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おへその上の男

約15,000文字。読了時間に30分前後かかります。もしもご興味のある方がいらっしゃったら、お時間のあるときに読んでいただけたら嬉しいです。夫婦、親子、家族の物語です。

1️⃣
 腹上死。この言葉を初めて聞いたのは、小学四年生のとき、父の葬儀の日だった。
「ジョーさん、ふくじょうしだったらしい」
 
 曖昧な記憶を辿り寄せると、葬儀場の薄暗い和室に私はいる。
 部屋の左端には、その日の主役である死んだ父が布団の上に横たわっており、その周りに人はいない。
 部屋の右端には、親族に取り囲まれた母が座っていた。母は泣いてはいなかったけれど、周りの人々は小声で何かを言いながら、母の背中を撫でたり母の手を両手で包んだりしていた。彼らは、ときおり部屋の反対側にいる父の横顔を睨んで、ため息をつき、涙を流した。
 その日の主役は父のはずなのに、父は同じ部屋の遠く離れた隅っこでひとり死んでいた。ずっと死んだままだった。
 私は、父にも母にも近寄れなかった。双方から離れた場所で体操座りをして、顎を両膝にのせて、部屋の左端と右端に分かれている父と母を見ていた。
 眠っているようだと誰かが言っていた生まれて初めて見る死人の顔は、肌の質感が生きていたときとはあまりにも違って、自分の父親だというのに、とても気味が悪かった。
「桃香、がんばれ」
 小学校の運動会の保護者席で、和菓子屋の中に置かれたショートケーキのように目立っていた父の姿を思い出す。自営業だったから時間の自由がきいたのか、よく学校の行事に顔を出してくれた。背が高く姿勢も良かった。そして遠くから見ると、父はいつもゆらゆらと揺れているように見えた。身体全体が前後左右にゆらゆらと揺れているように見えた。そのゆらゆらした感じが、たぶん周囲から浮いて目立ったのだと、私は思う。
「桃香のパパ、カッコいい」
 友達によく言われた。長髪で無精髭を生やしてヴィンテージのアロハシャツを着た父は、子供から見ても魅力のある男だったのだろう。佐野譲二という名から、ジョーさんと呼ばれる、そのカタカナの軽い響きもとても似合う人だった。
 なのに、灰色に変色した顔で、葬儀場の白一色のつまらない布団をかけられて、寝たまま気をつけの姿勢をしているように、死んでいる。父らしさは、命と一緒に消え去ったみたいだった。
 父が愛したアンティークの美しい布で覆ってあげたら生き返るんじゃないかと、私は父の横顔を離れた場所から眺めながら本気で思い、父がへらへらと笑いながら立ち上がる場面を想像したりした。
 部屋の反対側に目をやると、母は母で、右の肩が下がって背中を丸めた、母らしくない姿勢で座っていた。几帳面な母は、座っているときも四角のカタチを作る人なのに、角のない丸まったティッシュみたいに座っていた。その表情は、死ぬ前に痙攣を起こした飼い犬の顔を思い出させた。下手に近寄ると噛みつかれそうだった。
「桃香ちゃん、大丈夫?」
 ときどき大人たちに声をかけられた。
 私は頷きながら、そのたびに自分の表情に神経を集中させた。頬がぴくぴくと動いた。父親が死んだというのに泣いてもいない自分は、冷たい子供だと思われるのではないかと心配したのを覚えている。テレビドラマの子役のように、この場面にぴったりの演技をしようと、鼻をすすってみたりもした。演じながら、大好きなお父さんが死んだのに、と何度も心の中でつぶやいた。私は父が大好きだった。でも涙が出ない。自分が硬い氷のように感じられた。父親を突然亡くした子供はどんな行動をとるのだろう、顔を伏せて、畳の縁を見ながら考えていた。
「桃香、あっちの部屋で待っていて」
 母に言われた。
 大人がこのセリフを言うときは、子供に聞かれたくない話をするときだ。私は隣の親族控室に移動して、しばらくそこで座っていた。
 一人きりの部屋で耳をすます。扉の向こうからざわざわとした小さな声の大群がやってくる。風邪をひいて高熱を出したときに、私はよく耳元で人のざわめきを聞くのだけれど、記憶にあるこの葬儀場のざわめきと似ている。何かに引っ張られて連れていかれそうな恐怖を与えるざわめき。
 私は控室からそっと抜け出した。
 控室の前には長い廊下があった。廊下の左側に広い部屋があって、そこは眩しいくらい明るかった。正面に白い花がいっぱい飾られていて、折り畳みの椅子が並んでいた。テレビで見たことのある、お葬式をする部屋だった。
