らいおんのおやつ
末期がんとなった海野雫が終末医療の施設(ホスピス)である「らいおん」にやってくるお話。
悪人が出てこなくて、綺麗な心で物語を読めましたね。
最近の物語はどれも裏切りや憎しみなどの負の感情がウケるものが多かったので安心しましたね。
この施設はまさに理想ですね。
患者(ホスピスではゲストと呼ばれているらしい)の理想をかなえてもらえます。もちろん痛みを和らげるセラピーのような類のようなものも充実しています。
認知症とかで家族が苦しみながら介護をして生き延びていくよりはこのような施設で一生を終えたいですね。
特に一生独身である私は看てくれる人すらいないので孤独死確定なので尚更なので憧れますね。
主人公の雫もこの施設に来てから自分の生涯を振り返し、大切な人に囲まれて過ごしてきたことを再認識して、感謝しながら一日一日を懸命に生きていくのですが、それが出来るのはやはり金銭面や環境面の余裕があることが前提ですね。
入院費が払えるかどうかも分からず、独身で病院の保証人も見つからない。
もし入院しても見舞いに来てくれる人が一人もいない。
そんな癌患者だったら日々感謝しながら生きていくことなんてできないでしょう。
主人公である雫は早くに両親を亡くした者ものの、育ての親である伯父の愛情を一心に受けて育ち、世間的にも良い子に徹して生きてきたため、人間関係でも虐げることはなかったみたいですね。
意地の悪い話ですが、不遇の環境で死にたいと思って生きてきた主人公がいざ末期癌にかかって本当に死ぬことになったら、どのような感情の変化が見られるのか、そんな物語も読んでみたいと思いますね。
自分の生涯を振り返っても最悪な出来事しか思い浮かべることが出来ない主人公でも癌になったら健康のありがたみとか死にたくない言う感情はどのように生まれるのかというもの気になります。