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ニカモトハンナ
2016年5月2日 01:42
ベッドは、ひとつの世界。見えないうすーい膜が、この身体ひとつ分のまわりをぐるっと囲んで、外の空気をすり抜けさせながら、ちょうどいいひとりぼっちにさせてくれる。部屋は、外から見ればただの箱。何もない空間に内と外を作り出す装置。でもそれは内と外をそれぞれ遮断する役割なのではなくて、自分のこの身体を地面に立たせるための、ちょうどいい距離をはかる、ものさしみたいなものなのだと思う。誰かの肌に触れ
2016年2月29日 20:13
荷物のなくなった部屋は、がらんどう。引っ越しの日まではまだ数日あるけれど、同居人が少し物を運んで、つい昨日の朝まで見えていなかった壁が顔を出した。暖房器具がなくてただでさえ寒い部屋に、冷たい空気が充満していくのがわかる。台所からベッドを行ったりきたりする度に、少し建てつけの悪いとびらがカタカタと立てる音を初めて聞いた。今までこちらばかり向いていたテレビの声が、がらんと空いた後ろの空間に
2016年2月23日 19:22
引っ越しの準備は、禊をするのと似ている。積もったホコリと宙に漂ったいろんな想いをひとつひとつ整理して、淡々と片付ける。そして、ときどき思いがけないものに出会うと、忘れていた記憶がやってくる。自分が長く付き合ったものには、記憶のレイヤーが重なって埋まっている。あちこちにある引き出しを、どれでも好きに開けられる感じ。 人のものには、スイッチが眠っている。それを押していいのか、いけないのか、