 窓のない長い廊下は薄暗かった。私はその廊下を歩いた。廊下のところどころで、大人が何組にも分かれて集まり、ひそひそと話していた。黒い服を着た黒いかたまりに、私はそっと近づいた。
「ジョーさん、ふくじょうしだったらしい」
 男の人の声が耳に入った。
 私には、大人になったら看護師さんになりたいとか美容師さんになりたいという友達がいたから、「あぁ、お父さんの仕事は、服じょう師っていうんだ」とすぐに考えた。
 父が服を売っているということは知っていた。古着を売っているんだよと、父のお城だという小さなお店に連れて行ってもらったこともある。だから『ふくじょうし』は『服じょう師』で、服を売る仕事のことを指すのだと、小学四年生の私は思ったのだ。
 そのとき、その日着ている黒いワンピースを選んでくれたのはお父さんだったということを思い出した。服屋へは、父と二人で行くことが多かった。買い物をさっさと済ませる母よりも、時間をかけて服を選んでくれる父と一緒に行く方が楽しかった。
「このワンピースは桃香に似合いそうだね。子供だからといってフリルやリボンなんていらないよ。ほら、見てごらん、桃香もこんな風に洋服を着こなすいい女になるんだよ」
 私とは似ても似つかない金髪の大人の写真を、スマートフォンの画面で見せてくれたりした。
「可愛いから何でも似合うわね。お父さんにそっくりですね」
 子供服売り場の店員が私たち親子に近づき、私と父それぞれに微笑みながら言う。
「性格は、似て欲しくないですけどね」
 父は無精髭を撫でながらそう言って、女性店員と雑談を始める。最後には「僕も服を売っているんですよ、海外の古着なんですけどね、良かったらどうぞ」と名刺を渡す。「素敵なお父さんね」と、女性店員は私に向かって、父に聞こえるように言った。学校で友達と秘密の話をするときの匂いが、私の頭上で漂った。
 葬儀場の廊下の、ざわざわの中を私は歩いた。黒いワンピースの裾が揺れて足にまとわりついた。
 大人たちのグループの横を私が歩くと、誰かが誰かの腕を肘でつついて、皆が一斉に口をつぐむ。私が通りすぎると「綺麗な子ね、お父さんにそっくり」そんな言葉がささやかれた。
 私は暗い廊下を何度も行ったり来たりして、黒い服と黒い靴の間から聞こえる「お父さんにそっくり」という言葉を集めた。お父さんにそっくり。お父さんにそっくり。お父さんにそっくり。
 その後、葬儀が始まり、火葬場にも行ったはずなのだが、記憶はごっそりと抜け落ちている。
 
2️⃣
 というような話を、今年の夏から付き合い始めた高校二年生の翔太にした。私は中学二年生になっていて、父が亡くなってから四年がたっていた。  
 年上の高校生と付き合っている同級生は周りにいないので、私はみんなが話す『好きな男子』の話題の輪に入れてもらえない。学校の中では『もうやってるかもしれない子』に分類されているようで、桃香はいろいろ知ってるからね、と意味ありげに言われたりする。
 確かに私は『ふくじょうし』は『腹上死』だと、すでに知っている。おまけに母親や教師に嘘をつくコツも習得して、日常生活で役立つ演技も小学生のときよりずっと上手になっている。私は、図書館で勉強してくるねと母に告げ、教科書の入った鞄を下げて、放課後や休日は翔太の家に行く。
 あと数日でクリスマスという日も、街に流れる陽気な雰囲気から逃れて、翔太の部屋にいた。翔太の部屋には、パイプベッドと勉強机があるだけで、隅のラックには、翔太の好きな洋服がずらりと並んで掛かっている。昔の父の部屋に少し似ていた。
「クリスマス、どうする?」
 ベッドのフレームにもたれて、床に並んで座って、私たちはとりとめのない話をしていた。
「クリスマスはお父さんの命日だからさぁ、毎年、お墓参りだよ。残念だけど、デートは無理かなぁ」
 そう答えて、その延長線上で、今まで人に語ったことのない父の話をしてしまったのだった。
 そう、父は、死に方だけでなく死んだ日、命日でも私を悲しませた。クリスマスに線香の匂いを嗅がなくてはいけない運命となった娘を、あの世の父はどう思っているのだろう。
 私が父の死に関して話し終わるまで、翔太は口を挟むことなく聞いていた。クッキーを手に持ったまま齧ることも忘れたように、私の話を聞いてくれた。翔太のそういうところを、私はとても気に入っている。
