秋のイライラ月間 ③

 行事前の話だ。ある女にイライラしている。
 午後の役割担当のため、食事の配膳やトイレに介助を要する車椅子女子のフォローを頼まれた。元々、彼女の当番で、事前に相談して決めたのだが、土壇場になって役割担当の時間に間に合わないと言い出したのだ。困った時はお互い様なので了承し、フォローの前に食事をとっていると、食堂に彼女がやって来た。私より遅くて大丈夫なのか?と思う。担当に入らなければならないと聞いていた時間まで十分もない。一気に掻き込んで走り込むのだろうか…と心配しているうちに、私が先に食事を終えた。
 車椅子女子を、食堂の後方で待つ。彼女は食事をしながら隣の男子と喋っていた。
 コロナ対策で、食堂内のお喋りはご法度である。配慮しているのか、大方身振り手振りだが、喋っている暇があることに驚いた。お喋りのために手を動かしていたら、食事のために使う手は何処から持ってくるのだろう…。そうこうしていると、車椅子女子が食堂に入って来るのが見えた。彼女は未だ喋りながら食べている。内心イライラした。
 トイレの介助は無理でも、配膳くらいできたのではないか?人に頼っておきながら、自分は喋りまくってるって、どういう神経?人に頼んだことで、自身に時間的余裕が生まれたということなのか…。

 行事後、彼女ともう一人、そして私の三人の清掃指導場所が同じになっていた。前段階である別室の片付けが早めに済んだので、済んだところから清掃場所に移動することになっていたが、片付けの途中で彼女は姿を消した。清掃場所に行ったが、そこには誰もいなかった。もう一人は朝から姿を見ていない。こちらには届かない連絡が入って、休んでいる可能性が考えられる。しかし彼女の方は朝から度々目にしていた。
 とっとと終わらせたいので一人で始めていると、指導される側の男子がふたりやって来た。三人であっという間に終わり、時計を見ると、本来清掃開始時間に設定されていた時刻になっていた。但し、済んだところから清掃場所に移動して開始…は事前に書面に書かれていたため、満足して解散したのだが、彼女が開始時間に合わせてやってくる可能性も考えられる。終わったことを知らせようと、彼女の部署に電話をかけた。誰も出ない。姿を消す前、車椅子女子と喋っていたことを思い出し、彼女の教室に向かうと、いた。何故か、担任と車椅子女子と三人で。
 何故?と思ったが、取り敢えず掃除が終了したことを伝える。
「あぁ、そうですか」
 寝耳に水みたいな顔をしていたということは、彼女は自分の清掃場所、もしくは、掃除のために移動しなければならないことを把握していなかったのだろう。
 饒舌でてきぱきしている印象の人だったが、私の中では彼女の株が急落した。この、行事前後のお陰で…。

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