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「物語の役割(著 小川洋子)」を読んで
小川洋子さん著作の「物語の役割」を読んだ。
小川洋子さんは「博士の愛した数式」「密やかな結晶」などの小説を読んだことがあり、著作を調べていたらこの本にたどりついた。
この本では、作家として物語を紡いでいる小川洋子さんの物語の役割とはなにかについて述べている。
特に印象に残っている箇所は、以下の内容だ。
・物語は本の中にあるのではなく、日常生活の中、人生の中にいくらでもあるのではないということ
・作家は特別な才能はなく、日々の日常生活の中で作り出してる物語を、意識的に言葉で表現しているだけのこと
・現実のなかにすでにあるけれども、言葉にされないために気づかれないでいる物語をみつけだし、鉱石を掘り起こすようにスコップで一所懸命掘り出して、それに言葉に与えること
・自分が考えついたわけではなく、実はもうすでにそこにあったのだというような謙虚な気持ちになったとき、本物の小説がかけるのではなきかとあう気がしています。
・作家になるためには想像力、空想の力が必要だけど、むしろ現実を見る、観察する視点も重要になってくる
・物語は語られるのを待っていて、それを私が見つけたから
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私は以前小説を書くことを挑戦したことがあったが、何度書き直してもなかなかおもしろい話を書きあげることができなかった。
そのため、物語を書くというのは、自分の中から湧き上がる想像力がないと書くことができないと思い込んでいた。
しかし、最近になって物語にかぎらず、書くこと全般において、身近なことの中から観察して見つけ出すことも大切だと思うようになった。
ささいなこと、あたりまえのこと、なんとなく過ぎてしまうこともよく観察して、まだ言葉にされていない、まだ気づかれないでいない物語を私も見つけ出したいと思った。
物語に限らず、絵の世界でも、写真の世界でも、観察して表現する力は大切だと感じている。
小川洋子さんは作中で、「鉱石を掘り起こすようにスコップで一所懸命掘り出して、それに言葉に与える」という言葉で表現していた。
現実の世界にすでにあるけれども、まだ気づかれていない世界を見つけ出すことは、鉱石を掘り起こして原石を磨いて輝かせることと同じだなと思った。
言葉であれ、絵であれ、写真であれ、なにかを見つけて表現することの喜び、楽しさを感じる本だった。