「そのさ、腹上死って、桃香のお母さんじゃない人の家で、別の女の人の家で、ってこと?」
「そうでしょうね。愛人宅、ってことでしょ」
「うわぁ。強烈」
 強烈。私は思わず笑った。たしかに強烈なことを、私の父はしたのだ。
「桃香は、その女の人に会ったことがあるの?」
 私は、首を横に振った。会ったことはない、と思う。母とその女性の話をしたこともない。それどころか、父の死に関しても話しをしたことはない。
 母はもともと無口な人だ。ちょっと冷たい印象を人に与えるだろう、左右対称のとても整った顔をしている。私は父似だ。よく人に言われるし、私自身そう思う。どこかが崩れた顔と雰囲気を持っている父だった。
「桃香、お父さんなんだけどね、心臓が突然止まって、死んじゃったの」
 そう母に告げられたのは、小学四年のクリスマスの夜だった。
 その日の朝、サンタさんからのプレゼントは枕元にちゃんと置かれていて、私は一日中笑って過ごしていた。夕食後に家族三人で食べる予定のクリスマスケーキは冷蔵庫の中にあって、居間にはアンティークのオーナメントで飾られたツリーがあった。
 でも、父は、夕食の時間になっても帰ってこなかった。母と二人でケーキを食べてから、私は眠りについた。
 確か、夜の11時頃、母に肩を揺すられた。
「お母さん、今から警察署に行かないといけないの。おばあちゃんとおじいちゃんがもうすぐ来るから、桃香はお留守番しててね」
 突然そんなことを言われても、私は何も理解できなかった。まだ家の中には、夕飯やケーキの匂いが残っていた。母が私を抱きしめて、母の全身の細かい震えが私に伝わってきて、初めての感覚に驚いたのを覚えている。
 それから近所に住む祖父母が家に来た。母の両親だ。父は両親を早くに亡くしていて、交流のある親族もいなかった。
 丸一日、母は帰ってこなかった。病院以外の場所で突然人が死んだ場合、警察に連絡がいく。あのときに、きっと検視などが行われていたのだろう。私は祖父母と、とても静かな時間を過ごした。
「大変だったね。その女の人と桃香のお母さんさぁ、揉めたよね? まずはその人が、お葬式に出席するかしないか、ってところからさぁ、一悶着ありそうだよなぁ」
 私は、翔太の目の奥に記憶の塊が隠されているかのように、翔太を見つめた。でも、何も思い出さなかった。
 棺桶の蓋が閉じられた瞬間、父の顔が見えなくなった瞬間、誰かの叫び声を聞いたのは覚えている。それが、母のものだったのか、もしかしたらそこにいた愛人のものだったのか。いや、私自身の叫び声だったのか、それも分からない。葬儀が始まってから数日間の記憶は、脱落している。
「揉めたのかなぁ。記憶にないし、お母さんも何も言わないから、知らない」
 母は本当に何も言わなかった。
 葬儀が終わって一週間ぐらいたったある日、私は夕食の準備をする母のそばにいた。父がいなくなって、あの頃の私は、母にぴたりとくっついていた。
 料理が出来て、母が食器をテーブルに並べ始めた。三枚の皿。母はいつものように皿を三枚並べた。父の茶碗も、父が座っていた席の前に置いた。
 あっ、と私が思った瞬間に、母も気がついたようだった。そこに、父はいないと。もう、永遠にいないと。家族三人分の食事を用意する、母に染み込んでいた習慣が、悲しかった。父はもう帰ってこない、その現実を必要のなくなった皿から突きつけられて、私は何も言わず、ただテーブルを見つめた。
 無意識の内に並べた皿と茶碗を、母もしばらく見つめていた。そして、小さくため息をつくと、手早くそれらをまとめて、キッチンの隅に置いた。
 その次の日、学校から帰宅すると、父の茶碗も皿も箸も、家から消えていた。
 その次の日には、父がコレクションしていた、ヴィンテージのシャツやジーンズが消えていた。
 その次の日には、父のベッドが消えていた。
 一か月後には、父の匂いのするものが、家から全て消えていた。
「うちでは、お父さんの話はしないんだよね。まるで居なかった人みたいに」
「子供には説明しにくい、のかなぁ? お父さんの悪口も言いたくないだろうし」
「でも、お墓参りには行くんだよ。毎年。これが不思議なんだけど。嫌いになったのなら、行かなくても良いのに」
「桃香のお父さんだから、その事実は変わらないから、じゃね? 子供のためにお墓参りをするんだよ、きっと」
「そうかなぁ。なんだか、お母さんの気持ちって、もっと複雑な気がする。話してくれないから分からないけど」
