【詩】若夏(わかなつ)
ヒメサユリが咲いている
朝の光が照らしている
僕のとなりで笑う
君を思い出した
夏が来る
行き先を見失って
ポケットの手を
出すことさえ面倒に
正しいか正しくないか
それだけで歩いていた
そんな僕の時を止めた
君がいた
眩しい朝に
君はいた
白いタオルで汗をふき
緑の芝に水をやる
君を包んだ白いスカート
夏の風に揺れていた
優しさを嫌っては
誰ひとり許さずに
離れてゆく君を追わず
すべてを手放すまで
気づかなかった
僕は
何を守っていたのか
若かった
哀しいくらいに
若かった
眩しいあの日
君はいた
やがて
夏が来る
☆☆ミニ作品解説とおしゃべり☆☆
「若夏」は若々しく青々とした季節を表す季語ですが、普段はあまり使わない印象があります。
ちょうど10年ほど前に書いたこの作品は、
その言葉からイメージを膨らませたものです。
「若さ」は強さであり弱さでもありますね。
過ちを振り返る寂しい作品ですが、去ってしまった「君」は主人公の道標になっています。
©︎ 2023 松本アニー
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