ニカモトハンナ

ときどき 脈絡のない文章を書きます。ときどき 脈絡のあるような文章を書きます。言葉にして残したものはひとつの証拠のようにも見えるので、自分が歩いたところの足あとは残してみようかなと思いました。

ニカモトハンナ

ときどき 脈絡のない文章を書きます。ときどき 脈絡のあるような文章を書きます。言葉にして残したものはひとつの証拠のようにも見えるので、自分が歩いたところの足あとは残してみようかなと思いました。

マガジン

  • 新しい世界

  • 街とタテモノとくらしの方法

    いつもの見慣れた場所や暮らしの空間に耳を傾ける。それだけで、旅にでられる。そんな旅のメモを綴ります。

最近の記事

金木犀の風が吹く

気づけばもう、あれから間も無く10か月。あっという間に時間が過ぎていってしまった。 娘と共に、初めて外の世界に触れた日。入院する前の照りつける暑さはすっかりどこかへ行ってしまったようで、やわらかな陽射しが心地よい。金木犀の香りをまとった風が肌をかすめて、私たちを歓迎してくれているようだった。 天を仰ぎ、木々のざわめきを聞く。 娘と一緒に初めて触れたあの光を、あの匂いを、あの風を、私はきっと一生忘れない。 1人で入院して、2人で退院する、ということ。 病室では、私と娘の2

    • 再生

      どこでもあって、どこでもない

      ご無沙汰しています。 昨年7月、福島の西会津国際芸術村で、朗読パフォーマンスの公演『どこでもあって、どこでもない』を企画していたのですが、コロナの影響で急遽中止になってしまい、収録した素材を元に再編集した動画として公開しています。 「移動すること」「異なる土地や異なる人を想像すること」をテーマに制作した、散文のようなものです。 今週末、3月5日(土)までYouTubeで限定公開しています。 よろしければ、是非ご視聴ください。 ▽アンケートにご協力いただけると嬉しいです! https://docs.google.com/.../1FAIpQLSclZHS37uoByz.../viewform ========== 「どこでもあって、どこでもない」 https://youtu.be/CyTI3RiWJSs ◆作・演出:ニカモトハンナ ◆演出協力:野宮有姫 ◆出演:野宮有姫、宇都有里紗 ◆ビジュアルデザイン:藤本あゆみ ◆撮影:竹村望 ◆協力:西会津国際芸術村、こととか、田巻源太 ◆助成:東京藝術大学「I LOVE YOU」プロジェクト ふたりの声で紡ぐ、それぞれの話、ひとつの話。 離れた距離と時間をワープするための実験。 ーーーーーーー 2011年、日本に住む私たちの暮らしは大きく揺さぶられ、 「土地」と「人」の生き方が問われました。 人々は離れた土地と土地とを行き来し、 互いを鼓舞しながらその困難を乗り越えてきました。 そして2021年、今度は世界中に広がる未曾有のウイルスによって、 人と人とが顔を合わせること、 大切な人に会いに行くことが難しい世の中が生まれました。 いとも簡単に分断が生まれてしまうこの世界で、 異なる場所に生きている、あなたとわたし。 それでも、私たちが互いに見つめる先には、同じ風景だって、ありませんか? このちっぽけな私の部屋から、 声と想像力を頼りに、その先へワープする方法を探して。 ==========

      • 30分の逃避行

        とっておきの週末が、終わってしまう。 残されたあと30分、もう30分、まだ30分、脳裏にチラつく月曜日の影を遠くに追いやって、日曜日のベッドに身体を沈み込ませて、ただこの重力に身を任せて目を閉じたい。 チルなヒップホップなんてかけちゃって、人気のないプールの上に漂うような気持ちで、古い木目の天井をうっすら開けた目の先に眺めたい。 ハイボール2杯分の体温の上昇が、最近だしてきたばかりの厚手の布団の隅で、じんわりと広がる。少し早い心臓の音。指先にうつったアイシャドウのラメが、電球

        • こんなことをしたりもしてみてます。 https://note.com/cototoka/n/n3c0233dd4d41

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          語りの方法について考える

          講談を聞きに行った。 知人が「語りの方法について考える会」という場を企画していた。今回はその第1弾として、講談師の田辺凌鶴さんが出られるという。 前半は古典の講談を一席。 こうしてちゃんと講談を聞くのは初めてだった。 物語に接するとき、現代の私たちは、文字よりも音よりも映像を見てしまうことに慣れている。映画やドラマでは、役者が登場人物になりきり、演じてそのセリフを話す。そこに語りが入ることはごくまれだし、私たちはその情景を映像による視覚で十二分に与えられている。 講談

          語りの方法について考える

          2016年から関わっている「こととか」で、 noteをはじめてみました。 「今、います」展のテキスト、 全体の編集なども担当してます。 よかったら是非フォローお願いします👋 https://note.com/cototoka #こととか #自己紹介 #西会津 #アート

          2016年から関わっている「こととか」で、 noteをはじめてみました。 「今、います」展のテキスト、 全体の編集なども担当してます。 よかったら是非フォローお願いします👋 https://note.com/cototoka #こととか #自己紹介 #西会津 #アート

          いいことがあった日

          ユーロスペースで、「劇場」を見た。 そう、又吉直樹原作の映画。 SNSに、映画好きの友人が観に行って思わず泣いてしまったと投稿していて、しばらく気になっていた。チケットを調べたら明日が火曜日のサービスデーだったから一瞬躊躇ったけど、私の中では今日が映画を観る日になっていたような気がして、やっぱりチケットを買うことにした。 夕方の回にしたけどまだまだ外は暑い。前の予定が思いがけず押してしまって、慌てて渋谷駅から小走りで向かうと、着く頃にはもう汗だくだった。 さすがにマスクを

