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ほん

生存というものは死というものに対して、非常に傲慢なのかもしれません。

川端康成

「青い海黒い海」




おばあちゃんの戦争のお話
空襲がくると防空壕に走って逃げるそうだ
あるとき、おばあちゃんは、おばあちゃんのおかあさんと(ちょっとややこしい言い方だけど)、おばあちゃんのおねえさんの嫁ぎ先に出かけていて空襲にあったそうだ
おばあちゃん「おかあちゃん、空襲やで。逃げよ」
おばあちゃんのおかあさん「さき行き。おかあちゃんは布団に水かけて行くから。あんたは赤ちゃんのおむつ持って行くんや」
おばあちゃんのおねえさん「いそぎ、はよ」
(ほんとややこしいけど)
あかちゃんのいるおねえさんとおばあちゃんはおむつを抱えて防空壕に行った
結局、おばあちゃんのおかあさんは同じ防空壕にはこなかった
おねえさんの家に戻ってみると、焼け野原
水浸しの布団が干したまま残ってただけだそうだ
そしておばあちゃんのおかあさんは、通りがかりのおじさんに無理矢理違う壕に連れて行かれてたらしい
結果、
かねめのものぜーんぶ燃えて、あかちゃんの布団とおむつだけ、そして命が残ったそうだ
おばあちゃんは笑って「あほなことやったわ、おむつ抱えて逃げて。あとはなーんも残っとらん。壕であかちゃんが粗相したらあかんゆうて、おむつ持って逃げて。そんで全財産失うやなんて、笑い話や」
それでも生きててよかった
そして、おばあちゃんは、おばあちゃんのおかあさんを空襲のなかから連れ出した通りがかりのおじさんにはずっと感謝したそうだ

空に爆弾のあめ

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