 翔太が手をのばして、私を抱きしめた。
「俺は何でも桃香に話す。なーんでも」
 私の耳に唇をつけて、囁いた。
 私は、ふふふんと笑って、翔太の背中に手を回した。
 床の上に直接置かれた白い皿の上には、ヨガスクールに行って不在だという、翔太の母親が作ったクッキーがあった。それを横目で見つめてから、翔太とキスをした。

3️⃣
 父が死んでも、私の生活は大きく変わらなかった。母はフリーランスのイラストレーターだから、父の死で住宅ローンがチャラになった自宅で絵を描き続けて、経済的に落ち込むこともなかったし、帰宅したら誰もいない家で私ひとりで夕食をとるということもなかった。
 あのクリスマスの日から父親が消えてしまっただけだ。
 大人たち、主に親族の雰囲気から、父は何か悪いことをして死んだのでは、と日を追うごとに疑い始めた小学四年生だった私は、胸に引っかかっていた『ふくじょうし』という言葉を調べることにした。まだスマートフォンを持っていなかったので、家にあった国語辞典で調べた。国語辞典は二冊あったけれど、ふくじょうしという言葉は、どちらにも載っていなかった。私は、聞き間違いをしたのかなと考えた。
 五年生になって塾に通うようになると、親子の連絡手段として、スマートフォンを買って貰えた。母も祖父母も父の話をしない状況は変わっていなかったので、私は、スマートフォンに『ふくじょうし』と打ち込み、検索した。
 ふくじょうしは、漢字にすると、腹上死だった。性交中、または性交後に、脳出血や心臓発作などが原因で突然死すること。医学的には性交死と表現される、と書いてあった。
 性交という言葉はなんとなく分かっていた。私の周りでは、セックスと言う。念のために、性交も調べた。卵子と精子が結合するために交わること。具体的にはこうこうこうでと、セックスについても詳しく書かれていた。
「桃香、お父さんなんだけどね、心臓が突然止まって、死んじゃったの」
 母が父の死に関して私に説明したのは、それだけだったのだが、嘘ではなかった。父はきっと心筋梗塞を起こしたのだろう。母ではない誰かと性交をした後に。
 腹上死という言葉を理解したあとは、学校やテレビや漫画やネットから色々な情報を得て、知識にどんどんと色を重ねた。性交についても詳しくなっていった。
 腹上死。世間では眉をひそめて口に出されるであろうその言葉に、私は不思議と、強い嫌悪感は持っていない。
 私の持つ腹上死のイメージは、小さな小さなお人形のようになった父が、女の人のおへその上でパタンと倒れているものだ。真っ白ですべすべの肌、縦長のおへそ、その上で、ミニチュアのお人形のような父は、ぴくりとも動かない。
 私と翔太は、しつこいくらいキスをした。クッキーの匂いがするキスだ。キスをしながら、私の髪を触っていた翔太は、手の平で私の背中を撫で、私のシャツの裾から手を入れて、ブラジャーを押し上げた。荒い息が私の耳にかかる。
 父の話を珍しくしたせいか、胸を触られながら目を閉じると、父が私を膝に載せて私の耳元で言った言葉を不意に思い出した。あれは何歳のときだろう。
「桃香、新しいクマさん、買ってあげようか?」
 父の膝にのっていた私は、クマのぬいぐるみを抱いていた。そのクマの目が片方なくなっていた。クマは私のお気に入りで外出時も寝るときも抱きしめるから、耳がちぎれかけ、縫い目のところどころから中に詰めた綿も飛び出て、みすぼらしい姿になっていた。
「いらない。このクマさんが好きだもん」
「でも、それ、ぼろぼろだよ。目も片方ないし、破れてるし。お父さんが、もっと可愛いクマさんを買ってあげるよ」
 父は私に頬を寄せた。無精髭を私の頬にすりすりと擦り付けるのを、私は笑いながら、いやだ、と言い、父の膝の上で身をよじらせた。
「いらないよお。このクマさんが大好きだもん」
 父は笑った。
「欲がないなぁ。桃香のそういうところ、お母さんにそっくりだね」
 あのとき、母はそばにいたのだろうか。
「桃香もお母さんも、好きなものをとても大切にする。このクマさんは幸せ者だなあ。桃香もお母さんも、優しいね。お父さんは、二人とも大好きだよ」
 翔太の手が胸から下に降りてくる。夏に初めてキスをして、秋に胸を触られ、この冬はその手が下へ下へと向かい始めた。
 傷口に薬を塗る指のように、優しく注意深く、翔太の手が私の脇腹を這う。指先が作りだす快感の振動に、私のお腹全体が共鳴したとき、おへその上でコロンと倒れている小さな小さな人形が脳裏に浮かんだ。
