれるための

あかし。

見えないものに

耳をすます

聞こえないものに

目をこらす

風景を聴く、うめきを視る 
好音
✳︎

誰見風来 
未見是在

無言呻吟 
其証新生

静聴不見 
細視不聞

聴風景兮 視呻吟兮
好音

【訓読】
風に匪(あら)ずして發(はつ)たり 車に匪(あら)ずして偈(けつ)たり
周への道を顧り瞻(み)て 中(うち)なる心 怛(いた)む

風に匪(あら)ずして飄(ひゅう)たり 車に匪(あら)ずして嘌(ひゅう)たり
周への道を顧り瞻(み)て 中(うち)なる心 弔(かなし)む
 
誰かよく魚(うお)を亨(に)る これが釜鬵(かま)を溉(すす)がん
誰か將に西に歸らん 之に【好音】を懷(おく)らん
 
『詩経』国風 檜風《匪風》BC11C~5C
 
思(ここ)に泮の水を樂しむ 薄(いささ)か其の芹を采る
魯侯 戾(いた)る 言(ここ)に其の旂(はた)を觀る
 
其の旂(はた) 茷茷(はいはい)たり 鸞の聲 噦噦(かいかい)たり
小と無く 大と無く 公に從いてここに邁(ゆ)く
・・・
翩(ひるがえ)る かの飛ぶ鴞(ふくろう) 泮の林に集(とどま)る
我が桑の黮(み)を食(くら)い 我に【好音】を懷らん
 
憬(はるか)なり彼の淮の夷(えびす) 來りて其の琛(たから)を獻ぐ 
元(おお)いなる龜 象の齒(きば) 大いに南の金(こがね)を賂(おく)る
 
『詩経』頌 魯頌《泮水》BC11C~5C
 
 
翼翼たる歸る鳥 晨(あした)に林より去る
遠く八表に之き 近く雲岑(うんしん)に憩う
 
和(やわ)らかき風 洽(あまね)からず 翮(つばさ)を翻えして心を求む
儔(ともがら)を顧みて相い鳴き 景(ひかり)は清き陰(かげ)に庇(おお)わる
 
翼翼たる歸る鳥 載(すなわ)ち翔(かけ)りて 載(すなわ)ち飛ぶ
遊(あそぶ)こと懷(おも)わずといえども 林を見ては 情が依(よ)る
 
雲に遇(あ)いて頡頏(きっこう)し 相い鳴きて歸る 
遐(とお)き路(みち) 誠に悠かなれども 性愛 遺(わす)るること無し
 
翼翼たる歸る鳥 林に馴(な)れて徘徊す
豈に天の路(みち)を思わんや 欣(よろこび)て舊(ふる)き棲(すみか)に及ぶ
 
昔の侶(とも)無しといえども 衆(みな)の聲は每(つね)に諧(やわら)げり
日に夕べに 氣清く 悠然たる其の懷(おもい)
 
