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ウーバー・イーツ労働者に対する東京都労働委員会裁定に思うこと(労働運動は唯一のベア手段)

 2022年11月25日付の日経新聞は、

 東京都労働委員会が
  「料理配達サービス「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員らの労働組合と報酬や事故の補償などに関する団体交渉に応じるよう命令した」

 旨の記事を掲載している。

 これにより、ギグワーカーなど労働組合を持たない労働者も雇用者と団体交渉を行い、賃上げを含む待遇改善などの労働条件の向上へ向けた土俵に立てることになった。

1  世界のどこに政府が私企業の賃上げ(ベア)について口を挟み、ベアを奨励する国があろうか?

 一体日本はいつから労働組合が「御用組合」と化して雇用者との真剣な賃上げを含む労働条件の改善としての労働運動を放棄し出したのか?

 昨今の日本国政府による経団連等等に対する賃上げ要請は、いわば労働者を甘やかし正常な労使関係を根本から打ち崩す愚策であることに国民は気づかないのか?

 労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)は、労働者に与えられた権利であるのに政府主導による賃上げを「口を開けて待つ」という労働者の能動的姿勢が「失われた10年、20年」を招いた根幹、すなわち自ら蒔いた種ではないのか?

 私はかつて労働運動には相当の注意を払ってその動向を観察してきた。
 当時の労働者はある意味危うさも秘めていたものの、筋金入りの「本物」で労働者の未來を見据えた活動を行っていたのではないか。
 今の労働者の状態は当時の労働者達の足元にも及ばない意識の低さと他人任せの態度に終始しているようにしか見えない。

 これが災いして、労働者をしてベアを座して待つなどの愚行に走らせ挙げ句の果ては政府が親代わりのような「賃上げ要請」を代わりに行うなどという世界にも例のない甘えの構造が露呈している。

2  ウーバー・イーツの労働者たちがあげた声は尊重されるべき

 かかる意味において、今回の東京都労働委員会裁定は「最低」などではなく「最高」の意思決定であると考える。

 ウーバー・イーツ業務に携わる労働者の皆さん方には、今後21世紀における日本の労働運動を牽引し、そして御用組合と化した旧態依然の労働組合が良い意味で刺激を受けるような健全な労使関係と良好な未来モデルを構築してもらいたい。



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