「あっ、だめだよ。やめて」
 私は身体を捻って、翔太から離れた。私のショーツの中に入ろうとしていた翔太の指が、弾かれたように宙で弧を描く。
「あぁ、まだだめなのかぁ。我慢かぁ」
 翔太が情けない声を出した。
「腹上死、したくないでしょ」
 私は、教師のような冷たい声でわざと言う。部屋に漂っていた男女の濃い匂いが、私の声で吹き飛ばされたように薄まった。
「腹上死するわけねぇじゃん」
 翔太は不満気に言うけれど、怒っているわけではなかった。私はブラを元の位置に戻した。
「ねぇ、翔太は、クマのぬいぐるみ二つ欲しい? それとも、一つで満足するタイプ?」
 全身脱力したように床に寝ころんで、頬を膨らませていた翔太が首をかしげた。
「クマのぬいぐるみ? それ、何のはなし?」
 私は、翔太の髪の毛に指を入れて、優しくぐちゃぐちゃにかきまぜた。
「なんでもない」
 ある日、父は大きなクマのぬいぐるみを抱えて帰ってきた。ボタンの目が片方無くなったクマさんより大きくて、新ピカの毛並みと新ピカの両目が美しいぬいぐるみだった。
「今日、デパートで、このクマと目が合ったんだよ。一目惚れ。可愛いだろ? 桃香にぴったりだと思ってさ、買ってきた」
 結局、私は、二つのクマのぬいぐるみを毎日抱っこして遊んで、夜はベッドに並べて一緒に寝た。古いみすぼらしいクマさんも新ピカのクマさんも、私は同じくらい好きになった。

4️⃣
 小高い丘の上にある墓地の駐車場で車から降りると、強い風が私と母の髪を乱した。
「寒いわね」
 母はコートの首元を押さえた。
 丘からは市街地が見下ろせる。人々が暮らしている色とりどりの家々が、おしゃべりしているように暖かそうに見えるのは、墓地から見下ろしているからだろうか。遠くには山が見える。気持ちの良い場所だと、私はここに来るたびに思う。
 墓地の管理所に備えられている、バケツと箒を借りた。管理所前でバケツに水を汲むと、父の墓の前まで母と二人で歩く。
 墓地はとても綺麗に整備されており、墓石が同じ方を向いて、お行儀良くしんとした顔で並んでいる。歩くたびにバケツの中の水がチャプンチャプンと揺れる。水をこぼして服を濡らさないように、私はそろそろとバケツの水を運んだ。手のひらがすぐに痛くなった。
 父の墓が見えてきた。ああ、今年もある、と私は心の中でつぶやく。
 今年も、色鮮やかな花が、父の墓の前で風に揺られていた。灰色一色の静止した景色の中、花立てにある赤や黄色の花は、運動会の保護者席にいた父のようにゆらゆらと揺れて、遠くからでも目立った。
 母は毎年供えられている花に関して、何も言わない。花は蕾のものもあり、まだいきいきとしているので、たぶん、前日に供えられたものだ。毎年、この四年間毎年、誰かが父の命日の前日に墓参りをして花を供えているのに、母は何も言わないし、私もまるでその花に気づいていないかのように振る舞っている。
 私たち母娘が墓の前に立つと、墓の周りには草ひとつ生えていない。花だけがある。
「桃香、落ち葉を掃いて」
 墓の前に着くと、毎年、母は言う。私は黙って頷いて、ほんの少しだけ落ちている、たぶん一日分の落ち葉を掃く。
 母は、無表情で、花立てから全ての花を抜き始める。寂しい墓場を華やかに演出していた花を、全て抜き取る。
 抜いた花の茎は、母の手で、ポキリパキリと真っ二つに折られる。まだ枯れていない花を容赦なく折り、無残な姿にして、持ってきた新聞紙で包む。帰るときに、花は新聞紙ごと、駐車場の隅にあるゴミ箱に捨てられる。それが、お墓参りの恒例儀式のようになっている。
 私は落ち葉を掃きながら、花の茎を折る母をそっと見た。茎を折るときに力を込めるからか、少しだけ眉間に皺が寄る。その表情からは何も読めない。でも、私は、母の怒りを聞く。怒りは、ポキリパキリと音を立てる。
 私は、この花を供えているのは、父が腹上死した家の女性だろうと思っている。父が死ぬ前に性交しただろう女性。
 母がこの花を二つに折って捨てるのは、まだ父や女性に、憤りや嫉妬などの感情を持っているからなのだろうか? 墓参りに毎年来るのは、この花を捨てるためではないだろうか? 死者となっても、まだ父は許されていないのだろうか?
 そして、毎年お花を供えにくる女性はまだ父のことを想っているのだろうか? それとも母に対する当てつけのような気持ちを持っているのだろうか?
