腰の日焼けは…
南の島へ旅したのは20年近く前。海が好きで、国が変わる度に新しい水着を買った。写真の自分が、いつも違うものを着ている…それがステイタスのように感じていたこともある。
数年の間に3カ所ほど行っただろうか…。ビキニを着るには自信がないものの、ワンピースではファッション性に欠ける気がしてセパレートタイプを重用していたのだが、何度目かの帰国後、風呂上りに鏡を見て驚いた。お尻は真っ白なのに、腰から上が真っ黒に日焼けしている。肩の日焼けはわかるが、腰から背中の剥き出しゾーンをあまり気に掛けていなかったのかも知れない。日焼け止めを塗ってはいても、足りなかったようだ。
南の島どころか、海を訪れることはほぼなくなった。相変わらず好きなのだが、一人旅をする勇気がないので、人生上、誰にでも起こり得る生活環境の変化と共に、共に旅をしてくれる相手がいなくなったばかりに、私個人の人生を豊かにするための旅行というものが出来なくなった。水着を着なくなって、それこそ10年近く経つように思う。
直近の南国はグアムだった。水着を着て、海で泳いだ。例の如く、腰から上は黒くなった。
入浴後、時折背中を確認する。肩の水着後は当然の如く、今は影も形も無い。しかし、腰から上は、まだ黒い気がする。日焼けが治っていない方が不思議なほど、時間は経っているのに…。お尻が飛び出ているせいで、全くくびれが無いわけではない腰の辺りに影が出来て黒く見えるのかも…。ずっとそう思っていたが、ある時、気になって、ちゃんと鏡に映してみた。
裸眼でもある程度見えるが、車の運転には眼鏡が必要なくらいの近眼でもあるので、ちゃんと眼鏡を掛ける。わざと猫背にしてお腹を凹ませ、腰とお尻に凹凸が出来ないよう〝イン〟の姿勢になって、背後を鏡に映す。顔だけ振り返り、気になっていた部分を見ると、腰は腰でも一部分だけ異様に黒くなっているのがわかった。
洗い損ねてそこだけ垢が取れていないのかと思った。ボディタオルにたっぷり泡を立ててごしごし擦る。きれいに洗い流した後、再び鏡に映すが、黒さに変化は無かった。やはりそこだけ日焼けしているらしい。
水着になる機会はめっきりない。10年近く前の日焼けが治っていないのだとも考え辛かった。
頭を抱える。何なのだ、これは?!
人に見せる機会など早々ないが、身体の一部分だけはっきりと黒いなんて、とっても気持ち悪い。しかも原因不明だ。
と、悶々としていた矢先、ふと思いついた。これ…確実に日焼けだ!
雨の日を除き、毎日畑通いをするようになってほぼ3ヶ月が経つ。耕作着は二組をローテーションで来ているが、季節が春から夏へと移った頃、午前中から昼過ぎの農耕時間を見直す必要が出てきた。流石に暑すぎて、下手をすれば熱中症になりかねない炎天下なのである。
中腰で鍬を揮うか、辛くなれば腰を下ろしての草取りが主な作業。若者のような臍出しルックではないものの、屈めばTシャツとジャージの間の背中が多少は出る。日焼けの原因はそれだった!
作業し出すと止まらなくなる。快晴で何時間も似た様な姿勢を繰り返していれば、剥き出しになる部分が日焼けするのは間違いなかった。
シミが気になるお年頃なので、顔には日焼け止めを塗り、マスクとサングラスで防御。鍔広の帽子もしっかり被るが、割烹着と軍手で手や腕は隠しても、屈んだ時に隙間が出来る腰のことまで気に掛けていなかった。
日中の畑仕事が出来ない真夏は何とか越したので、黒くなった腰が更に黒くはなっていないだろうが、この日焼け…いつ治るかとちょっと心配である。