中医学の応用①・症状別の考え方〜『疲れやすい』〜気虚タイプ
『中医学の基礎』を以前ご説明しましたが、その知識をもとに具体的に症状がある場合の、考え方、漢方薬の選び方をご紹介していきます。
今回は、『疲れ』について。
40代、50代になると、若い頃はなんともなかった日常生活が、『やけに疲れる』と感じる方も増えてきます。
コンビニやドラックストアでも、エナジードリンクや滋養強壮剤がよく売れていますよね。
エナジードリンクを利用して、カフェインと糖分でからだを一時的な興奮状態にして『元気』になったような気がしても、その効果が切れてしまうと前よりも疲れてしまうことにもなりかねません。
中年以降に必要なのは、瞬発力よりも持久力。
持久力を高めるためには、『疲れにくいからだ』にしていくことが大切です。
食事、運動、睡眠は、持久力を高めるためには最も基本的でかつ最も重要っです。
でも、そのリズムが狂っているのに、意識的になんとかしようとしても難しいもの。
そんな時は、漢方薬の力を借りて、早くリズムを取り戻すことが大切です。
『疲れやすい』とは?
疲れやすいを少し難しい言葉で言うと、『疲労感』・『倦怠感』と言います。
これは、精神的・肉体的に疲れて何もやる気が起きない・だるくて動くのもしんどいなどを自覚するものです。
精神的ストレスや過労、また年齢的要因やもともとの体質などと関連していて、ずっと続くものもあれば一時的、発作的に起こる場合もあります。
『疲労感』『倦怠感』を中医学的に説明すると・・
『疲労感』『倦怠感』が起こる原因として、次の3つのタイプが考えられます。
虚証タイプ
身体に必要な機能的・物質的要素である「正気」が不足してエネルギー不足となってだるさを場合
気滞タイプ
気の流れがスムーズに行われずに疲労感・倦怠感を感じる場合
湿滞タイプ
体内に余分な水分が溜まって血管や神経を圧迫したり、むくんでいるためにだるさを感じる場合
タイプ別の症状と漢方薬
気虚タイプ
慢性病・虚弱体質・過労等によって、臓腑の機能低下が起こりからだ全体がエネルギー不足になっている状態
気虚タイプは、『だるさ』や『疲れやすい』の他にどんな症状があるかによっていくつかのタイプに分けられます。
ここでは、区別しやすい3タイプをご紹介いたします。
『脾胃気虚』
消化機能が悪くなって栄養素の吸収が低下し、栄養素やエネルギーが十分に作られないために体が栄養不足・エネルギー不足の状態になっているもの
『脾胃気虚』の症状
✔︎食欲不振・味がしない・少ししか食べられない・消化が悪くいたもがれる
✔︎泥状~水様便 腹部のはり
『脾胃気虚』を治療する代表漢方薬
●六君子湯
●人参湯(冷えが強い場合)
『気虚下陥』
『気虚下陥』の主な症状
気が不足して内臓を定位置に維持する能力が低下し、筋肉の緊張低下による内蔵の下垂傾向が見られ、血管運動により血液を上部に送る能力も低下するために、虚血性の頭部症状も見られます。
✔︎胃下垂・遊走腎・脱肛・子宮下垂・下腹部の下墜感(下垂症状)
✔︎立ちくらみ・ふらつき・めまい・頭痛・肩こり(上部虚血症状)
『気虚下陥』を治療する代表漢方薬
●補中益気湯
『気血両虚タイプ』
虚弱体質・老化などによる気血の不足・慢性疾患・出産・出血等による気血の消耗・気虚が慢性的に経過して血の産生が不足するなどにより気虚と血虚を両方伴う状態。
『気血両虚タイプ』の症状
『疲れやすい』『だるい』のほかに、
✔︎顔色に艶が無い・皮膚の肌理が粗い
✔︎爪がもろい
✔︎筋肉のひきつり・しびれ
✔︎眼の疲れ・眼のかすみ
✔︎不眠・眠りが浅い・夢をよく見る・眼が覚めやすい
✔︎月経量が少ない・月経周期が遅れる(血虚症状)
などの血虚の症状を伴う
『気血両虚タイプ』を治療する代表的な漢方薬
●十全大補湯
●帰脾湯(精神不安や不眠症状が強い)
●人参養栄湯(冷えや呼吸器系のトラブルもある場合)