 私は考えてみるが、よく分からない。翔太と性交したら理解できるようになるのかな、と思ったりもする。
 母は花立ての中を洗い、新たに水を入れ、持ってきたしきみの枝を挿す。
 以前「葉っぱだけなんて寂しすぎるよ」と言ったら「これは枯れにくいのよ。あの世のお金だっていうし」と説明されたけれど、周りの墓と同じものを父の墓にも供えるということが、私は好きではなかった。
 だから、毎年、クリスマスツリーのオーナメントを二つ、私はポケットに入れて持ってきて、しきみの細い枝に飾ることにしている。今年はブリキで作られた銀色の星と、木製の小さなトナカイを持ってきた。
 墓の前のしきみに、星とトナカイを私は吊った。仏にキリスト、だから何? 父はそんなことは気にしないでへらへらと笑って喜んでくれると思う。
 母は、持参した雑巾で丁寧に父の墓石を拭く。たぶん、花を供えた人がすでに墓石も洗っているはずだ。それでも母は、バケツの冷たい水の中に手を入れて、何度も雑巾を洗い、絞って、墓石を拭いた。母の手がしだいに赤くなっていく。
 私は持参したクリスマスケーキを墓の前に置く。父はお酒を沢山飲む人だったが、甘いものも好きだった。毎年、クリスマスには親子三人でケーキを食べた。だから、私は、三角にカットしたケーキを持参する。母は、私が持ってくるクリスマスオーナメントやケーキに関しても何も言わない。「鳥やネズミが来るからケーキは持ち帰るわよ」と毎年言うだけだ。
 ケーキを供えた墓の前で、母と私は線香に火をつけて、手をあわせた。
 翔太っていう恋人が出来たよ。お父さんにちょっと似てる。私は心の中で父に報告した。
 母が墓の中の父に何を語りかけているのか、私には分からない。
 ケーキをビニール袋に再び入れて、花を包んだ新聞紙と一緒に持ち、母は立ち上がった。
「じゃあ、帰りましょ」
 母が言い、私も箒とバケツを両手に持った。
 空は重い雲に覆われ、空気には冷たい棘が混ざっているような、痛いほどの寒さだった。
「雪、降りそうだね」
「ホワイトクリスマスになるのかなぁ」
 二人で駐車場までの、コンクリートの道を歩いた。背後から父の視線を感じて、数回、振り返ってみる。父はいない。

5️⃣
 駐車場の手前に、ひとりの女性が立っていた。色白の細身の女性で、グレーのロングコートを着ていたから、墓地の色と同化して輪郭があいまいだった。墓石から白い顔だけが、ぽっと浮いて出てきたようだった。女性は、私と母に向かって深々とお辞儀をした。
 母が立ち止まった。つられて私も立ち止まり、母の顔を見て、目の前まで歩いてきた女性の顔を見て、また母を見て……。
 あぁ、この人なのだ、と分かった。父の墓に花を供えた人、父と性交した人は、この人だ。
 この場に翔太がいたら、「強烈、やばいくらい強烈」と叫んでいたと思う。でも母と女性は、静かに見つめ合っているだけだった。お互いが全く解けないテストの問題を、お互いの顔の中で読んでいるみたいだった。
 想像していたよりもずっと地味な人だった。もっとキラキラと輝いていて、パリパリの新ピカの女性を想像していた。父が買ってきたあのクマさんみたいに。
 パリパリの新ピカどころか、雨に濡れた紙袋みたいに、柔らかく頼りない雰囲気の人だった。
「突然、すみません」
 女性は私たちの前まで歩いてくると、再び深々と頭を下げた。
「今年で、お墓参りは終わりにしようと思っています。最後に、お話ししたいことがあって。少しお時間をいただけますか」
 女性は、震えているような声で言った。この寒さの中、私たちをここで待っていたのだから、実際、唇も手先も震えているようだった。女性は、母が持っている新聞紙に包まれた花に、ちらりと目をやった。
 母は何も言わなかった。けれど、私の方に顔を向けた。その目が「あっちで待ってなさい」と言っていた。「子供の聞く話じゃないから向こうに行って黙って待っていなさい」と目で言っていた。
 私は、母の視線を、無言の命令を無視した。
「桃香」
 母が私の名前を呼んだ。
 その瞬間、私の中で、怒りが火花のように飛び散った。一瞬で、身体が熱くなるのを感じた。それは、全てを隠そうとする母に向けての怒りだったはずだ。
 が、私は女性の方に顔を向けた。怒りの火が、私の腹の中を焼いて、口から飛び出した。
「あなたですか。父はあなたの上で、腹上死したのですか」
 叫ぶように言った。
 母が隣で息を呑んだ気配がした。
 女性は目を見開き、一歩、後に下がった。
「桃香!」
「ちがうの、ちがうのよ」
 母と女性の声が重なった。私は母の方を見なかった。女性の顔だけを凝視した。
「何が違うのですか。あなたが父の不倫相手だったんですよね。お葬式で大人たちが噂していました。腹上死した父のオンナ、そうですよね」