翼翼たる歸る鳥 羽を寒き條(えだ)に戢(おさ)む
遊ぶこと曠(ひろ)き林ならざらんや 宿するときは森の標(こずえ)なり
 
晨(あした)の風 清(すず)しく興り 【好音】時に交わせり 
矰繳(いぐるみ)奚(なん)ぞ施(ほどこ)さん 已に卷(う)めり 安んぞ労(いたわ)らん
  
《帰鳥》陶淵明AD365-427
 
鳥 林に游び 窓の外 日は微(かすか)なり
濛濛たる煙翠(かすみのみどり) 中(うち)なる水に在るに似たり
 
章魚(たこ)は旋回す 樽を以て鰐を撃つ
林の間 横に跳び 香蕉(バナナ)を奪い取る
 
鳥 林に啼き 窓の外 日は薄(うすら)ぐ
房(へや)を出でて走り行き 街の水郷に臨む
 
耕用田池 阡陌(せんぱく)交通す
工業団地 渓(かわ)の水 利用す
 
渓(かわ)に縁(よ)りて路(みち)を行く 渓(かわ)の水 遅遅たり
蟋蟀 揖揖(じじ)たり 蜂蛾 横に飛べり
 
樹の間を徘徊し 歩む中(うち)に 芳ばしき草
豁然として野 広がり 遠き天より 雲光る
 
  好音《地形》AD2020、10月

【自注】
三部作(地形、天象、人文)のその一です。
映像「詩三部 其之一 地形」(33秒、限定公開)
は、この詩の周辺の記録です。
地形:“山川煥綺、以鋪理地之形”『文心雕龍』原道第一、劉勰(AD5~6C)
クロクトパス:1994年に発売されたスクロール・アクション・ゲーム・ソフト「スーパードンキーコング」に登場するタコ型の敵キャラ。ネッキーは鳥。同ゲームは、当時としては鮮やかで立体感のある映像美で自然描写が映えた。ドラムとシンセサイザーを基調にしたアンビエントBGMも特徴。
四言詩:“四言正體、則雅潤為本” 『文心雕龍』明詩第六
鳥游于林:“翼翼帰鳥、晨去于林”「帰鳥」陶淵明(AD365-427)
章魚:タコ
香蕉:バナナ
阡陌交通:「桃花源記」陶淵明

 
鳥 林に帰る 遠きも近きも覚えず
道を忘れ彷徨(さまよ)う 縦に横に逆行す
 
昔時(むかし)の少年 走行する足音
喘喘(ぜいぜい)呼呼(はあはあ) 喉の奥に血の味
 
始めて知る堤防 近くに公園在りと
公園に叢(くさむら)あり 怪しき樹 蒼蒼たり
 
山と川 移らざるも 我独り朦朧たり
唯だ知る天の鏡 小さき童(わらし)を忘れずと
 
好音《天象》AD2020、10月
【自注】
三部作(地形、天象、人文)のその二です。
映像「詩三部 其之二 天象」(3分21秒、限定公開)
は、この詩の周辺の記録です。
天象:“日月疊璧、以垂麗天之象” 『文心雕龍』原道第一、劉勰(AD5~6C)
四言詩:“四言正體、則雅潤為本” 『文心雕龍』明詩第六

鳥帰于林:“翼翼帰鳥、晨去于林”「帰鳥」陶淵明(AD365-427) 

鳥 林に降れり 善き言(ことば)に 隣(となりびと)を愛せよと
流言は心を殺し 政(まつりごと)を迷い乱す
 
堤東は乾燥し 国道は錯綜す
林は邑城(まち)に変わり 田は工場と成る
 
壁や床は塗装さるる 塗れども浸(しみ)るべし
深淵から滲(にじ)み 窓門から滴(したた)る
 
鳥 林に下る 滌滌(じょうじょう)たる水の声
相(み)よ 彼の泉の流れ 何処より発生するか
 
微かな風 起れり 何こより来り 何こにか往かん
疑うらくは是れ其の風 小さき口(あな)より吹くと
 
大急ぎにて走り行く 聴けども観えず
風は吹く 北に南に 随意(おもうまま)に吹く
 
好音《人文》AD2020、10月
【自注】
三部作(地形、天象、人文)のその三です。
映像「詩三部 其之三 人文」(41秒、限定公開)
は、この詩の周辺の記録です。
人文:“人文之元、肇自太極、幽贊神明” 『文心雕龍』原道第一、劉勰(AD5~6C)
四言詩:“四言正體、則雅潤為本” 『文心雕龍』明詩第六
鳥帰于林:“翼翼帰鳥、晨去于林”「帰鳥」陶淵明(AD365-427)
迷乱于政:『詩経』大雅「仰」
相彼泉流:“相彼泉水”『詩経』小雅「四月」
微風起兮:“大風起兮雲飛揚” 『史記』高祖本紀、司馬遷(BC145~86)
 

風を見た人はいない
 
でもそれはある
 
言いようのないうめきは
 
生まれるための
 
あかし。
 
見えないものに
 
耳をすます
 
聞こえないものに
 
目をこらす
 
 
風景を聴く、うめきを視るー好音
 
✳︎
 
誰か見ん 風の来たるを 
未だ見ざれど是れ在り
 
無言の呻吟(うめき)は 
其れ新しく生るるの証し
 
静かに見えざるを聴き 
細かに聞こえざるを視る
 
風景を聴く 呻吟(うめき)を視るー好音
 
《好音本棚コンセプト》2022、4月

好音本棚については、こちらにまとめてあります


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