          いいことがあった日

          お灸のススメ

          10代の頃から、ずっと肩凝りがひどくて。 20代からは、むくみにも悩まされるようになりました。 身体の巡りが滞りがちな私は、整体や鍼でときどきメンテナンスするのが日課でした。 外出できなくなって、直接身体を触れるサロンにも行きにくくなってしまい、最後に行ってからもう2ヵ月くらいたってしまったかもしれません。 在宅が続いていますが、気軽にマットを敷いて、ヨガやストレッチする時間がとれるのは嬉しいこと。外に出かけていた日々には、そんな時間もなかなかとれずに仕事に奔走していまし

          部屋と旅

          最近、「部屋と旅」@heyatotabi のInstagramアカウントで、インスタライブを始めました。 毎週日曜日20時からやってます。 藤本あゆみ @jill_a__ と、お互いの部屋から、これまで行ったいろんな旅の話をしています。 「部屋と旅」は、もともとセレクトしたアイテムを扱うオンラインショップを始めようか、というアイデアから名付けた、屋号みたいなものです。 友達のあゆみちゃん @jill_a__ とよーたん @yotaro_mildzappa

          フラワームーン

          急にやってきた夏のような暑さとか、風の強さとか、月の明るさとか、 そうしたものに敏感になるのは、外の空気への憧れなんでしょうか。 心地いい日のおでかけも、友達とわいわいした飲み会もできないけれど、ずっとパソコンに向かう日々。 家の中で過ごしていると、どうしても近くにばかり目がいきがちなもので、近頃は、ふとしたときにめがねを外して遠くを眺めているような日もあります。 昨日は満月だったそうです。 5月の満月は、フラワームーンと言うそうで。 たしかに、ぶわっと開いた芍薬の花のよ

          フラワームーン

          はじめの日

          あゆみちゃんが、手紙を書こうと言った。 それはまだ、私がまだ事務所で仕事をしていた頃だと思う。 毎日、1日ごとに少しずつ状況が変わっていく。 外は出歩けないし、新しい風景も見れなくなっているのに、いろんなことが目まぐるしく駆け抜けている感じもする。 こんな時に書く手紙、私は何を伝えたいかな、、なんて想いを巡らせてるうちに、あっという間に時間は経ってしまった。 見えない迫ってくるものがぶくぶくと増大していくけど、こんな生活がはじまって、もうすでに結構な時間が経ってし

          お風呂の扉

          この部屋のお風呂の扉が閉まっているのを、 私は見たことがない。 きーっと音のする分厚い玄関を開けると、 やっぱりそこには、古い木造の味と 日本の夏の匂いが入り混じっていて、 私がこの家を空けていた時間の分だけ ずっしりと重たい空気が詰め込まれていた。 毎年、7月になると仕事で京都に行く。 3年目になった今年は それもすっかり恒例行事になってしまって、 出かける前は、1か月近く家を開けるのかあ、 大丈夫かなあ、なんて言いながら それっぽく振る舞っていたけれど、 正直のところ

          健康

          今年のお正月は、寝てばかりだった。 やりたいこと、あれもこれもあったはずなのに パソコンを開くのは悪だ、 そんな言葉に従って過ごしていたら 気づけば眠ってしまっていた。 できたことといえば、せいぜい洗濯とか 三ヶ日が有効期限のクーポンを使って買い物とか 1日1つ、何かできたらもうお腹いっぱい。 そんな日々だった。 受験生の頃、 そう呼べる時期が私には3年もあったわけだけど しばらく何もしたくなくてだらけていたら やるせない罪悪感が奥底から湧いてきて 思い出したように問題

          指先の愛すべき異物

          小学生の頃、同じ塾に通っていた男の子に言われてしまった一言。 「指みじかっ」 ずっと、私の頭の片隅にこびりついていた。 「手が小さいと細かいところも器用だから、歯医者には向いてるんだよ」 そう言う父親の遺伝子を受け継いでしまっていたのは明らかだったけれど、 歯医者になる気が微塵もなかった私に、その言葉は何の励みにもならなかった。 10代、友達と撮りにいくプリクラも、1人だけピースの指の長さが少し足りなくて、いじけていた。 なるべく手を目立たせないように、と思って い

          指先の愛すべき異物

          電話を切ると、

          「電話を切ると、息遣いとか、鼻をすする音が、聞こえなくなるんだ」 受話器越しにそう言った。 少し間があいて、 「えーっとそれは、電話してると、話をしてなくても、些細な音が聞こえるよねってこと?」 そう聞かれた。 少し間をあけて、 「ううん、電話を切ると、そういう音が聞こえなくなるってこと。」 そう答えた。 #エッセイ #電話

          電話を切ると、

          女の姿

          これからしばらく、仕事が続く。 貴重な休みを控えた週末、 運悪く風邪をひいた。 最近年に1度はやってくる40度の熱。 今年はこのタイミングだと思わなかった。 真っ赤に腫れた扁桃腺で ふらふらと病院へ行き、 点滴でなんとか熱を下げた。 そんな病み上がりの月曜日。 朝起きると顔は真っ赤で パンパンに腫れていた。 ただでさえ敏感肌なのに、 少しでも不調があると全部顔にでる。 よく見ると肌は最近見ないほど ひどく荒れていて、 おでこにもあごにも吹出物、 いつの間に噛んだのか、