 クリスマスに墓地を訪れる人などいないようで、三人の女だけが三角を描くように向かい合った。沢山の灰色の墓石が裁判所の陪審員たちのように私たちを見つめている。
「あの日、ジョーさんは……」
 初めて見る、父のオンナが言う。
「あなたのお父さんは、別れ話をしにきたの」
 私に、真剣な顔をして告げた。その声は、詩の朗読をする深夜のラジオ番組を思い出させた。電波が不安定なときに聴こえるとぎれとぎれの声のようだった。
「正確には、クリスマスの三日前に別れてくれって言われたの。でも私は、あなたのお父さんが大好きで、別れたくなくて、困らせたくて」
 女性は、私の顔から、母の方へと視線を移動した。
「クリスマスに私の家に来て、来なかったら、全て奥さんにバラすわよ、って脅したんです」
 涙が女性のまつ毛の間から顔を出して、もう我慢ができないというように、すすすと頬を滑り落ちた。
 女性は、また、私の方に向き直った。
「クリスマスで、お客さんと昼から飲んでいたジョーさんは、すでにかなり酔った状態でウチに来て。別れて下さいって、また私に頭を下げた。それから口論になったの。どんなに泣き叫んでもジョーさんの気持ちは変わらなくて、もういいって思ったとき、タバコを吸いたいってジョーさんが言ったの。私が、ベランダで吸って、と怒鳴って。ベランダに面した窓をジョーさんが開けて、外から今日みたいな冷たくて強い風が入ってきた。私はまた、さっさと窓を閉めて、と叫ぶように言って。次の瞬間に、ジョーさんが倒れたの」
 私たちが描く三角の中央で、風が落ち葉を集めて、くるくると踊らせた。
 あぁ、そうだったのか、私が聞いた『ふくじょうし』の真相はそうだったのか、私は落ち葉を見ながら、そう思った。
「あなたのお父さんは、ベランダで倒れて亡くなったのよ。周りが、腹上死だと噂しているのは、知っていたけど。ごめんなさい。もう、噂は、どうしようもなかったの」
 腹上死だろうとなかろうと、あなたは父と不倫をしていた。そう思いながら、女性を睨みつけたが、自分の目に力が入っているという感覚はなかった。びしょびしょに濡れた紙袋みたいな女性の中に、さらに何かを無理矢理詰め込みたいとは、思えなかった。
 母が私の背中に手を置いたから、母の方に顔を向けた。すごく疲れた顔をした母がいた。
「桃香、ごめんね。何も説明してなくて。あなたは小学生だったから、子供だから分からないと思ってた。かえって、悩ませ苦しませたのね」
 母が私を見つめながら、お父さんの話を初めてする。
「ごめんね。お母さん、お父さんの死因や亡くなったときの状況は、警察から説明を受けたの。だから、よその家で、マンションのベランダで突然倒れたってことも、知っていたのよ。桃香、お父さんのこと、ちゃんと話さなくてごめんね」
 私の全身がぶるんと震えた。あぁ、私はこんなに怒っていたんだと初めて気づいた。ずっとお母さんが話してくれなかったことに怒っていたんだ。
 あのとき、お母さんがお皿を三人分テーブルに並べたとき、訊いたら良かった。「お父さんはなぜ死んじゃったの?」って訊いたら良かった。なんなら、お母さんと二人で、お父さんのお皿を投げつけて割ったら良かった。そしたら、もっと違う母娘関係を築けたかもしれない。 
「今日、私がここに来たのは」
 女性の小さな声が聞こえた。
「あのときから今日まで隠していた、大切なことをお伝えしようと思ったからです」
 女性は、母を見つめる。母は唇を噛んだまま黙っている。母の顔の皺がいやに目立つ。女性が唾を飲み込んだ。
「あのとき、すぐに救急車を呼んで、救急車が到着するまでの間に、一度だけ、ジョーさんは身動きしたんです。そして、ひとことだけ、最後にひとことだけ」
 女性の声が、聞き取りにくくなった。震えがひどくなった。
「景子。……景子って言ったんです」
 母が、ぴくりと肩を動かした。
 母の名前は、景子だ。
「絶対に、奥さんに、この、この最後の言葉を教えてなんかやるもんか、って思っていました。本当にごめ」
 女性の謝罪の言葉が終わる前に、母が腕を振り上げた。ばしっと音がした。花を包んだ新聞紙で、母が女性の顔を叩いたのだ。
 私は、馬鹿みたいに口を開けて母を見た。母が父のことで感情を爆発させたのは初めてだ。私は初めて爆発を見た。母の強い怒りは、叩いた衝撃で破れた新聞紙からこぼれ落ちた花びらのように、コンクリートの上に飛び散った。カラフルな怒り。
 こんな場面でどうするべきなのか、私は学校で習っていない。強烈、強烈だよ、翔太、と何度も頭の中で言っていた。女って怖いよ、お母さんも怖いよ。
 母が腕を振り上げたときに落としてしまったビニール袋から、つぶれたクリスマスケーキが転がり出た。その破片を、私は棒立ちで見つめてから、女性に視線をやった。
 女性は叩かれた左頬を左手で押さえたまま、静かに泣いていた。

6️⃣
 かぁああかぁあ。
 突然、頭の上で間抜けな声がした。見上げると真っ黒なカラスが飛んでいた。
 かぁああかぁあ。
 カラスは強風にあおられて、鳥のくせに左右にゆらゆらゆらと揺れていた。
「あっ」
 私の口から、大きな声が出た。
 母と女性が驚いたように私を見て、私の視線を追って、空を見上げた。
 カラスはゆらゆらゆらとした奇妙な飛び方で、私たちの上空にいた。上から私たちを見ていた。ゆらゆらと揺れていた。
 そして、決心したように、私たち三人の真ん中に舞い降りてきた。コンクリートの上に降り立ったカラスは、私たち三人を首をかしげて見上げた。
 私も、母も、女性も、カラスを見つめた。
 カラスも、私たちの顔を順番に見つめた。それからコンクリートの上に転がってぐちゃぐちゃになったクリスマスケーキを見た。
 次の瞬間、カラスは、つぶれたケーキの欠片をくちばしでさっと咥えて、羽を広げ、飛び立った。ぱたぱたぱたと羽音が響いた。
 カラスはケーキの欠片を咥えたまま、上空でまたゆらゆらと揺れる。
「あは」
 母が笑った。
 空を飛ぶ、ケーキを咥えたカラスを見ながら、母が笑い始めた。あははは。ははは。笑い声が、張り詰めた空気を揉んだ。
 女性も空のカラスを見ている。その目からはまだ涙が静かに落ちていたけれど、目尻が穏やかに下がっていくのを私は見た。
 ただのカラスだ。ゆらゆら揺れながら飛ぶ、ただの黒いカラスだ。それなのに、女三人が見つめている。
 私は、今まで一度も父親に言ったことのない言葉、これからも言うチャンスのない言葉を、カラスを見ながらつぶやいた。
「くそジジイ」
 カラスは、私たちの上で、さらに大きくゆらゆらゆらと揺れながら、円を描くようにくるくると回って飛んだ。
 私たち三人は、カラスを見つめ続けた。
 風が雲を動かしたようで、雲と雲の間に青空が見えた。青空が少しずつ陣地を広げていく。冬の柔らかい光が、墓場を照らした。
 カラスが、かぁああかぁあ、とまた鳴いた。
「帰りましょう」
 母が私の肩に手を置いた。
 母は、結局、目の前に立っている女性には何ひとつ言わなかった。厳しい言葉も優しい言葉も差し出さなかった。女性に挨拶もなく、母はその場から歩き始めた。
 私は女性に小さく頭を下げた。彼女は私と母の背中に向かって、深々と頭を下げた。
 私は母の後について歩く。もう振り返らなかった。私と母は前だけを向いて、駐車場へと歩いた。
 歩きながら、今日のことを全部、翔太に話そうと思った。
「ヨガスクールって嘘だと思うんだよなぁ。おかん、たぶん、男がいる」
 翔太の母親はシングルマザーだから、恋愛中でもなんら問題はないのだけれど、翔太も翔太のお母さんも、そのことに触れていない。
 他者に対する想像は、たとえ家族であっても、ホントウからはズレている。想像に想像を積み重ねていると、ズレたホントウは歪んだ塔を築く。そしていつか崩れる。翔太がどうするかは分からないけれど、私は今日のことを翔太に話したいと思った。

7️⃣ 
 車に乗ってシートベルトを締めたら、母が助手席に座る私に顔を向けた。
「お母さんね、今、絵本を描いてるんだけど」
 母が雑誌や広告のイラストを描いているのは知っていたが、絵本は初耳だ。
「その絵本の主人公がカラスなの」
「へぇー」
「色々なお家から、きらきら光るものを取ってくるカラス。ある日、一番きらきら光るものが自分の足首に巻きついるって気づいて、自分の足をつつくの」
「へぇー、それで?」
「続きは……まだ描いてない。描き上がったら一番に桃香に見せるね。でね、カラスの名前もまだ決めてなかったんだけど……ジョーにしようかなって、今、思った」
 母が、どう? というような目で私を見る。
「いいんじゃない。カラスのジョー。ゆらゆら飛ぶカラスで」
 母は頷いて、エンジンをかけた。車がプルプルと震える。フロントガラスの向こうを見つめる母の横顔を見た。ずっと訊きたかったことがするりと口から出る。
「ねぇ、お母さん、お父さんのこと好きだった?」
 母は前方を見つめたまま、ふっと息を吐いた。
「もちろん、好きで大嫌いで好きだったよ。桃香は?」
「同じく、好きで大嫌いで好きでした」
 墓地のある丘を車が走り始めた。くねくねとした道の先はなかなかよく見えない。
「桃香、高校生の彼、今度ウチに連れてきてね。お母さんに紹介して」
 私はええっと声をあげた。
「知ってたの?」
「あなたに彼氏ができたことぐらい、知ってるわよ。紹介してね」
「あぁー、りょ」
「省略しない!」
「了解です」
 母と私は、前を見たまま笑った。
 遠くの空でカラスが飛んでいる。
 
 
 
 
 

 
 
 

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